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9話 来客


 俺は本日8杯目になる紅茶を啜っていた。味は美味しい。初めて飲んだ時と比べて少しずつ美味しくなっている。そこに不満はない。強いて言うならば買い置きの煎餅とは合わないのでクッキーでも買っておくべきだろうか?半ば現実逃避をしながらそんなことを考えていた。


 時刻は15時、紅茶を飲みおやつを食べるのには悪くない時間だ。むしろベストと言っていいだろう。そこに問題はない。問題があるのは昨晩呼んでもないのに呼ばれた気がしたとかいって家に来て泊まったあげく、朝ごはんを食べ(それはまだいい)、昼ごはんを食べ、そして今おやつを食べてニコニコしている隣に座っている存在だった。とてもかわいい。それは認めよう。



 帰らない。それとなく帰るように促しても帰らない。本日が日曜日だったのが致命的だった。学校がないからゆっくりしていても問題はないのだろう。一切帰るようなそぶりを見せなかった。むしろ夕飯は何にしましょうかという質問が出る位だ。なにか嬉しいかはわからんが、ちょいちょい人の身体をツンツンとついてくる。やめろ、俺の身体はおでんじゃないんだ。



 こいつ、まさか今夜も泊まる気か・・・?これ、気づいたら何日も何日も居着かれるやつじゃないだろうか。嫌な予感がする。昨晩、鬱屈していた俺を助けてくれたのは有り難い。それは有り難いんだが、早く帰って欲しい。手を出す気は無いのだが、密室で二人きりの上に薄着でいられると理性が削られる。ボディタッチも多い。なんだろう。押し倒して欲しいのだろうか?肉体は大人だし手を出してもオッケーだろうか?



 オッケーかもしれない。見た目は極上だ。だが、ほぼ間違いなくこの少女は地雷だ。手を出したが最後、逃げられる気がしない。一発やったが最後、結婚するか無理心中するかのどちらかを選ばされるだろう。浮気をしたら目の前で相手もろとも俺を滅ぼしそうだ。



 ドライを容赦なく黒い鈍器でぶん殴り火を放ちあっさりと滅ぼした姿は強烈だった。あの戦いを経て相当に強くなった俺だが上には上がいる。そう、この少女は確実に今の俺より上の存在だった。


 俺は無邪気にニコニコと笑う少女を見ながらそんなことを考えていた。




 「なあ、詩音」


 「はい、なんでしょう」



 「そろそろ帰らないか?」


 「もう帰ってますよ」



 ・・・おかしい。言葉が通じていない。



 「そろそろ帰らないか?」


 「もう帰ってますよ」


 

 「すまない、そろそろ大切な用事があるのだが・・・」


 「どうぞ」



 動かない。そして俺の肩に頭を載せて体重をかけていた。俺は大切なとても大切な用事がある旨を話し説得し、なんとか夕飯前には詩音を帰宅させることに成功した。



 もちろん、特に用事などなかった。






・・・・・・・・・・






 「ふう、長かった。あいつ・・・どんどん遠慮が無くなってるな」


 おそらく心を開いているのだろう。年齢を考えたら甘える相手がいるというのは悪いことではない。だが、それはそれこれはこれというものだ。嫌いな相手ではないとはいえずっと一緒にいるというのも息が詰まる。俺は自由を愛する人間なんだ。とりあえず何かおっぱい柔らかくてムラムラしたし性欲の発散をしたい。久々にエロゲーをしながらオナホールでも使ったものか。



 う・・・オナホ・・・どろりと目に落ちてくるぬるぬるした白く濁った液体・・・嫌な思い出が頭をよぎった。



 ふう、金はあるんだ。今更オナホに頼らなくても大丈夫だ。そういえば鬱屈していた時にキャバクラに連日通っていた時に一発やったあの子達は今日は出勤してるのだろうか?枕営業ってあるんだなあ。さすがに四桁万も使うとそういうサービスも出てくるのだろうか。ベロンベロンになるまで酒飲んで家に帰ろうとしたら家まで送りますよってタクシーに乗り込んできたんだよな。二人も。


 あの子達名前なんだっけ?最初は上機嫌だったのに名前間違えたらすごい不機嫌になったんだよな。仕方ないじゃないか・・・酔ってる上に3Pなんだし。名前を間違えても仕方ないと思うんだ。


 いまいち覚えていないのだが・・・エロいことをしている時にわりと無茶なことをさせた気がする。あの後、コップに黄金色の独特の匂いがする生暖かい液体が残ってたんだよな・・・なんだろう?まあ、次会った時に聞けばいいか。






・・・・・・・・・・






 ガチャリ


 「・・・はやく」


 「・・・ああ、寝ているうちに縛るぞ」



 ん・・・なんだ。



 「・・・よし」


 「・・・探すぞ」



 「・・・無いぞ?」


 「ちゃんと探せ!」



 「探してる!」


 「・・・仕方ない。おい!起きろ!」



 ・・・ん?



