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4話 欲望


 性女だと・・・俺は思わず唾を飲んでいた。ごくりという音が喉から耳に響いた。



 ふう、聖女はどんな淫らな姿をしているのだろうか・・・俺は脳内がなんだかホンワカしていた。




・・・・・・・・・・




 一瞬だけ意識が飛んでいた。いかんいかん美少女ゲームじゃないんだ。ここは現実だった。だが現実に聖女なんて言われる存在・・・これはもうファンタジーと言って良いのではないだろうか。つまり聖女が性女な可能性もそれなりにあるのではないだろうか?



 知りたいものだな。聖女が性女へと変化するに至った大切な過程というものを・・・詳細に知りたい。


 スカートを本人の手でめくらせて下着を見える状態にさせてやりたい。その状態で本人にゆっくりと詳細に色々と(・・・)報告させたい。



 いかん、下半身がイラつき過ぎていた。大切なことを忘れるな。俺の目的は性欲の発散ではない。一番大切なことは大切な仲間であるカーネルの仲間を助けることだ。


 俺の性欲の発散は二の次だ。性欲に振り回されてカーネルの仲間を傷つけるようなことがあってはいけない。そう・・・決して性欲に振り回されて判断は誤ってはいけない。うん、ろくなことがないからさ。



 「オキテ」


 「あ、ああ。起きてるよ。すまない。考え事をしてしまっていた。すまない」


 うん、本当にすまない。カーネルは真剣な表情をしている。仲間のことが心配なのだろう。とりあえず仲間を助けるためのプランの確認だな。カーネルはどんな作戦を立てているのだろうか。



 「カーネル、協力はする。だが助ける計画は立てているのか?後、俺はまだそれほど強くないが・・・戦力は足りているのか?」



 「ダイジョウブ チャント カンガエタ」


 なるほど、カーネルには作戦がすでにあるようだ。カーネルは俺よりもずっと長く戦っている先輩だ。素人に毛が生えた程度の俺よりよっぽど成功率の高い作戦を立てているだろう。基本はカーネルに従えば問題ないはずだ。信じよう。仲間は信じるものだ。



 「わかった。それならばカーネルを信じる。途中で疑問が沸いたらまた質問するかもしれないが、俺でよければ好きに使ってくれ」


 素直にカーネルの役に立てるのが嬉しかったのだ。不安はあったが、助けたいという気持ちの方が強かった。


 俺とカーネルは話し合いの末、夜の9時にいつもの公園で集合することにした。カーネルにも最低限の準備時間は必要とのことだった。必要なものは揃えるから俺は身体一つで良いとのことだった。さて、となると夜まで時間がそれなりにあるな。




・・・・・・・・・・




 俺は詩音に連絡をしていた。カーネルに助けを求められて力を貸すことを決めたこと。ひょっとするとしばらくの間依頼にかかりっきりになるかもしれないこと。必ず戻るから心配しないで欲しいこと。色々思いつくことは書いてメッセージを送っていた。まだ授業中なのだろう、既読はつかなかったが几帳面な性格をしている詩音のことだ。後で必ず見るだろう。詩音はこれでよしと。



 さて、あとは・・・家族か。あれからなんだかんだ連絡をほとんど取っていなかった。たまに父からは連絡があったが、妹のリサからはなんだろう・・・連絡を取りづらいのかあるいはまだ怒っているのか愛想を尽かされたのかわからないが連絡はなかった。


 さて・・・最悪帰れなくなる可能性も・・・なくはない。ループ能力があるとはいえ絶対はないからな。リサにもメッセージを送っておこう。



・・・・・・・・・・



 これでよし。警察に逮捕されて迷惑をかけたことへの謝罪、パパ活に関しては誤解なこと、何とか一人暮らしが軌道にのったこと、それなりに元気にやっていることなどをまとめて書いてリサにメッセージを送った。


 詩音との関係については書こうかどうか悩んだが・・・おそらく今もリサと詩音は絶縁状態の筈だ。絶縁させた俺が報告してもいい気はしないだろう。機会を見て伝えた方が良い気もするがまだどうすべきか結論は出ていなかった。呪いの件も解決した訳ではないのだ。




 さて、これでするべき連絡は済んだな。まだ時間はある。そして金もある。二日に一度ほどのペースでゾンビ狩りをしていた俺の手元には・・・気づけば100万を超す金が預金口座に貯まっていた。少しくらい散在しても罰はあたらないだろう。


 それにだ・・・欲望を発散しなければ聖女に間違った対応をしてしまう可能性がある。欲望は制御できないから欲望というのだ。


 あるいは欲棒(・・)と言ってもいいかもしれないな。




・・・・・・・・・・




 そして気づけば俺はいつもの店にいた。


 「いらっしゃいませー」

 いつもの髭面のガタイのいい店員が愛想よく常連を迎えるかのような表情で迎えてくれた。



 「相変わらず・・・美味しいお茶ですね。玉露ですか?」

 嵌まったわけではない(・・・・・・・・・・)が気づけば居心地のいいこの店に何回か通っていた俺は、ごく普通に喫茶店で店員に美味しいですねと声をかける感じで大人の店の店員に声をかけていた。



 「ありがとうございます。麦茶です」



 「・・・美味しいですね」

 玉露でもなんでもなかった。



 ふう、それにしても落ち着くな。今までは周囲を見回すような余裕などなかったが、さすがは大手のグループ店だ。待合室も綺麗だし広い。まだ昼の3時なのに結構お客も入っているようだ。


 フフフ、皆何か癒しを求めて来ているのだろう。こういう店ではお互い見て見ぬふりをするのがマナーだ。俺は俺で楽しむとしよう。そんな風に穏やかな気持ちでいた。おや・・・




 一瞬目を疑った。視界に何か見慣れたもの(・・・・・・)が目に入った気がした。


 いや・・・まさかな・・・俺は目を擦った。あまりにも下半身がイライラして幻覚が見えたのかと思ったのだ。そして再び同じ場所を見た。



 ・・・そこにはいつもの衣装を着たカーネルがいた。いつもこの店で手渡される呪われた質問用紙(・・・・・・・・)に必死な顔をしながら何かを書き込んでいる漢の顔をしたカーネルがいた。



 

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