2話 泡銭
あれから少しいざこざはあったが、最低限の挨拶を済ませた俺は眠りについていた。なにしろ疲れていた。
あの街に行ってからゾンビ退治、グール退治、3P童貞喪失からの裏切り手足ちょん切られ、三色騎士退治、糞聖女のやらかし事件、吸血鬼退治、城の生存者確認。それだけでも大変なのに途中で何度も死んで黄泉帰りながらの進行だ。実際に経過した時間と体感時間には大きな差がある。うん、もう数えてないけど百回以上は死んだな。なんなの、死にゲーなの?慣れたけど難易度高くないか?ってたまに思いながら頭ぶっ壊れながら色々試してたらいつのまにか勝てるようになってるんだよな。不思議なもんだ。
俺もう働きすぎじゃないかな?帰ったら休もう。報酬それなりに入るだろうしあいつらの生活の最初の面倒見たら休もう。久々に風俗行きたい。いや違った大人の遊び場に行きたい。キャバクラでもなんでもいい。俺に癒やしをくれ。責任とか取らずに遊べる気楽な癒やしが欲しい。心底欲しい。
とりあえず、人の寝床に薄着で侵入してきていたこいつはどうしようか・・・うん、ほっとくとエスカレートするし寝起きアイアンクローでいいな。
朝起きて初めての作業は肌着姿の詩音をアイアンクローで起こすことだった。爽やかさ皆無の朝だった。
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「痛かったです」
「だろうな」
朝飯を食っていた。もちろん作ってくれたのはカーネルだ。いつもの魔法少女の露出の多い服装に丈の短いフリフリのエプロンをつけていた。エプロン似合うな。わりと家庭的な所あるしな。俺はもうカーネルの魔法少女衣装に対して慣れきっていた。
ムキムキの筋肉にフリフリのエプロン。悪くない。脳内の常識の汚染は悪い意味で順調に進んでいた。
「もう少し優しく出来なかったのでしょうか?初めてでしたのに・・・」
朝飯の小豆載せトーストを貪っていたらそんなことをふくれっ面でブーブー言っている詩音がいた。どうやら起こし方が気に食わなかったらしい。次は頭から水でもぶち撒けてやるか・・・いや、濡れ透け・・・悪くないが朝立ちしている状態での濡れ透けは宜しく無い。とても良いのだが宜しく無い。次は容赦なく部屋からぶん投げて追い出すとしよう。安眠するためにもドライみたいに結界使えるようになりたい所だ。あるいは寝ている間守ってくれる使い魔?あるいは護衛?パートナー?とりあえずまともな常識がある程度一致する相手が欲しい。今後の課題だな。そんなことを考えていた。
なお、少し離れた席で家族でご飯を食べているアリシアさんは会話を聞くたびに不自然なぎこちない動き方をしていた。多分なにか勘違いをしている気がする。まあ、機会があれば誤解を解くとしよう。
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「で、現状は?」
「ドミさんから説明は聞いたよ。契約はまだだ」
「そうか」
「うん、正直不安はあるさ。でもそうしなければテッドの手足が戻らないと言うのなら実質選択肢は無い。選択肢が無いと言うのなら逆に気楽な面もある。他に選択肢が無いのならそれを選ぶしかないからね」
「そうだな」
「それに・・・困ったことが起きたら助けてくれそうな相手もいるしね」
ヨナは腕を組み心なしか胸を強調しながらこちらを見てそう語っていた。
「・・・助けれそうならな」
「そうだね。ちゃんと報酬はたっぷり払うよ」
少しだけ舌を出しいたずらっ子のような表情をしながらそう言っていた。朝からエロかった。カーネルに食後の紅茶のお替りを注がれて朝を満喫している詩音さんがすごい表情でこちらを見ていた。
その後も色々と話しをしたが呪いの武器の契約が済むまではこの島を出れないそうだ。そして、その後もドミさんから今後の生活について話があるらしい。聞けばどこに住むとかお金の稼ぎ方まで一式お世話になるらしい。部屋を借りるにしても身分証のない人間では中々難しい。代わりに俺が部屋を借りてそこに住ませるとかも考えていたが、ドミさんがそこまで面倒を見てくれるなら任せておいた方がうまくいくだろう。
あちらとこちらでは色々と常識も違う。慣れるまでは大変だろうししばらくは気にかけて様子を見ることにしよう。
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「よく帰ってこれたな・・・俺」
一人暮らしの部屋に帰ってきて一眠りした俺は夜に目を覚ましてそう呟いていた。あの島でも一眠りしたがやはり家で休むのと慣れない場所で休むのでは落ち着き具合が違う。一人暮らしを初めてそれほど長くはないがそれなりにこの家に愛着も湧いていた。それはけして悪くない傾向だった。
さて、そういえば報酬はいくらだったかな・・・うん・・・?
色々と酷い目にあって目がおかしくなったのだろうか・・・いや・・・何度見ても・・・
気づけば俺の銀行口座には億単位のお金が振り込まれていた。わ・・・わーい。




