サイドストーリー 修羅場
突然だがとある戦いの後に・・・
俺の異名は全てを貫く呪槍を持つもの・・・ゲイ・ボルグに決まった。
その戦いは実に激しいものだった。
以下はその死闘の物語である。
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「なあ、コンパいかないか?」
浩平が俺に悪魔の誘いをしていた。
「行く」
下半身で物事を考えていたその時の俺は気付けば即答していた。仕方ない。男にはそういうときがあるんだ。端的にいって俺はムラムラしていたんだ。
俺は、色々な死闘を乗り越えた結果、三次元世界の住人から二次元世界の住人になり、そして二次元世界から三次元世界の住人へと戻ることに成功していた。
一応性交も出来ていた。ある意味最高な性交体験だった。代償に性癖が少し歪んだ。あれはある意味魔の宴だった。酒池肉林ともいう。
その後色々あってEDになりそうになったが幸いなんとか無事だった。俺の富士山は今日も元気に聳え立っていた。
大学2年になっていた俺たちだが、俺も浩平も相変わらず脳内は糞だった。俺は色々深刻な問題は抱えていたがなんだろう、浩平といるとついつい楽しくて子供みたいにはしゃいでいたのだ。
一時期はとある事情で大学を辞めることを考えていたが今思えば通い続けてよかったと思う。
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「大学の腐れド外道テニスサークルの友人に頼み込んでコンパを組んでもらった。参加するぞ」
浩平は俺に告げた。
モテる男への僻みが入った偏見丸出しの発言だった。こいつも発言にさえ気を遣えば普通にモテると思うのだが・・・浩平の逞しい鍛えられた肉体に惹かれる女性は一定数いるはずだ。
「可愛いんだろうな?」
俺はいつもの感じで聞いていた。
「ああ、可愛い子か美人な子をちゃんと頼んだよ」
幸い構内のテニスサークルのコンパの評判は良いらしい。なぜならイケメン揃いだったからだ。テニスサークル所属の人間は必然と女にモテていた。
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「世話になる」
待ち合わせ場所にいた男に浩平が頭を下げていた。俺も頭を下げた。
「いいさ、貸し1な」
男はさわやかにそう言った。自己紹介をしたがテニスサークルの部長だそうだ。眼鏡の似合うイケメンだった。爽やかだった。とても女性にモテそうだった。
俺も最近はわりと女性と縁はあった。あったのだが縁のある女性はまともに付き合うには気が重い相手ばかりだった。手を出したら絶対にダメと決めている相手もいた。
俺の理性の限界が試されていた。もっと気楽な関係の普通の相手と甘酸っぱい付き合いをしたかった。俺には股間の魔王を解き放つ場所が必要だったんだ。俺のことが好きで好きでたまらない都合の良いエッチな彼女が欲しかった。
なんなら凄くエッチな姫騎士が良かった。俺にはもう姫騎士しか残されていなかった。昔は聖女と魔法少女という選択肢もあったが、その選択肢は過去の酷い出来事により失われていた。
聖女は間違いなく最低最悪の糞だった。魔法少女も糞だった。
いや違う。魔法少女は素晴らしかった。悪いのは俺だ。だが、もう俺は知ってしまっていた。俺がかつて憧れた魔法少女にも聖女にも俺の股間のチョモランマは何一つ反応することはなかった。もうその2つは駄目だった。もうどうしょうもない程に股間は反応しなかった。俺の股間の富士山はまるで買ってから2か月ほど経過したえのき茸のように萎れていた。
聖女に性的な期待を僅かだが抱いて死線を潜り抜けた過去の俺を殺したかった。過去の俺に殺意を抱いた。
あるいはアドバイスしてやりたかった。聖女だけはない。やめておけ。それならばまだ性格が凄くいい分魔法少女の方が遥かにマシだ。考えてたら意外とアリかもしれないな。魔法少女となら幸せな結婚生活を過ごせそうな気がしてきた。ちょっとした欠点はあるがそこにさえ目をつぶれば後は最高かもしれない。
