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難易度高めの18禁ゲーム世界で間違った選択肢を選んでしまうタイプの主人公が酷い目に遭う話。慈悲はない  作者: シヴァ犬スキー
2部 悪意と善意に満ちた島〜呪いの武器とやさぐれた筋金入りのおっぱいニートとの出会い〜
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20話 月下


 俺のボロボロの精神状態に関わらず訓練は続いていた。詩音も魔法少女(マジカル・ガール)も訓練に身の入っていない俺に気づいていただろう。


 それにも関わらず真剣に訓練に付き合ってくれていた。


 そんな日が続いたある日のことだ。



・・・・・・・・・・



 「ツライ?」


 「・・・」


 「スゴク ツラソウ」


 「・・・」


 「カガミ ミテ ヒドい カオ」


 「映らねえんだよ、顔」


 「ソウ デモ ヒドイ カオ」


 「そうか」


 「ミテラレナイ ヒドイ カオ」


 「そうか」


 「ツライ?」


 「辛くねえよ」


 「ツライ?」


 「辛くねえよ」


 「ウソ ズット ツラソウ」


 「嘘じゃねえよ」


 「ウソ ズット ツラソウ シテル」


 「嘘じゃねえ!」


 「ツラソウ ミテテ ワカル」


 「お前みたいなコスプレした変態爺に何がわかるんだよ!俺は普段通りだ!何も辛いことなんかねえよ!普段通りだ!訓練を続けてくれ!なんもおかしなことはねえ!」


 口が滑った。何度も痛いところを聞かれて俺は気付けば罵倒していた。言ってはいけないことを言ってしまった。後悔した。


 「ヒメイ」


 「あ!?」


 「ヒメイ ニ キコエル」


 「悲鳴なんてあげてねえよ」


 「ウソ」


 「・・・」


 「モウ ミテラレナイ」


 「どうするんだよ?」



 「コウスル」

 魔法少女(マジカル・ガール)はマジカルステッキを持っていない側の腕である右腕を大きく振りかぶり俺をぶん殴った。俺はあっさりと吹き飛んだ。



 「いてえ」

 一発でアゴはガクガクになっていた。見た目通りどころか見た目以上の威力だった。



 「ツギハ ソッチ」



 「殴り合おうってか?」

 魔法少女(マジカル・ガール)はくいくいと手のひらを上に向け指を動かしていた。かかってこい!そんなジェスチャーをしていた。


 「アバレル スッキリ」


 「畜生が、俺も呪いの武器の力を持ってんだぞ!」


 「オイデ」


 「上等だよ」


 「オイデ」


 俺は手のひらから槍を引き出していた。そして怒りを込めて目の前の魔法少女(マジカル・ガール)の身体に石突きを繰り出した。



 ガッという鈍い音がなった。魔法少女(マジカル・ガール)は避けもせずに自分の身体で受け止めていた。


 「キカナイ」

 お返しに再度ぶん殴られた。


 「舐めんな!」

 起き上がり再度石突きで激しく殴り返した。


 「キカナイ」

 またぶん殴られた。いてえ。


 「この変態爺が!くたばれ!」

 俺は槍で殴り続けた、罵声とともに殴り続けた。


 「キカナイ オカエシ」

 ゆっくりと振りかぶり強烈なパンチを繰り出してきた。俺は再度大きく吹っ飛んだ。

 


・・・・・・・・・・



 殴り合いは続いていた。魔法少女(マジカル・ガール)は一切身構えもせずに無防備に俺の槍を受け止めていた。効かないはずがないのだ。間違いなく効いている。手応えがある。肉を打つ鈍い嫌な手応えがあるのだ。そして実際に魔法少女(マジカル・ガール)の身体は腫れたり傷ついたりしてボロボロだった。効いていないはずがないのだ。


 「そろそろ諦めろよ、こんだけ殴って効かない筈ねえだろ」

 こんなことを言っている俺の顔面も身体中もボロボロだった。吸血鬼の回復力がなければとっくにダウンしていただろう。


 「ナイテル コドモ キカナイ」

 

 「俺がガキだって言うのかよ、舐めてんのか爺」


 

