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3話 転機4


 気付けば日々は過ぎていった。槍を振るう自主練習、ゾンビ退治、一人暮らしの家事、そして詩音との訓練。ルーチンをこなすかのように順番にこなしていれば気付けば日々は過ぎていた。


 そして、同じような日々を過ごす中変化が起きた。詩音との訓練後、家に送ることはもう日常になっていたが、追加があった。


 家まで送り届けたあと、家でお茶をご馳走になるまでが俺の日常になったのだ。


 気付けばこちらに背を向けてお湯を沸かしている詩音がいた。紅茶を淹れる準備をしてくれている。いつもの光景だった。



 「美味しいな」


 「・・・ありがとうございます」

 やはり照れているのだろうか。誰かに褒められることに慣れていないのかもしれない。そんな気がした。


 お茶を飲みながら心地よい無言の時間を俺は過ごしていた。過ごしていたのだが・・・気付けば俺は詩音に凝視されていた。何かを催促されるかのように凝視されていた。


 怖い。理由は分かるがその目怖いんだよ。最初にあった時の視線を思い出すから怖い。なんだろう、凝視すると目つきが悪くなるタイプなんだろうか?とりあえず見られててかなり怖かった。



 「・・・・・・」


 「・・・・・・」



 「いつもありがとうな、じゃあそろそろ・・・」


 「・・・お礼」

 ボソリと呟く声が聞こえた。




 「いつもありがとうな、じゃあそろそろ・・・」


 「お礼が欲しいです」

 今度ははっきりと聞こえた。聞こえてしまった。



 俺たちは気付けば見つめ合っていた。そして詩音は立ち上がり隣の部屋に来るようにと無言でクイクイと手招きをしていた。




・・・・・・・・・・




 「落ち着きます」


 うん、わかるよ。すっごく落ち着いた声してるからね。後、心なしか声が幸せそうに聞こえるからね。


 「・・・そうか」



 「はい」


 気付けばお茶を飲んだ後、部屋に連れ込まれるのも日常になりつつあった。最初はさすがにこういうのは不味いと思って断ったりもしていたのだ。


 ただ、断るとなんだか何かを諦めたようなものすごく悲しそうな顔をするのだ。その顔を見た瞬間俺は断るのを諦めた。



 そしてもう一つ変化があった。最初はいつもの厚着した黒い服装で脚の間に挟まっていたのだが、ある日ふと何かを思い立ったかのように黒い服を脱いだのだ。


 目の前で豪快に脱ぎやがったのだ。


 正確には脱いだと言うよりは纏っていた特殊な装備である黒い服を身に纏うのを解除した・・・というのが正解なのだろう。黒い服は詩音が何かを呟いた瞬間まるで煙のように消えていった。


 そして残ったのは・・・リサと同年代でありながら、かなり一部の部分が成長している肉体をお持ちの上に薄着姿の詩音さんだった。そんな性的危険物(・・・・・)が俺の胸に遠慮なく背をくっつけながら脚の間に挟まっていた。



 「落ちつきますね」


 「・・・・・・」


 俺は全く落ち着かないです。言ったら悲しそうな反応が返って来そうなので言えないが薄着になった詩音さんの柔肌が当たって色々とやばかった。あと、なんかやたらと甘いいい匂いがした。


 相手はリサと同年代なのだ。反応してはならない。それにこれには深い意味などないのだ。ただ単におそらく昔失ったであろう愛犬の温もりに似たものを求めて俺に少し甘えているだけなのだ。


 決して下種な反応をしてはならない。勃起するな。勃起するな。勃起するな。勃起するな。勃起するな。


 気付けば俺はそう念仏のように呟いていた。




・・・・・・・・・・




 そしていつものごとく詩音さんは無防備に寝息を立てていた。スースーという気持ちよさそうな寝息が聞こえる。少し表情が見えるが安心しきったような顔だ。


 これだけ信頼されて下種な男の欲望で裏切る訳にはいかなかった。俺はそう思い舌を噛みながら耐えていた。




・・・・・・・・・・




 耐えていた。たたひたすらに耐えていた。だが、だがだ・・・気付けば要求はどんどんとエスカレートしていた。



 脚の間にはこちらを向いて(・・・・・・・)胸に抱きつく詩音さんがいた。おっぱいは容赦なく俺の身体に押し付けられていた。うなじからはやたらと何か甘いいい香りがした。


 俺は思っていたよりもやはり大きな胸の感触を味わいながら、欲望を捨て去るかのように念仏を唱えながら耐えていたおっぱお。



 だめだなこいつ・・・クラスEだな。リサと同年代にしては驚異的なサイズだ。罪深い。なんて罪深い果実なんだ。まるで男を誘惑する悪魔の果実だなこのおっぱお。ありがとうございます。



 いかん、意識が飛んでいた。俺はこいつとそういう関係ではない。そういう関係になるわけにはいかない。こいつが求めているものはそういうものではない。履き違えるな。


 俺は適当に思い出した前世のそれっぽい念仏を唱えながら耐えていた。おっぱいを強く揉みしだく陥落の日々は近いように思えた。理性の限界が試されていた。




・・・・・・・・・・




 俺の日々に詩音が放つ容赦のない悪魔の誘惑から耐えるという理性を削るルーティンが加わった。



 そんな日がしばらく続いたある日のことだ。カーネルがようやく出所した。俺は警察署にカーネルを迎えに行った。



 「カーネル!」


 「ヒサシ ブリ」

 久し振りに会ったカーネルは少しやつれていた。無理もないきっと厳しい責めを受けたのだろう。よく耐えてくれた。良かった。死なずにまた会えて本当に良かった。俺はそう思っていた。


 「その・・・また会えて嬉しいよ」


 「ワタシ モ」

 

 「さすがに疲れただろうし、しばらくはゆっくりするんだよな?良かったら家に来てくれ。歓迎するよ。少しだが家具も揃えたんだ」


 カーネルは無言で首を横に振った。


 「タスケテ ホシイ」


 「助け?」


 「ナカマ セイジョ ツカマッタ」

 いつものごとく拙い発音だった。だが、確かに仲間が捕まったと聞こえた。


 「腕輪の依頼で出ていたのか?」


 「ソウ ワタシノ ナカマ タスケタイ」


 「そうか、わかった。俺で良ければ手伝うよ」

 正直不安もあった。だがそれ以上に俺が辛いときにあれだけ身体を張って俺を助けてくれたカーネルの役に立てるのが俺は嬉しかった。嬉しかったのだ。


 「アリガトウ セイジョ タスケル」


 俺はカーネルの仲間を助けるということにばかり気が逸りうっかり大事なことを聞き逃していた。



 セイジョ・・・聖女・・・だと?


 なんだろう、俺の胸は期待にトゥンクトゥンクときめいていた。正直もう限界だったのだ。詩音さんの容赦ないクラスEの攻撃に耐える日々は俺の理性を容赦なく削っていた。



 恥ずかしながら俺はまだ見ぬ聖女に性的な期待を抱いていた。



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