二人きりで旅したときも居心地は良い上に楽しかったし。俺自身も魔法少女には強い好意を抱いている。あれ、アリか?アリかも?人のちょっとした欠点を気にしてても仕方ない。良いところを見よう。魔法少女には良いところの方が多かった。
たとえ魔法少女に前科がゴロゴロあっても、好きな人の前科ならばそれはあばたもエクボだった。
話が逸れた。待ち合わせ場所にはもう一人いた。わかりやすいチャラ男っぽい見た目だった。だが話すと意外と真面目だった。人は見た目で判断してはいけないな。チャラ男なんて思ってしまってすまない。
部長ももう一人の男も彼女がいるらしい、そして浮気をする気はないから今回はアシストに徹すると言っていた。真面目だ・・・すまない。俺はテニスサークル所属の人間に偏見を持っていた。このときは見直したよ。
ちなみに後で知ったがメガネをかけた部長には彼女が10人いた。遊びじゃなくて全員真剣交際らしい。刺されたりしないのだろうか?ある意味憧れた。部長にとって浮気の定義とはなんなのだろうか?少しだけ悩んだ。
「ちゃんとこの借りは返せよ。ものすごく大きな借りだぞ。女の子見たら絶対そう思うから納得したら借りを返せよ」
浩平はどうやら相当頼み込んだようだ。重々釘を刺されていた。
大きな借りが出来るにしてもコンパに慣れている男二人がアシストしてくれる上に来る子はみんな可愛い。本当にそうならば借りを作っても惜しくはないだろう。俺はそう思っていた。この時はな。
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コンパは4対4だった。
女性二人は遅刻しているらしく既に到着していた女性二人には少しだけ謝罪された。二人とも礼儀正しく好印象だった。
一人は丁寧な物腰の柔らかい好感の持てる田舎から出てきた素朴な黒髪美人・・・そんな感じの女性だった。なお、コートを脱ぐと腰は細いのにすごい大きなおっぱいが隠れていた。
黒髪美人は身体の線のわかるクリーム色のセーターに茶系のフレアスカートを着ていた。上品な色気を感じた。
服自体は普通の服なのだがくっきりと胸の形が浮き出ていてすごかった。浩平は生唾を飲んでいた。
もう一人は少しだけギャルっぽかった。髪は茶髪のショートカットで身体に密着したタイプの薄いピンク色のワンピースを着ていた。丈は短かった。太ももは健康的に日焼けをしていて適度に筋肉もついており、キュッとしまっていた。端的にエロかった。
胸のサイズは普通サイズだった。だが、顔は美形だった。色気のある美人だった。思わず生唾を飲んでいた。
「大当たりだな」
俺は思わずそう呟いていた。隣りにいる浩平も頷いていた。
「「ありがとう、本当に感謝する。君達に何かあれば俺たちはたとえ命に替えても君達を助けよう」」
俺と浩平は部長に対し真剣な顔でそう言っていた。無駄に気が合っていた。打ち合わせはしていないのに一言一句発した言葉は同じだった。
冗談と思われたのか皆笑っていた。まあ、それはそれで良しとしよう。
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楽しいコンパは続いた。自己紹介をして席を決めた。男二人は約束通りアシストに回って俺と浩平の隣りに女の子がいた。
最高だった。少し酒が入りエッチな話もした。気付けばボディータッチが増えていた。
全く嫌がられず、むしろ少しだけ身体を擦り付けられた。モテていた。モテ期が来ていた。こういう健全な男女交際を俺は求めていた。
最高だった。どうしよういくらお金を払えばいいんだろう。幸い金はあった。とある仕事を始めていた俺は幸いあぶく銭をたんまりと持っていた。
いや・・・金で人の気持ちは買えない。感謝の気持ちを示すために毎日テニスサークルのある方角に向かって日に何回か祈りを捧げたら良いだろうか。
あるいは部長の銅像でも作って祈りを・・・・いや待てよ浩平の実家の神木という名のただの樹齢だけ長い役に立たなかった見掛け倒しの木でも切り倒して木像でも作るか?
