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21話 悪夢



 一人ホテルに戻った俺は疲れ切っていた。

 限界だった俺は倒れるように泥のように朝まで眠るはずだった。







 その夜、俺は白い大きなクジラのような存在の夢を見た。




 前世から現世に転生する際に見たであろう存在だった。

 相変わらず巨大だった。この星にある一番大きな大陸よりも大きいように感じた。



 クジラのような存在から俺への悪意はなかったように思う。

 その存在はただひたすらにケタケタと無邪気に何かを見つめながら嗤っていた。


 嗤っているだけなのに嗤い声を聞くたびに俺の身体はガクガクと震えが止まらず、気づけば違う笑い声が直ぐ側から聞こえてきた・・・他に誰かいるのかと思いキョロキョロと気付かれないように俺は笑い声の主を探した。



 ・・・笑っていたのは俺だった。


 クジラのような存在の嗤い声を聞きながら俺は震えが止まらず気づかないうちに俺もケタケタと笑い続けていた。笑っていることに気づいてしまえば、自分の意志とは無関係に何故か理由もなく笑っていることに気が狂いそうだった。


 とても愉しそうな・・・狂っているかのような笑い声だった。



 俺は既に正気を失いかけていた。

 そして時間が経つにつれ残り少ない正気や人間性といったものが、生命維持に必要な重要な血管から血液がとめどなくドバドバと流れ出るように喪っていくのを感じていた。


 ふと何か大きなものの視線を感じてしまい、俺は視線の方向に目を向けてしまった。向けてしまった。


 そこにはケタケタと嗤い続ける無邪気なクジラのような存在がこちらを向いていた。

 視線自体に悪意は感じなかった。



 ただ、存在自体に底知れぬ表現のしようもない邪悪さを感じた。見ただけで遭遇しただけで狂ってしまうような存在感だった。



 その瞬間、俺はケタケタと絶叫するように嗤いながら意識を失った。それはとても幸運な出来事だった。



 意識を失いながらもクジラの嗤い声がいつまでもいつまでもどこかからケタケタと聞こえ続けていた。




 それは目が覚めてからも・・・しばらく続いた現象だった。




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