25話 結末
鳥のように空を飛んだ俺は物音を一切立てず静かに境内に着地した。
座敷牢を探そう。幸い既に心当たりの場所は発見していた。
木材を取りに来たときに見たあの蔵を目指そう。
俺は静かに・・・だが風のように早く移動した。
・・・・・・・・・・
・・・到着した。
辺りは相変わらず真っ暗だが、蔵の中からはわずかに何かの気配を感じた。前回は何も感じなかったが、吸血鬼になり五感が研ぎ澄まされたのだろう・・・望んで得た力ではないがこんな時は頼りになった。
俺は静かに・・・中の気配を探ることに集中した。静寂の中、蔵の中から何か人の足音のようなものが聞こえた。
足音が段々と近づいてきた。
そして、蔵の扉がギギギギギッという音を立てて開いた。
そこには浩平のお父さんの姿があった。闇の中、吸血鬼の視力で垣間見えるお父さんの表情は・・・苦悩に満ちていた。
「このようなこと・・・話せるはずがない」
苦悩に満ちた声だった。
ポツリと、だが確かにそう呟くのが聞こえた。
浩平のお父さんはやはり浩平のお父さんだった。悩んでいる時の表情すらそっくりだった。
浩平のお父さんは少しだけフラつきながら歩き、そのまま静かに何事もなかったように去っていった。苦悩に満ちた足取りだった・・・そんなふうに俺は感じた。
「チャンスは今だな、入ろう」
俺はそう思わず呟いた。
蔵の中は真っ暗だったが、吸血鬼の目にはよく見えた。昼間同然とは流石にいかないが、暗視スコープを装備した状態、その程度にはよく見えた。
蔵の中はよく整理されていた。お父さんの性格なのだろう、きれいに整っている。俺は隠し扉のようなものがないか、コンコンとあちこちと軽く叩きながら中を探った。
途中で鎧のようなものがあった。流石歴史が古いだけはあるな。かなりの年代物だろう。だが、特に関係はないな。俺は無関係な鎧のことは気にせず蔵の中を探し続けた。
隠し扉のようなものは発見できなかった。だが、蔵の中を探すうち・・・俺は一箇所だけ違和感のある場所を発見した。
他の場所はきちんと整理整頓されている。
だが、そこの一角だけはまるで・・・
何かもう不要になった処分する予定のものを適当にぶち撒けたような・・・
乱雑に打ち捨てられたかのような一角だった。
そこには吸血鬼の視力を持ってしてもよく見えないが、変わったものがあるように見えた。
骨壷を入れることが出来そうなサイズの・・・特殊な形をした箱のようなものがあった。
人と同じような大きさをした・・・まるで細長い死体袋のようなものがあった。
そして、人の腰と足の付け根の部分を象ったような形をした剥製のようなナニカがあった。
・・・嫌な予感がした。確かめるのが怖かった。
俺は嫌な予感を感じつつも、フラフラと少しづつ近づいていった。
火葬したあとに遺された骨を入れた骨壷を納める箱
処分する予定の遺体を一時的に入れる死体袋
生贄として捧げられた後に残った肉体部分の腰の剥製
どうかそんなものでは無いように・・・俺はどうしようもないほどの絶望の予感を感じながら・・・俺が自分自身に誓った使命のため、今も動けずに眠り続けている親友のため・・・
足を止めることなど出来るはずもなく・・・フラフラと壊れた人形のように近づいていった。
そんなものが無いことを俺は必死に祈っていた。
骨壷を納める箱・・・遠目からはそんな風に思えた箱には特徴的なきれいな文字でこう書かれていた。
「義妹〜カナコ〜 無人島でカナコとお兄ちゃんは二人っきりだね!付きっきりでいっぱいお兄ちゃんのお世話しちゃうよ!でも、エッチなことは禁止だよ!」
制作会社 株式会社グローバルスタンダード
脚 本 デスゲイズ平塚
作 画 ブラッディ★サザンクロス
声 優 長宗我部 信雄
監 督 カイワレ発光大王
浩平の妹は二次元だった。
発見した箱には肌色成分の多いスクール水着を着用した美少女の姿が描かれていた。確かに可愛かった。そこに異論はなかった。
遠目から死体袋のように見えたものは等身大抱きまくらだった。表は恵まれた美しい肉体のラインを強調した美少女の姿が描かれていた。裏はマイクロビキニを着用したけしからん姿の美少女がいた。中々のセクシーさだった。そして両面とも頬を染めたメスの顔をしていた。
枕に描かれた美少女の肉体の足の付け根の部分には何かを挿入するような穴がぽっかりと空いていた。まるで、何か棒状のモノを底なし沼のように飲み込んでしまうような穴だった。使った形跡があった。
ある意味真実の口のような魅力があった。
人間の腰部分の剥製だと思っていたものは、ソフトTPE素材で出来ていた。腰部分の性別は明らかに女のものだった。そして足の付け根にあたる部分には穴が空いていた。
その穴は新品ではなく、何度も使い古した使用感があった。
指を挿入してみたら、少しの抵抗はあったが滑らかにヌプッと入った。
・・・穴の中は何かの粘液でまだ湿っていた。
俺は叫びたい気持ちをギリギリと奥歯が砕けそうになるほど強く噛み締めながらなんとか耐えた。
気付けば俺はフラフラと美少女ゲームの箱を手にし、蔵を後にした。
外に出て、ふと空を見上げると雲が晴れて月が見えていた。
とても綺麗な月だった。
気づけば俺の目からはボロボロと何かの汁がこぼれ続けていた。
俺は流れる汁を止めようと、思わず目に両手をあてていた。
俺の右手には穴を確かめた際についてしまった粘液がついていた。まさしく悪魔の右手だった。
目から流れ出す汚い汁は激しさを増し、いつまでも止まらなかった。
どこからか嘲笑うクジラの声が聞こえたような・・・そんな気がした。
1部 NORMAL END
上記のような基本的にろくでもない作品です。
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今後とも御愛顧宜しくお願い致します。