うん、そうしよう。
あいつにはビビらされたのに何も役に立たなかった恨みがある。後で夜にでもぶった切りに行こう。そして余った木材でキャンプファイヤーをしよう。
腐れ神木でキャンプファイヤー。いいじゃないか。何ならバーベキューもしたいな。酒の入った俺はそんなことを考えていた。
うんうん、決めた。そうするか。
そんな幸せな時間を過ごしていた。
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宴もたけなわという頃、俺たちは充分に仲良くなっていた。もう名前呼びをしていた。
浩平と仲良さそうに話している黒髪の大きな胸を持った素朴な美人さんはこう言った。
「沙霧と呼んでください。出身は秋田です」
いわゆる秋田美人だった。
俺に密着して座っている子はこう言った。
「わたし?わたしは地元だよ。静華でいいよ」
ギャルっぽい細身の美形の子は地元出身だった。
俺たちは全員連絡先を交換していた。今後の付き合いが楽しみだった。恋の始まりを感じた。
あわよくばこのあと行けるんじゃないか?俺の股間の槍を解き放つ日が来たのか。そんな邪な期待を抱いていた。近所のラブホテルの場所を俺を既に検索していた。
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そしてノックするコンコンという音が響き
「ごめんなさい、仕事が長引いて待たせちゃった。入っていい?」
扉越しにそんな鈴のなるような美しい女の声が聞こえた。
美しかった。現れた女はまさに天使だった。
細身だが締まった身体からは適度な色気があった。胸は小さかったが、そこは大して問題にならないくらい美しかった。肩まで伸ばした美しい黒髪が少しだけ靡いているように見えた。
女の服装は丈の短めのスポーツブラ風の肌着と短めのショートパンツに網タイツ。
そして、ある程度肌着が見えないように隠すように着せられた薄めの上着。隙間から見えるヘソにはピアスがついていた。
そんな男の劣情を誘うかのような身体と服装だった。
「うわ、超気合入ってない?まあ、中早く入れば?」
静華ちゃんはそう言った。
女は部屋の中を見渡すと無言で俺の隣りに座った。距離は近くてほぼ密着していた。
「またお会いできましたね。とても・・・嬉しいです」
鈴のなるような美しい声だった。妹パラダイスで会ったことのある男の娘がそこにいた。
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カナコは既に顔見知りの俺と浩平とは別に他の人間に自己紹介をした。
「カナコと申します。新潟出身です」
米どころの新潟出身だった。確かにあのとき見た肉体は白米のように白く美しかった。俺はそれを知っていた。あと、源氏名だと思っていたら本名だった。
いかん、呑気に考えている場合ではない。
「カナコと君は知り合いなの?」
俺と仲良くなった静華ちゃんがそう突っ込んだ。ちょっとだけ表情と声が険しくなっていた。
「ええ、知り合いですよ。ただの知り合いというよりは・・・もっと深い付き合いですけど。出来ればもう少し深く付き合いたいのですが、以前袖にされちゃったんです」
確かに嘘は言っていない。色々と抜けている情報はあるが。
「ふーん・・・・・・そうなんだ?」
静華ちゃんの声は硬かった。追求は続いた。
「深く付き合いたいってどういうこと?」
質問は続いた。
「具体的には言わせないでください。わかるでしょう。でも、脈はないってわかってます。私はちょっと摘み食いで遊ばれちゃっただけの女なのかなと思います。一晩だけの女だったのかなと・・・あれから連絡もなく待つ間に少し悲しくなりました」
