1話 帰還
後始末を済ませた俺たちは島に帰還していた。
もう心底疲れ果てていたから本当はとっとと家に帰って休みたかったが、アリシアやヨナやテッドに生き延びた連絡をする義理がある。
見知らぬ土地で不安がっているだろうしこちらを心配しているだろう。生き延びたことを早く伝えて安心させてやらないと。ああ、もちろんドミさんにもな。あれだけ心配してくれたんだ。感謝と生き延びた報告はちゃんとしないと。
そんなことを考えながら島の中を四人で歩いていた。
なお、左腕には詩音のおっぱいが当たっている。むしろ全身抱きついて胸だけでなく身体を擦りつけて来ていた。城で告白されてからひたすらこんな感じだ。愛していると告白はされたものの、その愛に答えるとは一言も言ってないのだが。まあ、とりあえず幸せそうだしいいとしよう。わりと普段通りだし服を脱いでいないだけマシだ。おっぱい柔らかくて気持ちいいし。告白の返事は保留だが触れるおっぱいは触るよ。おっぱいに罪は無い。むしろ相手が押し付けて来てるんだし俺は悪くない。疲れたときのおっぱいは心に染みる。そう思う。
カーネルは穏やかにそんな俺たちを見つめていた。表情に少し疲れは見えたが穏やかだった。
腐れ聖女は無表情だった。
何を考えているのかはわからない。こいつのしたことを考えるとあの城で殺しておきたかった。だが、カーネルが傷を負ったのを見て明らかに動揺を見せたことやカーネルが庇い続けていたのを見ると・・・まだ手遅れではないのかもしれない。一応味方陣営でもあるし、少なくとも今は手を出す気はなかった。それに攻撃を仕掛けようにも俺の腕はおっぱいで封印されていた。
・・・・・・・・・・
「やあ、おかえり。無事で何よりだ」
城のような建物の入口でドミさんが一人待っていた。俺たちが無事に帰ったことが嬉しいのだろう。ご機嫌そうにしていた。
「吾輩はね。嬉しいよ。君たちが無事に帰って来てくれてね。本当に嬉しいよ。君たちが死ななくて本当に良かった」
ドミさんはうんうん満足げに頷いていた。そしてしばらくこちらを順番に全員見つめた後、建物の扉を開けた。開いた扉からは満面の笑みのアリシアが飛び出して来た。
アリシアは一目散に俺の元にやってきた。そして飛びつこうとしたが、俺の隣に詩音が抱きついているのを見た瞬間あれっ?という表情をして動きが止まった。そして嬉しさ8割悲しさ2割といった複雑な表情に変わった。
「何かご用でしょうか?」
相変わらず俺の左腕にギュウっと抱きついている詩音がアリシアに話しかけていた。心なしか発する言葉がトゲトゲしい。アリシアが出てくるまではフニフニと幸せそうな猫のように糸目になっていたのだが、気づけば真顔だ。真顔でアリシアをガン見していた。心なしかちょっと殺気を感じた。すごいな。俺の腕に抱きついたままなのにものすごく真顔。廃ホテルで会った時よりも険しい表情をしている気がする。
「あわ、あわわわわわわ」
コミュ症気味のアリシアは早速テンパっていた。無理もない。美人は無表情になると迫力が出るという。そして詩音はまごうことなき美人だ。その上ガン見。初対面なのにガン見。敵意を込めたかのようにガン見。テンパっても無理はない。
「おかえりなさい」
開いた扉からゆっくりと歩いてきたヨナがそう言った。嬉しそうに笑っている。君はまったく仕方ないなあといったニュアンスも見える。初対面の時よりは内心が随分とわかりやすい柔らかな表情をしている。
「ああ、ただいま」
苦笑いをしながらそう答えた。その瞬間、スウッと詩音の視線が鋭く変化したような気がした。アリシアは相変わらずあわあわ言っていた。相変わらず可愛かった。ヨナは落ち着いた笑みを見せていたが頬に汗をかいていた。




