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難易度高めの18禁ゲーム世界で間違った選択肢を選んでしまうタイプの主人公が酷い目に遭う話。慈悲はない  作者: シヴァ犬スキー
2部 悪意と善意に満ちた島〜呪いの武器とやさぐれた筋金入りのおっぱいニートとの出会い〜
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13話 宿泊


 「ほう、槍か」




 俺は祭壇に立っていた。女が寝転がりながら手をやる気なさげに祭壇に向けてかざすと周囲にあるガラスの岩が消失した。


 ゴトッゴトッゴトッゴトッゴトッ・・・ゴトッという音がした。僅かな高さではあるが武器が落下する音が部屋に響いた。


 暫く祭壇に立っていると黒い触手のようなものが俺の身体に伸びてきた。触手は俺の身体を確かめるかのようにウネウネと蠢いている。身体に触れられているのに触られている感覚はなかった。魔法少女ヘンタイのピンク色の光とは違うな。


 まるで実体のない暗黒の光みたいだなと思いながら諦めつつ眺めていると触手が俺の身体の中に入ってきた。


 特になんの感覚もなかった。気づけば俺の目の前には槍があった。色は黒い。ひたすら黒い。材質は金属のようだが何で出来ているかはよくわからない。槍はまるで俺が手にするのを待っているかのように宙に浮き続けていた。



 「握って持ち上げてみたまえ」


 「・・・はい」



 握ってみた。握った瞬間ゾワッとした。少しだけなぜか温かい。そして脈でもするかのように微妙な振動を感じた。まさか生き物・・・じゃないよな。



 「一応記録にあるものだな」


 「・・・どんな記録ですか?」


 「持ち主の負の感情を力に変換する槍だよ、君は怒りっぽかったりするかね?」


 「いえ、特には」


 「怒り、悲しみ、憎悪、侮蔑まあ負の感情は色々あるがそれを力に変換する槍だよ、呪いの内容は不明だ」



 「・・・前の持ち主はどうなったんですか?」


 「ここにあるということは当然死んだということだ。どんな原因で死んだかはしらない。寿命かもしれないし事故かもしれないし病気かもしれないし餓死の可能性もあるな。あるいは仲間に殺されたかもしれないし敵に殺されたかもしれない。興味もない。一応、呪いの武器を得たものは能力がわかった範囲で報告するようには伝えている。私が能力を知っているということは歴代の所有者の中に律儀なやつが最低一人はいたんだろう。まあ、指示を守るも守らないも好きにしたらいい。私は最低限の義務を果たすだけだ。一応は祈ってやる。幸せになれるといいな。ははは、すまん無理なことを言った。失礼」



 「・・・呪いの武器を得て幸せになった人は?」


 「私の知る限りいない。もう嫌になってね、最初はちゃんとできる限りの対応をしてたんだが全て裏目に出る。だからもう渡したあとは一切自分から関わらないようにした。私のような疫病神が出来ることはそれが全てだよ。まあ、君が私に会いに来るのは自由だ。来たなら対応はしよう。だが、出来れば来るな。お互いにいいことは何もない。これでも最低限の良心はあるんだ。もう何度も何度も捨て去ってろくに残っていないゴミのようなものだがね。いや、何もなかったな。私とは極力関わるな。いいことなどなにもない」



 「・・・・・・・」


 「他になにかあるか、なければ早く部屋を出たまえ。あとは好きにしろ」



 「・・・失礼します」



 話していると握っていた槍は気づけば俺の右腕の中に吸い込まれるように消えていた。右腕には何重にも絡みつく蛇のような形をした黒い刻印があった。




・・・・・・・・・・




 「終わりましたか」


 「待ってたのか」


 「ええ、連れてきたのは私ですから。これでも面倒見は良いのですよ」


 「そうか」


 「はい、そうなんです」

 

 それが本当ならいいのだが。だが、わりとリサは人を見る目があるからな・・・うーん、どうなんだろう。


 「魔法少女(マジカル・ガール)は?」


 「外で葉巻を吸って一服しています。運転で疲れたそうですよ」


 「なるほど」



 イメージぴったりだな。



 「俺はこれからどうしたらいいと思う?」


 「基本的には何もしなくていいと思いますよ、指令を無視するもしないも自由です、ナイアさんからそう言われませんでしたか?」



 「聞いた。あまり理解できなかったが」


 「この組織は自由なんですよ。ナイアさんは武器を渡せば後のことには本当に関わりませんから。私はたまに連絡しますが・・・まあ、基本的には素っ気ない対応です」



 「そうだろうな。ちなみにどんな連絡をするんだ?」


 「学校のことですね。保護者が一応あの方なので」



 え?学校?こいつ本当に学校通ってるの?