カナコはそう悲しそうな顔をしていた。後ろの穴を遊ばれそうになったのは俺だと思うんだが・・・そういえば浩平はあのとき隣の部屋で断末魔のような声をあげていたな。ひょっとして・・・最後までやってしまったのだろうか?まさかな。
俺はふと気になり浩平の方を見た。この空気を変えたいのもあり助けを求めていたのもあったんだ。
浩平は静かに白目を剥いて力尽きていた。どうやら過去のトラウマを刺激されたようだ。すまない。あのときは悪いことをしたと思う。
俺は察した。察してしまった。
最後まで・・・やってしまったんだな。正確にはやられてしまったんだな。廃ホテルで虚ろな目をしていたのは・・・そういうことだったんだな。すまない。本当にすまない。
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浩平には頼れない。普段は頼りになる男だったが、過去のトラウマを刺激されて力尽きた浩平には頼ることなど出来なかった。自力でなんとかする必要がある。俺は覚悟を決めた。
遊ばれて捨てられた女だとカナコが言った後のコンパの空気は控えめに言っても最悪だった。針のむしろだった。だがこの程度のプレッシャーは経験済みだった。俺は時間が過ぎるのを耐えていた。
その時だ。この最悪の空気を変えてくれる人物が現れた。
「ごっめーーーーん!!日にち間違えてた!」
ドタバタと最後の一人の女がやってきた。
最後の一人も美人だった。
最後の一人を見た瞬間、俺はひたすら視線を下に逸していた。見つからないようにしていたんだ。
「あーーっ!久しぶり!元気してた!!」
だが、周りこまれてしまった。
妹パラダイスのリサだった。
相変わらず見た目だけは美人だった。そしてだらしない露出の多い男受けの良さそうな服装をしていた。服を脱いだ際の臭いさえなければ普通にアリだった。
リサは静華チャンと俺の間に強引に割り込んで座った。気付けば俺の左右は妹パラダイスシフトになっていた。すごく嫌なシフトだった。
「やーーーっ久しぶりだね!元気してた?あれから連絡ないし死んでるんじゃいかな?とか心配してたよー!!」
元気よく俺にひたすら話しかけていた。完全にロックオンされていた。
俺は無駄と悟りつつ必死に抵抗をした。
「ひ、人違いです。多分人違い」
「やだー、ウケる。流行りのギャグ?あんなことをさせておいてスルーとかないわー。初体験だったんだよー。あんな真剣な顔でおしっこを全身にかけて欲しいとか言ってきた相手忘れる訳ないじゃん。すっごい恥ずかしかったんだからね!」
空気がさらに凍った。どうしようか困っていた静華ちゃんは無言で席を立ち部長の隣りに移動した。
白目を剝いた浩平を心配していた沙霧さんも部長の隣に移動していた。浩平が倒れないように壁際に移動させた後移動していた。俺をドン引きした目で一瞬だけ見ていた。
何か小声でヒソヒソ話をしてるのが聞こえた。吸血鬼の優れた聴力が憎かった。
「アイツ、やばいんじゃない?」
「すまない、あんなやつだとは思わなかったんだ」
部長は真剣な表情で静華ちゃんに謝っていた。違う。誤解だ。後から思ったが10股かけてる部長にはそんな目で見られたくはなかった。まだ俺のほうがましだった。
「いわゆる・・・スカ○ロ?というものなのでしょうか。獣ですね」
清楚な雰囲気の沙霧さんはドン引きしつつも恥ずかしそうにそう呟いていた。
助けを求めて俺は再び周囲を見回した。
どこを見てもこちらに目を合わせないか、こちらを冷たい目でゴミを見るかのように見ている。
最近妹が俺を見る視線によく似ていた。
まだ慌てるような時間ではない。この程度の苦難はいくらでも乗り越えてきた。この程度の状況、あの城で対峙した化け物吸血鬼と比べたらまだ甘い。
この状況はなんとかしなければならない。俺に打てる手はなんだ?独力でどうにかできるか?誰かの助けを借りるか?その時俺はある男にアドバイスを求めてメッセージを送っていた。
