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難易度高めの18禁ゲーム世界で間違った選択肢を選んでしまうタイプの主人公が酷い目に遭う話。慈悲はない  作者: シヴァ犬スキー
2部 悪意と善意に満ちた島〜呪いの武器とやさぐれた筋金入りのおっぱいニートとの出会い〜
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12話 沈黙



 俺は再び船に乗っていた。


 メンバーは同じだ。さすがに恋人同士のデート(そういう設定にした)に着いてくることはしなかった。


 代わりに多大なる誤解と犠牲を払った気がしないでもないが・・・とりあえずこの島に妹のリサを連れてくる事態になることだけは避けれた。



 しかし、ドタバタしていたからあの女に対する対策や方針はまだ定まっていない。


 とりあえず自分が不死身だとか、ループ能力があるということだけは言ってはいけない。前回と同じくもの凄いレベルの求婚を受ける。


 というか言った瞬間にあの女の脳内では結婚していた。


 

 能力は無い・・・ただの一般的な大学生。これであとは怪しまれても黙秘するしかないな。余計なことを聞いてヤブの蛇をつつかないようにしよう。


 それであとは呪いの武器をもらったらおさらばだ。


 呪いの武器・・・もらわずに済む方法はないものか。あの女を見ていたら呪いの武器を貰ったが最後、自分が酷い目に遭う気がしてならない。


 聞くだけ聞いてみるか。後方要員とかなれないかな。組織には所属する。だが、呪いの武器を持たない単なる後方要員。


 どんな組織形態なんだろうか・・・とりあえず色々質問してみよう。タブーだけは避けて。




・・・・・・・・・・




 そして、今俺はまたこの扉の前にいた。この先にあの女がいるのか。
















 「やあ、よく来たね」


 前回と同じ姿同じ寝相で女は俺を迎えた。部屋の中も全く同じだ。プライベートエリアはゴミや脱いだ下着や服が散らばっている。ループしているから当然と言えば当然なのだが、散らばっているゴミや下着や服の落ちている場所や角度まで全く同じだと奇妙な気持ち悪さを感じる。


 中央には祭壇。そしてその周囲には岩のような形をした透明のガラスらしきものの中に武器が入っている。それがいくつもゴロゴロと転がっている。これも前回と同じだ。



 「話をしやすいようにこちらに来なさい」


 無言でいたら女に近くに来るように呼ばれた。



 「働きたくない」


 「しかしね、最低限は働かないといけないんだよ。具体的に言うと君と今から2時間ほど雑談をしなければならない」


 「内容はなんでもいい・・・おや、元気がないね、具合でもわるいのかね?」



 答えに窮していると前回と微妙に反応が変わった。


 「え、ええ。実は緊張してまして。まさかこんな所に来ることになるとは」


 「なるほど。まあ仕方ないさ。もう手遅れだ。諦めたまえ」


 「手遅れ・・・なんですか」


 「ああ、程度はわからんがね。来た時点で詰んでいる。運がないな」


 「この組織は・・・どういった組織なんですか?」


 「うん?この組織か、名前の通りだよ」


 「名前?」


 「ああ、白き世界を黒く染めるため死をもってしても赦されぬ罪をおかし続ける罪人と生贄達だったかな?まあ、正確な名称は忘れたよ。だいたいそんな感じだ。大切なのは白が黒く染まることと君たちは生贄で私が罪人だと言うことだよ、まあなんだろうね、気にしても仕方ない。強いて言うなら設立当初の組織の願いとか自虐とかを込めた。そんな程度のものだよ。君たちが気にしてももうどうしようもない」


 「ちょっとよくわからないのですが」


 「わからないほうがいい」



 「この組織でできる限り安全な部署はありますか?今まで戦闘などしたことがなくて」


 「ほう・・・戦闘経験がない?」


 「はい、普通の大学生だったもので」


 「君・・・何か変わった能力とか持ってないかい?」


 「いえ、特に何も」




 「・・・・・・本当かね?」


 「はい、特に何もありません。普通の大学生です」



 「おかしいな・・・あの吸血鬼に遭遇して戦闘になり生き残っているものが普通の大学生?おかしいな。おかしいな。おかしいな。うん、明らかにおかしいな。で、本当は?」



 やばい。この前の狂った状態のことを思い出しそうだ。怖い。怖い。怖い。一皮剥けばこの女の下にはあの状態が隠されている。刺激するな。耐えろ、なんとか耐えろ。俺はただの普通の大学生だしこの女の異常性にも何一つ気づいていない。スルーしろ。それしかない。



 「本当です」



 「ふーん・・・まあいいか。嘘つきは嫌いじゃない。好感が持てないやつは死んでも心が痛まないからね。嘘つきは好きなんだよ。死んでも心が痛まない。変に素直なやつや良いやつは困るんだ。極悪人の私でも少しは心が痛むからね。その点君は合格だな。君が死んでも心が痛まない。君のことが少しだけ好きになったよ。安心していつでも死んでくれ」


 「ははは」


 「ま、能力はペラペラ話すものでもない。聞かないとしよう。さて、まだ時間はまだまだあるが、聞きたいことはあるかね?まあ、どっちでもいい。君に興味は一切ない」


 「出来れば安全な後方要員になりたいのですが。可能ですか」


 「この組織に後方要員なんてものはない。武器次第で回復の能力のような戦闘に不向きな後方向きの能力を得るものもいるが、基本的には全員戦闘要員だ。まあでも戦闘向きの能力を得ても不向きな能力を得ても何をするかは好きにしたらいい。誰かを助けたければそうすればいい。そうしているものもいる」


