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難易度高めの18禁ゲーム世界で間違った選択肢を選んでしまうタイプの主人公が酷い目に遭う話。慈悲はない  作者: シヴァ犬スキー
2部 悪意と善意に満ちた島〜呪いの武器とやさぐれた筋金入りのおっぱいニートとの出会い〜
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3話 面談

 

 「やあ、よく来たね」


 中には女が一人だけいた。


 部屋は広い、パーティ会場か?といったくらい広い。部屋の中央には祭壇のようなものがある。祭壇の周囲には武器が落ちていた。透明のガラスの岩のようなものに包まれた武器が大量にあちこち散らばっていた。


 透明のガラスの岩のようなものは不規則な形をしていた、この透明さは明らかに自然のものではない。加工されたものだ。それなのにまるでそこらへんで掘り出した岩のような形をしていた。なんだか不思議なアンバランスさだった。


 そんな中に槍だったり、剣だったり、拳だったり、鎧だったり、多種多様な武具が入っていた。


 このどれかが俺のものになるのだろうか?そんなことを考えていた。


 

 さて、現実逃避はここまでだ。


 「あの・・・この部屋は?」


 「私のプライベートルームであり武器庫だ。儀式の間でもある」

 女はそう答えた。


 女は畳敷きのエリアで寝間着らしき身体のラインがわからないダボッとした服を着て布団に転がっていた。


 畳のあたりは女の生活スペースのようだ。着替えも下着も使ったティッシュなどのゴミも落ちている。割と下着は派手なようだ。

 

 「話をしやすいようにこちらに来なさい」


 女は手に持っている点字の文庫本らしきものを指で触りながらやる気なさげにこちらにそう言った。


 ちなみに女の髪型は一昔前の野球少年がしているような坊主頭だった。すぐにでも前世で言うところの仏門に入れそうだった。


 全力で女を捨てていた。




・・・・・・・・・・




 「働きたくない」


 端的に女はそう言った。



 「わかります」


 思わず答えていた。



 「しかしね、最低限は働かないといけないんだよ。具体的に言うと君と今から2時間ほど雑談をしなければならない」


 「2時間ですか」



 「そうだ、規則でそう決まっていてね」


 「はあ」



 「内容はなんでもいい。朝食の話でも趣味の話でもだ。ただ出来れば当たり障りのない話をしてほしい。君のことに興味は一切ないし極力関わりたくないんだ。言うならば義務だから仕方なくこの場をもうけているだけなんだ」


 女はやる気ゼロという感じでそう言った。



 「目のそれは?」


 「封印だよ」


 アイマスクをつけて寝る気マックスだろうという姿勢を取っている女はそう答えた。え?封印なの?市販のアイマスクにしか見えないあれ。



 「取るとどうなるんでしょう?」


 「発狂して一回死ぬ」



 「はあ」


 わからんけど怖い。ほんとかどうかわからないが怖い。スルーしよう。



 「その言い方だと黄泉返るみたいですが」


 スルーすればいいのについつい突っ込んでいた。



 「そのとおりだ。私は不老不死でな。もう何千年も生きてる」


 ゴロゴロしている。明らかに布団の上でゴロゴロしている。寝返りをうって眠りやすいペストポジションを探している。



 「そうなんですか?」


 「そうだよ。長生きしてるともう何もかも嫌になってね。何してもろくな目に合わないんだ。三日前のことだ。暇つぶしに株を買ったんだよ。そしたらね次の日には暴落していた。半値になっていたんだ。先週はね、石油を買ってみた。次の日には石油の保管場所が爆発した。先月のことだ。賃貸マンションを一棟買ってみたらね、欠陥住宅の上、住んでいる住人は全員家賃を滞納していた。そんなのばかりだ。とてもついてないんだよ私は」


 この組織の資金繰りは大丈夫なのだろうか?心配になった。会話の最初からもう色々とボロボロだった。



 ・・・今から帰れないだろうか。疫病神じゃねえのこの女。そんなことを思っていた。




・・・・・・・・・・




 「さて、つまりだ。見ての通り私は単なるお飾りだ。最初の面談と武器の受け渡し意外は何もしない。君と会うのは今日が最期だ。会うとしたら君が死体になった時にでも見るかもしれない。私と君はそんな関係だ」


 「聞きたいことがあればすべて聞け。最低限の義務は果たしてやる。だが、プライベートの話はするな。聞きたくない。ビジネスの話をしろ。業務的な話以外は出来れば一切するな。聞きたくない」


 「俺はこの組織に入って何をすればいいですか?」


 「遺書をかけ。組織宛と家族宛ての2通だ。あとは祈れ。極力ひどい目に合わずに死ねることをただひたすら祈れ」


 「ははは、どんな目にあうんでしょうか?」


 「知らない、だがろくな目には合わないだろう、それくらいはわかる」


 「ははは、入らない方が良さそうな気がしてきました」


 「そのとおりだ。この組織に入ってもいいことは何一つない。あったとしてもそれはまやかしだろう。くれぐれも騙されるな。いいことなんて全てまやかしだからな・・・そういえば君はあの吸血鬼にあったそうだな。なぜ生き残れた?」


 「・・・運が良かったんです」


 「・・・一応聞く。私にも最低限の良心はある。もうとっくの昔に何もかも捨て去ってしまった極悪人だが最低限の良心はかろうじてあるんだ。お前、何か変わった能力は持っていたりするか?」



 ・・・ぎくりとした。なぜそんなことがわかる。


 「・・・いえ、特には」


 「能力の詳細は聞かない。聞く気もない。他人にも漏らすな。だがな、もしお前が何か特殊な能力を持っているとしたらだ、仮に持っていたとしたらだ」



 「はい」


 「アドバイスをやる。今すぐ自害しろ。遺書を書く時間くらいはやる。書いたら自害しろ。目立たないように静かに死ね。それが私の君にあげられる最大にして最良の助言だ」


 「・・・・・・え」


 「今は意味がわからないだろう。だがそれは素晴らしいことだ。意味がわかったときにはもう手遅れだからね。これは私の心からの助言だ、どこの誰かも知らない君へ贈る本心からの助言だ。もし心当たりがあるなら今すぐ死んだほうがいい。いいか、これは嘘じゃない。本心からの真心からの助言だよ」




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