初対面の印象は最悪だったが、実は世話焼きの紳士に俺は時折相談していた。一人でどうにかならないときは誰かの助けを借りる。情けないようだが、これは何か問題にぶち当たったときに必要なことだった。
「助けを送る。少しの間耐えなさい」
世話焼きの紳士は相変わらず頼りになった。誤解していて本当にすまなかった。俺はそう思いつつ耐えていた。
そして、助けはやってきた。ものすごく慌てて走っているようなドタバタとした足音が聞こえてきたのだ。そして部屋のドアが開いた。
「ぶ、無事!!?」
現れた女の表情からは明らかに焦りを感じた。死に物狂いで急いできた。余裕のない表情からはそれを感じさせた。女は部屋の中をぐるりと見渡した後、わかりやすく「あれ??」っていう顔をした。
そして女は俺の側まで歩いてきてひそひそと囁いた。
「あ、あの・・・助けに・・・来ました」
助けに来たのは、とある場所で出会って以来微妙な距離感で関係の続いている女だった。女はなぜか初対面の時のような露出の多い服装をしていた。あの時よりはかなりましだったが。
現れた女は可憐で華奢な体型の銀髪の美女だった。相変わらず庇護欲や嗜虐心を誘う表情をしていた。久しぶりにこの女の顔を見た瞬間、色々と思い出して少しムラムラした。
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ただでさえ凍っていた空気がさらに凍っていた。俺の左に妹パラダイスのリサ、右には妹パラダイスのカナコ、そして斜め後ろには新しく来た女がいた。女は顔に疑問符を浮かべながらも俺を守るかのように側を離れなかった。周囲を落ち着きなくきょろきょろとみていた。
なんとなく事情は察していたが現れた女に俺はこう聞いていた。
「何故ここにいる?」
「そ、その・・・あなたがピンチだって・・・聞いて」
予想はしていたが、世話焼きの紳士がよこした助けがこの女だった。明らかに助けにはなりそうになかった。
どうしよう・・・俺は少しだけ途方にくれた。そういえばあの紳士は愉快犯な所があった。畜生。俺は判断を誤った。
「この集まりは・・・その、何なのでしょうか?」
女は俺を見てそう聞いてきた。答えづらい質問だった。
「コンパだよ」
テニスサークルの部長がそう返事をしていた。見知らぬ相手にも紳士な対応だった。
この女は庇護欲をそそるタイプの美人だった。男なら優しくしようと思うのも当然かもしれない。出会った時はろくになかった胸もマシな食生活を続けるうちに少しだが育っていた。
「コンパ・・・ですか?それはいったい・・・?」
女の住んでいた地域にはそんな風習はなかった。無理もない。そんな余裕のある街ではなかった。きわめて殺伐とした場所だった。今思い出しても・・・ろくでもない出会い方だった。
「コンパを知らないの?コンパはね交際を求める見知らぬ男女が集まって、仲良くお酒を飲んでお話しすることだよ。男女の交際相手を探すために行われることが多いね。この集まりもそうだよ」
部長はスラスラと説明していた。
部長の説明を聞いた瞬間、女は俺を見て複雑そうな・・・悲しそうな表情をした。そしてなぜか俺の左隣に座った。妹パラダイスのリサを少し押しのけるようにして座った。
身体は俺と密着していた。女は目の前にあったアルコールの入ったグラスをつかみ、ゴクゴクと飲んだ。そして俺の方を見てぼそぼそとこういった。
「わ、わたしも・・・参加・・・します」
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初対面の時も思ったが女は話すのが苦手だった。いわゆるコミュ障だった。当然のごとく男性経験もなかった。
女は俺の左腕を静かに掴んだ。そして昔より少しだけ成長した胸の谷間に腕を挟んだ。満足そうに笑った。相変わらずよく変わる表情だった。
