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24話 決断


 親子の深い断絶を目の当たりにした俺はそれ以上何も言えず、失意のままフラフラと浩平の実家を後にした。ホテルに帰り悲しくて泣いた。



 泣くだけ泣けば少しだけ気持ちが落ち着いた。


 人間は不思議なものだ。まあ、ある程度の割合は吸血鬼なのだが・・・。


 夜になると落ち着くのは自分の中の吸血鬼の部分が夜の闇に心地よさを感じているのかもしれない・・・ふとそんなことを思った。



 嘆くのはやめた。


 俺は浩平の妹さんに伝えるべきことは伝えなければならない。



 浩平の実家の事情は俺にはわからない。


 古く由緒ある神社だと浩平は言っていた。


 そして実際に見た境内や神域を見るとただの神社とは到底思えなかった。


 おそらくあの神域には普通の人間では理解できない何かの力が働いているように思えた。




 ・・・磁場、いや結界のようなものか?


 考察しても知識のない俺には結論が出ない。


 いま大切なのは妹さんのことだ。



 正直イヤな想像をしてしまう。


 前世でこんな話を聞いたことがある。




 それは、双子は不吉な象徴とされていて、双子が産まれた場合、片方は産まれなかったものとして間引いてしまう・・・あるいは、産まれてすぐにどこかに幽閉されてしまい、死ぬまで日の目を見ることなく閉じ込められたりするという話だ。



 あるいは、生贄として何かに捧げられてしまったり、そんな血生臭い考えるだけで嫌になる話は少し昔の時代の風習として探せばいくらでもあった。



 そんな話は双子には限らない、女性を人柱にする話や色素の薄い人間アルビノを不吉の象徴として生贄にして沼に沈めたり・・・考えれば考えるほど浩平の妹さんのことが心配になった。




 流石にまだ生きているとは思いたい。


 もし死んでいたとしたら、目が覚めた浩平に俺はどんな顔をしてそのことを説明すれば良いのだろう。




・・・・・・・・・・




 浩平の実家の神社の周囲は真っ暗だった。


 わずかに月明かりだけが雲の隙間から覗いていた。潜入するには最適な夜だった。



 ホテルで悩んだ末、俺は浩平の実家に潜入することを決めた。


 以前、神域で木材を確保するために潜入したが、その時に浩平と話したことを俺は覚えていた。



 「あんまり悪いことをすると座敷牢に閉じ込めるぞ」

 そんなことを浩平のお爺さんは言っていたらしい。



 考えたくはない。考えたくはないが・・・浩平の妹のカナコさんは座敷牢に・・・幽閉されているのではないだろうか?



 吸血鬼に遭遇する2週間前に妹のカナコと離れ離れになったと浩平はそう語っていた。



 2週間・・・人が死ぬには充分な時間だ。だが、流石に死んでないと思いたい・・・希望的観測だが浩平のお父さんの最後の良心を俺は信じたかった。



 勿論、何か理由があって既に亡くなってしまっている可能性はあるだろう。だが、生きている可能性もまだある・・・時間が経つにつれ無事に生きている可能性が減っていく以上、今すぐの行動が必要だった。


 そして、今動けるのは俺だけだった。浩平は今も病室のベッドで痩せ細ったボロボロの身体で生き残ろうと戦っている。


 頼りない俺だが、この戦場だけは他の誰にも譲れなかった。



 とっくに覚悟を決めていた俺は吸血鬼の身体能力を活かし・・・神社の壁をまるで鳥のように飛び越えた。


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