 「ナイテル コドモ コウゲキ キカナイ」


 「石突きでやってたが、次は刃先で刺すぞ爺」


 「キカナイ」


 「避けるか防御しろよ!この糞爺が!」

 俺は槍を目の前の変態爺に向けて振るった。流石に刃なら防御するだろうという目算があったのだ。




・・・・・・・・・・




 「なんでだよ・・・」


 「キカナイ ナイテル コドモ」


 槍は・・・きれいに魔法少女(マジカル・ガール)の腹のど真ん中を貫いていた。貫かれた腹からは当然のように血が勢いよく流れている。効いてないはずがない。



 「なんでよけねえんだよ!防御しろ!って言っただろが!あほか!クソ爺!」


 「キカナイ」


 「効いてねえはずないだろが!なんだよその血!」


 「キカナイ カスリ キズ」


 「・・・そんなわけねえだろ、なんでだよ」


 「ナイテル ヨウヤク チャント ナイタ」


 「泣いてんのか、俺」

 気付けば涙が流れていた。言われて気がついた。


 「ヨウヤク スナオ ナイタ」


 「あほかよ・・・そのために槍で貫かれたのかよ」


 「アホ チガウ」


 「あほに決まってる・・・糞みたいな俺のためになんでそこまでするんだよ」


 「クソ チガウ」


 「糞だよ、どうしようもない糞だよ俺は」


 「ワタシモ カゾク イル」


 「なんだよ?」


 「キモチ ワカル アノトキ コトバ」


 「・・・・・・」


 「キモチ ワカル ヒッシ カゾク マモルタメ」

 コスプレした変態爺は真剣な顔で俺の目を見て語り続けていた。


 「クソ ジャナイ カゾク ダイジ ナカマ」


 「その仲間を傷つけたんだ、俺は」


 「ワタシ ユルス」


 「あほかよ、簡単に許してんじゃねえよ」


 「アナタ ユルセナイ ナラ カワリニ バツ ナグル」


 「・・・」


 「ナグル ウケトメテ コレデ ナカナオリ」


 「クソったれ、バカだな爺さん」


 「イッショ」

 魔法少女(マジカル・ガール)はいつもの笑顔を俺に見せていた。そして大きく振りかぶって俺を全力でぶん殴った。




・・・・・・・・・・




 吹き飛ばされた俺は立ち上がれもせずに寝転んだまま空を見ていた。空には綺麗な月が見えた。今夜は満月だったんだな・・・月を美しいと感じたのは久々だった。あれほどぐちゃぐちゃだった気持ちはなぜか不思議と落ち着いていた。


 吹き飛ばされて全身はボロボロだった。もう動けなかった。隣には全身ボロボロの魔法少女(マジカル・ガール)が静かに血を流しながら立っていた。いつもの優しい顔で寝転んでいる俺を見ていた。


 「なあ」


 「ナニ」


 「名前聞いていいか?」


 「ウン」


 「教えてくれよ、大切な仲間の名前を知りたいんだ」


 「カーネル」


 「すまねえ、カーネル。俺は今まであんたのことを仲間だなんて本心では思っちゃいなかったよ」


 「ウン シッテル」


 「そっか、叶わねえな」


 「ウン」


 「なあ、カーネル。こんな糞みたいな俺だが仲間にしてもらっていいか?本心からあんたのことを仲間と呼びたい」


 「イイヨ」


 「馬鹿だな爺さん」


 「バカ チガウ」


 「馬鹿だよ、俺みたいな糞のためにそこまで身体を張るんだ、馬鹿以外のなんでもない」


 「バカ チガウ ナカマノタメ カラダ ハル ワタシ ホコリ オモウ」


 「・・・カーネル、あんたカッコイイな」


 「・・・」


 「ありがとう、カーネル。あんたに会えて心から良かったと思うよ」


 「ウン」


 「すまねえ、詩音を傷つけた」


 「ウン アヤマル」


 「ああ、どうやって謝ったら俺にはまだわからないが必ず償いはする。カーネルに誓うよ」


 「ウン ガンバル」


 「ああ、ありがとう」



 カーネルはボロボロになり寝ている俺に笑顔で手を伸ばした。手を握ったらグイッと力強く引っ張られ立ち上がるように促された。力が入らず俺はフラフラとカーネルの胸に倒れ込んでいた。カーネルはびくともせずに俺を力強く受け止めていた。


 「すまん、ちょっとだけ胸貸してくれ」


 「ドウゾ」


 カーネルの胸の中で自然と俺は泣いていた。いったん泣き出すと止まらなくなった。自分の行動で詩音を傷つけたことへの罪悪感、糞みたいな存在に落ちても付き合いをやめる気はないと言った浩平、何も言わずとも俺の内心に気づき身体を張って全てを受け止めてくれたカーネル。呪いの振りまく禍への恐怖。


 胸の内はグチャグチャだった。ずっと苦しかった。俺はカーネルの胸に縋り付き子どもみたいに大声で泣き続けた。泣けば泣くほど少しずつ胸に溜まった澱のようなものが流れていき、少しずつ気持ちは楽になっていった。カーネルは何も言わず無言で胸を貸してくれた。



 「変態爺なんて言ってすまない、ありがとう・・・カーネル」


 「ナカマ トウゼン」


 見た目は相変わらず変態だったが、カーネルは最高の仲間だ。俺は自信を持ってそう断言できる。誰に聞かれてもそう答えるだろう。カーネルは最高の仲間だと。


 

 気付けば俺は少しだけ笑っていた。


 問題は何も解決していない。解決していないのだが俺は気付けば笑っていた。




 2部 NORMAL END

ここまでお読み頂きありがとうございます。基本的にこの小説の世界観は厳し目のため主人公も登場人物もだいたいろくな目には合いません。たまになんだか良さげな話も書きますがろくな目には合いません。なろうに合ってるのか作者もちょっと悩んでいる所ではありますが趣味で書いてるのでまあいっかといった感じです。糞作品ではございますがお好み頂けましたら評価やブックマークお願い致します。

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