勇者編⑥三か月後
今日も訓練は続いている。あれから定期的に小競り合いにも出ていた。
初めての時はろくに戦えなかったが、訓練と小競り合いに参加し続けることで少しずつ戦うことには慣れていった。
ゴブリンは的確に対処さえすれば強い敵ではなかった。刺すところが良ければ一撃で殺せる。所詮はその程度だった。
生き物を殺すのは辛かった。だが、それも少しずつ慣れてきていた。
槍を振るう突く、ご飯を食べる、小競り合いに出る。槍を振るう突く、ご飯を食べる、小競り合いに出る。
当然、合間に寝たりシオンと話したりはしていたが、この三ヶ月は意識的に戦いに重点を置いていた。いつ死んでもおかしくない異世界だ。力が欲しかったんだ。
王様はたまに前線に出ていた。王様が武器に炎をまといトロールを殺したのを見た。たまにこの世界にも変わった力を持つ人はいるらしい。王様もその一人のようだ。
人間側にも強い人が居ないと困る。なんせ敵はいっぱいいるのだ。斬っても突き殺してもいくらでもいる。
ゴブリンは畑で取れるのだろうか?そんな疑問が湧いたくらいだ。
「ゴブリンってどうやって増えてるの?」
「増え方を確認した人はいないですが、ゴブリンに拐われた人はいますね」
普通になんか嫌な答えが返ってきた。苗床にはされたくないものだ。
拐われた後のことは教えてくれなかった。多分ろくでもないことにしかならないのだろう。
「トロール食べた人いる?」
「・・・いないです」
何かおかしな質問をしてしまったようだ。最近、よく食べてよく動く健康的な生活をしているせいか、トロールが元の世界の豚っぽく見えてきたんだ。
試してみるのもありかもしれない。
・・・・・・・・・・
ふう、今日は調子良かったな。ゴブリンを十匹以上仕留めた。少しずつ慣れてきている。悪くない。
最近調子が良い。レベルでも上がったのだろうか?まあ、確認できないからわからないのだが。
食欲が増えた。運動量が増えたせいだろう。食料事情は厳しいようだが、さすがにこんなんでも勇者だ。ご飯に困ることはない。
大抵ご飯はシオンと一緒に食べていた。しずしずと丁寧にきれいに食べている。上品だ。ああなりたいものだ・・・やることは多いが、とりあえず生き残ることが先だな。
次の目標はトロールだな。まずは協力して殺す。次は一人で殺せるようになる。段階を踏もう。いきなりは無理だ。死んでも生き返れたりはしない。
別に死にたいわけではないんだから。
少しずつこんな感じで僕は異世界に適応していった。
そして、不思議な夢を見た。それは違う世界の夢だった。夢の中で僕はとある男の人の視点で夢を見ていた。




