勇者編⑥初めての仲良し
「て、ことがあったんだけどさ。ちょっと酷いと思わない?」
「大変だったね」
私はこの世界に来て初の家出をしていた。まあ、書き置きは残しているから家出とはちょっと違う。私は隠者の家まで愚痴りにわざわざ来ていた。隠者は呆れながらも話に付き合ってくれた。
「だいたいさ、年齢=彼氏いない歴ってさ、女として終わってない?あんだけ美人なのに一切ないってなんかよっぽど中身がポンコツなんだよきっと。あのポンコツ夢女。いくらなんでも人のことをウンコ漏らしとか女らしさの欠片もないとかいくらなんでも酷すぎると思うんだよ。さすがの私もちょっと精神的に傷ついた。ダメージ来た。後、肉体的にもダメージ来た。何本短剣投げつけて来るんだよ。護衛対象に護衛係が短剣投げつけるっておかしくない?見てよこの傷。必死で逃げまくったのに執念深く追いかけられて何発か食らったよ。酷くない?」
自分も年齢=彼氏いない歴であることを棚に上げて私はひたすら隠者に愚痴っていた。
いや、正直動揺していたのだ。まさか無言で短剣を殺意を込めて投げつけられるとは思わなかった。ずっと私に優しかったしさ、まさか物理的に攻撃されるとは夢にも思わなかったのだ。
「まあいいじゃないか。喧嘩するほど仲が良いって言うしさ。本当に仲が悪かったら言い合いにもならないだろうしさ。仲良しなら口喧嘩もするし殺し合いくらいするさ」
「・・・まあ、仲は良いけどさ」
「だろ?まあ、ここで吐き出してスッキリしたら仲直りすればいいんだよ。仲直りが出来るってのはとても素晴らしいことだ。喧嘩してそれが最期の別れだなんて嫌だろ?」
「うん・・・」
「いい子だ、さてスッキリするのにそうだな・・・君、処女だよね。女同士はイケたっけ?一発やってく?女同士も悪くないもんだよ。なんなら今から処女を喪わない範囲で最高の快楽を味わわせてあげよう。性欲が満たされたら人間スッキリするもんなんだよ。心のモヤモヤも晴れるしさ。うん、いい案だな。やろう」
思ってもいなかった斜め下の提案をされた。何言ってんだこのやる気なしダウナー隠者。
「・・・隠者って両方いける人?」
「勿論だとも。長いこと生きてるからね。これでも性経験は豊富なんだ。受けも攻めも両方イケる。男も女も両方イケる。動物相手でもイケる。なんなら化け物相手でもイケるとも。長生きしてるとね、色々あるんだよ。複数相手もイケるし。道具もイケる。むしろ私がイケない相手や存在がいたら紹介してほしいくらいさ。ああ、いっぱい色々やったしやられたからね。まあ、でも受け身になる経験の方が多かったかな。ほら、長く生きてるとさ、変態貴族に捕まって城の地下牢に鎖で繋がれて動物みたいに飼われたりとか、村の座敷牢に幽閉されて村の人間全員の慰みものになったりとかよくあるしさ。いやあ、穴という穴に熱した焼きごてを挿入されたときは辛かったよ。拷問慣れしている私でも叫んだね。まあ何回もやられたら慣れたけどさ。何事も経験だよね」
「いやいやいや、そんなこと良くあるわけないでしょ」
「いや、結構あるよ?最近はないけど、以前は100年に最低2回くらいは捕まってたし。まあ、一回捕まると数十年単位で自由を奪われたりするんだけどね。別に普通にセックスする分には全然いいんだけどさ。嗜虐趣味の相手に捕まるときついよね。やんごとなき人だから子供が出来るのが不味いってのは理解できるんだ。跡継ぎ問題で揉めるからね。でも、堕胎薬代わりに焼きごては無いと思うんだよ。薬と焼くをかけたのかな?って焼きごてを挿入されながら悩むよね。さすがの私もその発想には最初はドン引きした。普通に堕胎薬を飲ませて欲しかったよ。まあ、長生きしてるけどそんなんばっかりだったからね。いやあ、最近ついてる。実についてる。楽しいよね。陵辱&拷問付きの監禁や監視無しの自由な生活出来るってさ。素晴らしいよね。最近楽しくて仕方ないんだよ。年寄りだけどなんだか若返った気分さ。というわけで私のお祝い代わりに一発やらないかい?割と君の声好きだしさ。責めたらどんな声で泣くのか興味あるんだよ。生娘が年の離れた友達と思っていた相手に一方的に陵辱されてヒーヒー言わされるのって想像したらこうぐっと来るものがないかい?」