 「・・・なんだ?お前ら」


 目の前には二人の男がいた。顔は目出し帽をつけていて目以外はわからない。声と目元を見るに同年代かいくらかは年上だろうか?両名とも手にはナイフを持っていた。



 「いいか、大声を出すなよ」


 「うん・・・なんだ?」


 俺はまだ寝ぼけていた。詩音の相手をした後にエロいことを思い出しムラムラして自慰に耽り疲れていたのだろう。ありあまる体力を活かしテクノブレイクする直前まで抜いた俺は久々に気持ちよく熟睡していた。



 「金はどこにある?」


 「・・・金?」



 「ああ・・・金だ。現金を持っていないのなら口座の暗証番号でもいい。派手に遊んでいるんだ。持っているんだろう?嘘はつくなよ。裏は取っている」


 「ああ・・・ひょっとして強盗?」


 ようやく頭の働きだした俺はそう聞いていた。



 「・・・まあ、そんなもんだ。わかるな?別に俺たちはお前をいたぶりたいわけじゃない。目的は金だ。金さえ出せば悪いようにはしない。わかるな?」


 「ふーん、悪いようにはって?」



 そう返事をした瞬間、無言で立っていたもう一人の男が俺の顔面を蹴った。特に痛くはない。なんだ、せっかちだなあ。


 「舐めてんのか?」


 「いや、特に」


 そう答えた瞬間、馬乗りになった男が顔面を殴ってきた。一発ではない。数えていたが15発、それなりに男は力を込めたのだろう威力で殴られた。特に痛くはない。



 「うーん、なんで俺の家に来たの?」


 そう質問をした瞬間、男はさらに殴ってきた。さっきよりも多分力を込めている。ただ、相変わらず痛くはない。それほど体力は無いのだろう。少し男の息が上がっていた。殴られながら数を数えていたが合計42か。


 それにしても・・・このマンションは特に豪華なマンションではない。ごく普通のマンションだ。特に富裕層向けという訳ではない。むしろ平均よりは少し下くらいの家賃だろう。空き巣ならともかく、わざわざピンポイントで狙うような理由は無い。



 「・・・なんだてめえ」


 「なあ、なんで俺の家に来たの?」


 殴り続けて疲れたのか男はぜーぜーと荒い息を吐いていた。俺はとりあえず呼んでいない来客相手に寝ているのもなんなので起き上がることにした。



 「よっこいしょ」


 そう言いながら起き上がろうとした所、もう一人の男がナイフを持って肩を刺しに来た。おお、結構やる気あるなあ・・・俺はあくびをしながら肩に刺さるナイフを見ていた。




 「お、刺さったね」


 「・・・刺さったねじゃねえよ」


 普通のナイフも一応刺さるんだなあと皮膚を数ミリ程度穿いたナイフを見ながらそんなことを話しかけていた。まあ、これで正当防衛だな。やるか。43回まではおあいこだ。






・・・・・・・・・・






 目の前には静かに泣きじゃくる二人の男がいた。ゆっくりとお話をして少しずつ色々と聞いたところ、ちょうど同年代のようだ。なんでも金に困り闇バイトというものに応募して俺の部屋に強盗に行くように上から指示されたらしい。どうして俺の部屋に金があると上が判断したのかは知らないとのことだった。



 多分嘘はついていない。なぜなら、最初にその返事が帰ってきてから指の骨を一本ずつ折っていったが、答えが変わらなかったからだ。口を割らない根性のあるやつの可能性もあるので指だけじゃなく、脚の骨も折った。むしろ脚の骨は逃げられないように一番最初に折ったが、視覚的効果を狙って骨の飛び出す開放性の複雑骨折にしておいた。




 「うーん、困ったなあ・・・」


 そう呟きながら俺は考えていた。こいつらはまあ始末してもいいだろう。ナイフで刺してきたし、殺しても正当な防衛行為だ。部屋が血まみれになるのは嫌なので血を啜った後に死体はゾンビのウヨウヨいる墓場のエリアにでも捨ててこよう。すぐに土に帰るはずだ。行方不明者として処理されるだろうしそれは問題ない。


 問題はこいつらの上にいる奴らだ。推測するに連日キャバクラ通いをすることで反社会的存在に目をつけられたのだろうか?だが、なんで家がわかったんだろうな。酔っているとはいえ後をつけられたらわかるぞ。



 ああ・・・ひょっとしてあの子達かな?よし、試すか。



 今後の方針を決めた俺は男たちの持ち物と指を没収し、血を吸った後に死体の処理をした。




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