表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/159

17話 天使



 そこには天使がいた。



 俺の目が一瞬おかしくなったのかもしれないと思った。天使は俺の人生で出会った女性達の中で一番美しかった。誰かと比較できないくらい断トツのナンバーワンだった。もちろんこれは前世も含めての話だ。信じられないくらい美しかった。誰とも比較できなかった。



 「カナコです。宜しくお願いしますね」


 声も美しかった。涼やかな鈴のような美しい響きだった。偶然なのだろうが、親友の浩平の妹と同じ名前であることに背徳感を感じ、俺の興奮を上乗せした。


 仮にこの子が浩平の妹だとしても抱きたい。


 付き合いたい・・・土下座して頼み込んでもいい。そう断言できるくらいのレベルの美しさだった。


 異世界転生した俺のメインヒロインはここにいた。何の根拠もなく俺は強くそう思った。



 「あ・・・おれ・・・」



 「緊張してるんですね、私に全て任せてください」


 カナコちゃんは優しく甘い声で俺に語りかけてきた。すごく優しい声と手つきだった。



 一瞬で夢中になった。色々やってしまったし・・・してもらった。



 胸は・・・少しだけ硬かった(・・・・・・・・)ような気がしたが、そんなものなのだろう。


 前世でも童貞を捨てることが出来なかった俺には女性の胸についての良し悪しはわからなかった。



 前世と現世を通じても初めての経験に俺はひたすら感動し興奮した。

 


 「カナちゃん・・・」


 「・・・ふふふ」



 俺の上に乗ったカナコちゃんと視線がいやらしく絡んだ。


 カナコちゃんは興奮して火がついたのかギラギラとした目をしていた。


 ゴクリとツバを飲み込む音がした。多分俺も似たような目をしていたと思う。


 興奮で爆発しそうなくらい心臓がバクバクしていた。しばらく見つめ合っていたその時だ。




 おや?何かゴツゴツとした硬いものが当たるがなんだろう?・・・ふと俺は下の方に視線を向けた。



 カナコちゃんの下半身には・・・太くて鉄のように硬くていやらしく黒光りしている巨大な棒があった・・・何かに例えるならば・・・それはまさに鉄塊だった。




・・・・・・・・・・




 単なる肉棒と言うには大きすぎた。


 単なる肉棒というにはそれは分厚く硬すぎた。






 そう・・・それはまさに鉄塊だった。


 その鉄塊、あるいは白い巨塔ならぬ黒い巨塔と言ってもいいかもしれない。




 黒い巨塔は俺のメインヒロインのカナコちゃんの本来なら女性器があるはずであろう場所から生えていた。




 どうやらカナコちゃんはカナコ君だったようだ。


 ふと、視線をあげるとカナコ君と目があった。欲望に火がついた獣の目をしていた。


 さっきは俺もこんな目をしていたんだろうな・・・今の俺の目は何でも食う肉食動物ハイエナに喰われそうになっている草食動物カピバラのように怯えた目をしているかもしれない・・・そう思った。



 吸血鬼と何度も殺し合いをした経験が生きたのだろう。俺は自然とこう口にしていた。


「まだ初対面だし、そこまではしなくてもいいさ。カナコ君(・・・・)の身体を大切にして欲しい。何度か会ってまたしてもいいと思ったらお願いするよ」



 流れるように口から嘘が出た。


 吸血鬼と戦った経験が生きた。


 大切にしたいのはカナコ君の身体ではなくて俺の尻穴だった。


 必死に時間がすぎるのを耐えた。



 「さっきまでみたいに・・・カナちゃんって呼んで欲しいです・・・」


 そんなことを言いながら、甘えて身体と股間の凶悪なブツを尻の穴付近や足に擦り付けてくるカナコ君を熟練者のように慣れた手付きでなんとかさばきながら俺は大切な処女をなんとか守り抜いた。



 この年まで大切にしていた童貞よりも先に処女を失いたくなかった。


 時折あたる鉄塊が無性に心に痛かった。




・・・・・・・・・・




 店から出た俺はフラフラと力なく歩き、壁に手を付き倒れ込むようにその場に座り込んだ。


 そのままどれほどの時間が経っただろう・・・気づけば俺は自然と夜空を見上げていた、月がとてもきれいだった。美しかった。


 月の美しさと比べたら俺の今の状況なんて大したことじゃないかもしれないな・・・ふとそんなことを考えたりもした。




 視線を月から目の前におろすと、そこには俺と同じく壁際で小さく膝を抱えて震えながら体育座りをした浩平がいた。


 浩平は膝に顔を埋めながら何かをしきりに御経のようにブツブツと唱え続けていた。



 「妹怖い、妹怖い、妹怖い、妹怖い、妹怖い・・・」



 ひたすらそのように唱え続ける浩平の姿を見た俺は思わず噴き出した。少しだけざまあみろと思った。


 浩平の立てた作戦のせいで俺が味わった妹パラダイスのリサという地獄を浩平も味わったのだろう。なんだか無性に楽しくなった。


 この問題を解決した後にでも、浩平には次の地獄カナコを味わわせてやらないとな。


 笑った俺は、久しぶりに少し穏やかな気持ちになった。浩平が再起動して動き出すまでの間、そんなことを考えながら優しい目で見守っていた。




・・・・・・・・・・




 その日はお互い無言でホテルに戻り眠りについた。


 何か話せば・・・俺はきっとアノ黒い巨塔の硬さと俺を性的に喰おうとしていた肉食獣ハイエナの瞳を思い出すだろう。


 今晩は諦めて無言で不貞寝するしかなかった。




 仮眠程度の時間ひと眠りした俺は、前回の戦いの敗戦の原因を冷静に考えていた。


 敵を知り己を知れば百戦殆うからず・・・という昔の武人の言葉があるが、まずは相手のことを調べることが肝要だろう。


 俺はまず徹底的に相手のことを調べることにした。


 調べた結果わかったことがある。




 妹パラダイスはいわゆる地雷店だった。


 レビューや口コミ投稿を見てみたが散々な結果だった。敵を知るという戦いの初歩さえ抑えていれば、俺も浩平も妹パラダイスという地獄で苦しまなくて済んだはずだった。


 今回の事件が起きるまでぬるま湯のような安全な世界で生きていた俺の考えは甘ちゃんだったようだ。次回は成功させてみせる。そして出来れば違う意味でも成功がしたい。


 リサとカナコという戦場を渡り歩いた俺の経験が少しだけ俺を戦士として成長させていた。

 


 原因はわかった。今夜は再び休んで傷を癒そう。


 そう的確に判断した俺は、自分の確かな成長に満足を感じながら朝まで深い眠りについた。




 次の日、目が覚めて本格的に賢者モードになり気づいたことがある。


 吸血鬼対策どうしよう・・・。


 気づけば残りの日数は一日減っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