5話 説明
・私は変態ではありません。決して変態ではありません。
・私はそれなりにお金持ちです。基本料金の倍以上でもあなたやお店に支払う準備があります。
・私はこんな服装をしていますが理由があるのです。人には説明できませんがとても大切な理由があってこの服装をしています。決して変態ではありません。
・プレイ中はこの服装については触れないで下さい。触れられるととても傷つきます。
・私は変態ではありません。どうか怯えないでください。家庭円満ではないですが妻子もいます。どうか安心してください。
・こんな見た目ですが言葉は通じます。どうぞ普通にお話下さい。ただ私はあまり上手には話せません。事情があってうまく話せないのです。
・どうか私を出入り禁止にしないでください。決してあなたの嫌がることはしません。お店にも迷惑をかけません。できればお店ともあなたとも末永くお付き合いをしたいと思っております。
・このお金はお店とあなたへのほんの挨拶です。私を迷惑な客として扱わずに普通の存在として扱って下さい。お願いします。どうかお願いします。
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好奇心猫を殺すという言葉がある。その言葉は真実だ。俺は判断を誤った。ふといたずら心が沸いてカーネルの後ろから声をかけてびっくりさせてやろうと思い後ろからこっそり近づいた。
カーネルは・・・呪われた質問用紙に・・・自分が変態ではないと誤解を防ぐために必死に説明文を書いていた。そして説明文にはクリップで一万札が二枚挟まっていた。
涙が出た。書かれている内容とわざわざチップで挨拶代わりに2万も挟んでいる本気度を見ると涙が出た・・・。
俺の大切な仲間であるカーネルは・・・おそらく何度もこういった店を出入り禁止になったのだろう。説明文からはそういった過去を推測させた。俺はカーネルの辛い過去を想像すると涙が止まらなくなった。
月下で殴り合いをした時にコスプレをした変態爺と罵ってしまった過去の俺の罪深さを改めて感じた。
俺はなんということを・・・口走ってしまったんだろう・・・すまない、本当にすまない。俺はなんてことを言ってしまったんだ・・・糞だ。俺は酷いやつだ。
決して邪魔をしてはいけない。なんせ今朝まで留置所にいたのだ。俺よりも欲望を発散させたい欲求は強いはずだ。こういう店で知り合いに遭遇して嬉しいはずがない。見なかった振りをして今日は帰ろう。
「・・・店員さんすまない」
俺は小さな声でぼそぼそと声をかけていた。
「・・・はい、どうされました」
「すまない、急用が出来た。また来るが今日は帰るよ」
「・・・わかりました。いつでもまたお越しくださいね」
幸いトラブルになることはなかった。この道一筋の店員は何かを察してくれたのだろう。カーネルに気づかれることはなく俺は店を出ることに成功した。
・・・・・・・・・・
さて、予想外な事態に下半身のイライラが萎えたな。家に帰るか。
家に帰った俺はパソコンを起動させていた。とある調べ物をするためだ。
ほう・・・こんな店があるのか。なるほど・・・必ずしも店に行かなくても家に来てくれるサービスがあるのか、画期的だな。実に素晴らしい。
ふむ・・・まだ時間は17時前か。カーネルとの待ち合わせは21時だから4時間以上あるな。公園は近い。大した時間はかからない。
気づけば俺は新しいサービスを利用するため電話をかけていた。
「はい、もしもし」
「こんばんは、初めてなのですが」
「はい、ありがとうございます」
「今からお願い出来る方で店員さんのおすすめをお願いできますか?」
「はい、お時間は何分に致しますか?」
「120分でお願いします」
「場所はどちらになりますか?」
「○○です」
「なるほど、それでしたら・・・30分もあれば問題なく到着できるかと思います。料金は交通費が2000と120分ですので合計4万2000ですね」
「わかりました、よろしくお願いします」
ふう、緊張した。店に行くのも最初は緊張したものだが電話は電話でまた別の緊張をするな。だが・・・これで30分後には俺の欲望の発散がようやく出来る。
フフフ・・・楽しみだ。なんせあの容赦のないわがままボディをお持ちの詩音さんに週3で理性を散々に痛めつけられてきたからな。たまには発散しないと死ぬ。死んでしまう。なーに、鬼のいない間の心の洗濯というやつだ。必要経費だよこれは。
・・・・・・・・・・
ピンポーン
お、早いな。まだ15分しか経っていないんだが・・・さてさて、店員さんのおすすめはどんな方だろうか。俺はウキウキしながら財布を片手に玄関にステップを踏んで移動した。
そして玄関を勢いよくご機嫌に開けた。
「クソ兄貴・・・久しぶり」
そこには実の妹のリサさんがいた。制服姿のリサさんは相変わらず可愛かった。