「お二人のご関係は?」
静華ちゃんが気づけば聞いてきた。ドン引きしつつも聞かずにはいられない。そんな表情だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺も女も無言だった。女はコミュ障だったし俺にはこの女との関係をこの場でうまく説明できる自信がなかった。
なんだろう・・・お互いに罪悪感を持っている複雑な関係だろうか?簡単に言える関係でもなく沈黙が流れた。
「腕組んでるけどさ・・・そういう関係なの?」
「・・・そういう?」
「ほら・・・その付き合ってるとか、もしくは付き合ってないけど肉体関係はあるとかさ」
静華ちゃんは言いずらそうにしつつも追及の手を緩めなかった。
都合の悪いことに・・・俺にとっては都合の悪いことにこの女は顔に現れやすい性質だった。いわゆる嘘のつけない女だった。
女は恥ずかしそうに頬を染めた。
「間違っては・・・いません」
素直にそう答えていた。俺の腕をつかむ力は少し強くなっていた。おっぱいの柔らかさを感じた。
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空気はさらに悪くなっていた。あれほど親しげに会話していた静華ちゃんの目は氷点下だった。妹パラダイスのリサは楽しそうに笑っていた。
「ウケるわ。おとなしそうな顔してるけど、そんな爛れた関係なんだ?」
リサは楽しそうに女に聞いていた。猥談は好物のようだった。好奇心で表情はワクワクしていた。
「爛れた・・・はい、一時期は・・・いっぱい。でも・・・ここ1年は・・・」
女は悩み事を相談するかのようにリサと話していた。
その言い方だと俺が散々弄んでヤリ捨てたように聞こえるんだが・・・極めて誤解を生む発言だった。
「えー?そうなのー?」
「・・・はい、その・・・一時期だけ・・・それ以来は・・・あまり連絡も」
なんだろう、この言い方だと俺がすごく鬼畜みたいなのだが・・・あれは合意があっての行為だった。それも愛情とか好意とかそんなものではなくお互いの打算ありきの割り切った関係だったはずだ。だが、そんな説明をしても説得力はないだろう・・・俺は困ったときに一番助けになる男を呼ぶことにした。
あの男なら・・・この凍り付いた空気を全て壊して有耶無耶にしてくれる。あの男にはそれだけのパワーがある。俺が一番頼りにしている男に俺は助けを求めた。
幸い顔を合わせる訳にはいかなかった浩平も気絶していたしな。
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ガラッ
それはすさまじい破壊力だった。半裸のプロレスラーみたいな肉体を持った男がそこにいた。男の肉体はほぼ剥き出しだった。
すごく・・・いい筋肉をしていた。男は極めて親しげに俺の方を向いて笑顔で語りかけてきた。相変わらず綺麗な笑顔だった。
男はこう言った。後は俺に任せろ・・・と。
俺は最終兵器に助けを求めていた。律儀な最終兵器は心配して駆けつけてくれた。最高の仲間だった。
男はこう言った。お前を守ろう・・・たとえこの身を犠牲にしても。
男は俺の目をしっかりと見て、真剣にそう言った。他人から見ればそれは・・・まるで永遠の愛を誓う告白のようだった。
そして、長い長い・・・悪夢の夜がようやく明けた。
・・・・・・・・・・
次の日、大学に通うと俺にはあだ名がついていた。
可憐な銀髪美女を弄んで捨てた上になぜか半裸のゴリゴリマッチョな男と付き合っている。
犠牲者は他にも何人もいる。女も男も何でもかんでも食ってしまう、そして容赦なく股間のドス黒い槍で貫いてしまう。
俺はそうささやかれていた。
厨二病を忘れていなかった学友が囁いた。
ゲイ・ボルグだな。
俺の異名はそうして決まった。無駄に能力にあってるのが悲しかった。