「・・・・・・」
やべえ、前から思ってたけどこの女頭のネジ外れてるわ。言ってることがヤバ過ぎる。なんだよ・・・変態貴族に捕まった経験が何回もあるって。隠者じゃなくて淫者の間違いじゃないのかこの女。いい加減なダウナーな雰囲気は好きなんだけど・・・油断したら性的に食われる。
いや、私も性欲はあるんだ。あるんだけど・・・初めてが同性相手の上に頭のネジの外れた変態女か・・・うん、出来れば避けたい。クソみたいな私でも初体験くらいはちょっと夢見てもいいんじゃないだろうか。
「いや、初体験はさ。大切に取っておきたいのよ。ほら、好きな男性相手にこうロマンチックなシチュエーションでさ・・・優しく奪われる感じで」
「男に全くモテない君が?無理じゃないそれ?君の護衛係と同じようにずっと独り身になるだけな気がするけど。それよりとりあえずやれるチャンスがあるならやっとこうよ。女同士の快楽もいいもんだよ。大丈夫ちゃんと優しくするから」
「いやいや、上級者過ぎるわ。私処女だし。せいぜい自慰くらいしかしたことないしさ」
「うーん、わかってないね。初めてが男相手だと痛いよ?それに・・・うまくいかない可能性もある。そもそも痛いだけで気持ちよくない初体験に価値はあるのかい?練習だよ、練習。女相手に練習をしてこっそりと性経験を持ちつつ、男が出来たらさも全く未経験かのように振る舞えばいいのさ。その方が男相手の初体験もうまくいくし、性欲も満たせる。自慰してるのなら性欲はあるんだろう?」
「まあ、あるけどさ・・・」
私は少しだけぐらついていた。正直戦争後はムラムラしてることが多かったのだ。最近は軍団長と生きるか死ぬかの戦いを繰り返していたせいで、生存本能が刺激されまくった結果性欲も増していた。
肉体は火照り私はムラムラしていた。一人の時は自分一人で鎮めていたが、たいてい側にシオンがいたから我慢していることの方が多かったのだ。成長して性に目覚めた私は性欲を持て余していた。
「ここだけの秘密だし、嫌ならすぐに止めるさ。減るもんじゃないし何事も経験だよ経験」
「じゃあ、ちょっとだけ・・・」
私は気づけば淫者の口車に騙されていた。私はベッドの上に寝転び服を脱いでいた。下着姿になった私の上には淫者がのしかかっていた。
経験豊富というだけはある。淫者は服を脱いだ私に対し一切動揺や興奮する様子を見せていなかった。ただひたすら的確に私の身体の敏感な部分を刺激していた。包帯で目を隠していて目が見えないというのに器用なもんだな。そんなことを考えながら私は淫者のもたらす刺激を受け入れていた。
悪くない・・・
いや、むしろいい・・・
いや、これはひょっとして、最高では?
そんなことを思っていた瞬間だ。
ガチャリ。
淫者の家の玄関の扉が開いた音がした。そして、玄関を見るとそこには数日前に喧嘩別れしたシオンがいた。ベッドの上で全裸で尻を突き出すような姿勢で四つん這いになっている私を凝視していた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「おや、来客かね?ちょっと今見ての通り取り込んでいるんだ。混ざりたいなら別に構わないけどどうする?君も一発やってくかい?」
淫者は特に気にせず続けようとしていたし、実際両手の動きは止まらなかった。淫らに私の身体を自由自在に這い回る両手をシオンはじっと見ていた。
シオンの表情はまるで能面のように固まっていた。おそらく私も似たような表情をしていただろう。
シオンのオナバレよりも遥かに酷い状況だった。衝動的に舌を噛みちぎりたくなったよ。私の黒歴史がまた増えた瞬間だった。