 「その学校はどのような・・・何を教えてくれるものですか?吸血鬼を殺す方法ですかね」


 「いえ、ごく普通の学校ですね。リサさんとは同じクラスです」



 「あの・・・本当に?」


 「はい」



 この明らかに俺と同年代か下手したら年上に見えるこの女が・・・リサと同じ学校。


 え、実年齢誤魔化してないの?考えるの疲れてきたな。後でリサにでも聞くか。いやでもな、聞いたら可愛い彼女のことが気になるの?みたいな糞みたいな扱いを受けそうだ。自分で蒔いた種とはいえこの女をリサの前で彼女扱いしないといけないのはさすがにしんどい。


 疲れる。癒やしはないのか。とりあえずこの女と魔法少女ヘンタイとは連絡先を交換している。今日はあの狂った女の件が無事に済んだだけで良しとしよう。一瞬様子が変わったときはヒヤッとした。心底怖かった。




・・・・・・・・・・




 城のような建物の外に出た。


 庭園には魔法少女コスプレジジイが立っていた。葉巻を吸っている。片方しかない目でどこか遠くを見つめているような・・・なんだろう。あ、こっち見たな。



 「オツカレサマ」


 「ああ、ありがとう」


 「ナカマ ダネ」


 「そうだな、宜しく頼む」


 「ムリ シナイ ダイジ」


 「わかってる」



 「ノロイ コワイ キヲツケテ」


 「・・・そうだな」




 「何を見ていたんだ?」


 「ソラ ムカシ オモイダス」


 「昔?」


 「トモガ イキテタ コロ」


 「そうか・・・」


 「ミナ シンダ ワタシ ヒトリ」


 「・・・・・・」


 「キヲツケテ ノロイ」



 「そうする・・・わからないことが多いんだ。どうか助けてほしい」


 「ワカッタ ナカマ タイセツ」



 変態なんて思ってて悪かった。正直そう思った。


 魔法少女マジカル・ガールの過去は知らない。ただ、どこまでもこちらを案じるかのように優しく見つめてくる目と、もう取り戻せない過去を懐かしく思うかのように遠くを見る目からは何か人に言えない辛い過去があるのだろう・・・俺はそう思った。



 「私も出来る範囲で手助けはしますよ。リサさんのお兄さんですし」


 「そうか、すまないな」



 ほんとかなあ・・・だといいなあ。一回容赦なく殺された経験が、俺の中でこいつの言葉を素直に受け止めることに抵抗を感じさせていた。



 「まあ、吸血鬼と戦うとしたら魔法少女マジカル・ガールさんと組むと良いでしょう。私は誰かと組むのには向いてませんから」


 「そうなのか?」


 「ええ、戦いは一人が気楽なのです」


 囮にするのは組むのとは違うのだろうか。違うのだろうな。とりあえずスルーしよう。怖い。


 この女が前に言っていた話とあの狂った女から聞いた話が色々矛盾しているが、藪をつついて蛇を出すのはもうごめんだ。一日に何度も死線を潜りたくはない。




 ・・・あれ、あの建物はなんだろうか?



 「あの建物は何があるんだ?あの少し大きめの教会みたいな建物」


 「ああ、あれは相談所らしいです」


 「相談所?」


 「はい、行って代価を支払えば相談に乗ってくれる相手がいるそうです」


 「へえ、評判は?」


 「ナイアさんには決して行くなと言われました」


 「行かないほうが良さそうだな」


 「はい、悪魔がいるそうですから」


 「・・・うん、行かないほうが良さそうですね」



 どこを向いても危険物しかない。悪鬼羅刹の住む島かよ。早くこの島を出よう。家に帰りたい。もう疲れた。



 「少し暗くなってきました」


 「そうだな、早く島を出よう」


 「ムリ キケン ヨル キケン」



 この島に泊まらないといけないのか。



 「城の中に客室があります。そこで今夜は休みましょう」




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