 あんまり期待してなかったが戦闘要員になるのか。


 「この組織はどんな組織形態になってるんですか?」


 「お飾りのトップが私だ。まあ、後は基本的にはバラバラに動いている。組織からは吸血鬼や化け物の情報が入ればそちらに指令が行くことがある。従うも拒否するも好きにしろ。自由だ。だが、出来れば従った方が・・・いや、保証はできないな。好きにしろ。君の生死に興味はない。つまり私から特に今後指示はない。私は君にはノータッチだ。私が指示してもいいことはなにもないからね。死にたいなら私に指示を仰げばいい。今のところ、私の指示の死亡率は99%だ」



 99%。明らかに疫病神だな、この女。



 「基本的には組織のやることは二つだ。呪いの武器を与えることと化け物の情報が入ったら伝えること。あとは好きにすればいい。ああ、高額な報酬も出るぞ。言い忘れていた。いや、ろくな目に合わないことを考えれば安いな。まあ、不定期の割りも悪いたちも悪い仕事にでもついたと思ってくれ」


 「呪いの武器はどのように受け取るのですか?」


 「儀式をここでする。大したことはしない。そこの中央の祭壇に立っていればいい。素養があればそこの封印された武器のどれかが反応する。しなければ素晴らしいことだな。反応したら諦めて受け入れろ。儀式をした時点でもう契約の拒否はできない」


 「武器に選ばれるような感じですか?」


 「そうだ。君の本質、性質、能力など要は君と縁のある相性の良いものが選ばれる」


 「なるほど」


 「基本一つしか選ばれない。武器の能力も呪いの内容もわからない。使ってから自分で探れ」


 「能力もわからないんですか?」


 「そうだ、以前の使い手がいる武器はわかる。以前の使い手や関係者が記録を残していればその範囲でだがな。だが、それ以外はわからない」



 妙なことを言っている。能力も呪いもわからない。武器は誰がどのように作ったんだ?そもそもどこでこれだけの種類の・・・しかも全部呪われてる武器を手に入れたんだ?



 「武器は誰が作ったんですか?どこで手に入れたんですか?」


 「貰いものだ。製作者も同じだ」


 「どなたからもらったんです?」


 「知らないほうがいい、私はね貰ったものを配るように言われたから配っているだけだ。言うなら呪いの武器専門のブローカーだな。だから、配った後のことは知らんよ。私には関係のないことだ」



 わからん。どう判断すればいいんだ。聞いても謎が増えるばかりだ。気になるが下手な質問をしてこの女のどこにあるかわからない謎の琴線に触れたくない。その場合俺はまた死ぬだろう。死ぬことに慣れてきてはいるが・・・死ぬことが辛くないわけじゃないんだ。


 死ぬことは今でも恐ろしい。言葉でいうと簡単だが、死ぬことは並大抵なことじゃないんだ。死ぬことは酷く辛い苦痛を伴う。当然だ。普通の人間は一度しか死ねないんだから。



 死とはまともな人間なら一度しか耐えられない。全ての終わり。そんな現象なんだ。



 死ぬたびに俺は何かを喪っている。人としての大切なものを死ぬたびに取りこぼしている。何を喪ったのかはわからない。それがたまらなく怖い。怖いんだ。何を喪ったかすらわからないのがたまらなく怖い。


 多分・・・俺が何もかも失ってしまって、もうどうしようもない行き着く所まで行き着いてしまうと・・・この女の同類に俺はなるのだろう。俺はそれが怖い。そのことを考えるだけで怖い。



 自分があんな狂いきった壊れきった嗤い方をするようになるなんて考えただけで狂ってしまいそうだ。決してああなってはいけない。



 俺とこの狂った女の能力は「死んでも黄泉返る」という点では似通っている。とても嫌なことに類似点があるんだ。この女には必要以上に近寄ってはいけない。黒い女よりもこの女の方が怖い。



 「呪いの武器を受け取らずにこの組織に入る方法はありますか?」


 「ない、受け取るのが条件だ」



 受け取りたくないが・・・やはりだめか。俺と相性のいい武器、判断がつかないな。ループ能力を活かす武器・・・わからん。とりあえず後のことはあの二人に聞くか。この女とあまり関わりたくない。それにいい質問ももう浮かばない。


 

 「ありがとうございます。それではこの辺でそろそろ」


 「駄目だ。時間まではここにいなさい。そう決められている」



 一秒でも早くこの場を去りたかったが・・・あれだけゴロゴロとやる気なさそうに転がりながら話してる癖になぜか時間には厳しいな。どんな理由があるんだ?最低2時間は一緒にいないといけない理由はなんだ?理由がわからない。会話が無いのなら速やかに儀式を行って退席しても構わないはずだろう。なぜだ?



 「特にお聞きしたいことはもうないのですが」


 「それでもここにいなさい。それが義務だ」



 「・・・わかりました」


 「ああ」



 女はやる気なさげに文庫本を読み続けている。もうこちらには興味はないようだ。ありがたい。興味を持たれるよりずっといい。時間が過ぎるまでは静かに息を潜めて過ごそう。この女の興味を惹いてはいけない。






 「時間だな。では儀式をする。あとは武器次第だ」




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