重要フラグ②隠者との出会い
いつものごとく私は王様と茶飲み話をしていた。
「おじぃちゃん、おこづかぃ・・・ほちぃの」
私は舌っ足らずなあどけない声で谷間を見せつけながら王様にダメ元で強請っていた。気分はキャバ嬢だ。なんせ私は見た目は美少女だからな。中身は糞だと酷い風評被害を流されていたが、見た目だけは美少女だった。
風評被害を流したやつは後で殺そう。ゲフンゲフン、社会的に殺そう。とりあえず全裸にして口からゴブリンの肉を食わせてやろう。当然生だ。なーに大したことはない。案外美味しいかもしれんしな。
まあ、私はゲロマズだなと思いながら食べてたけどさ。内政チートしようと思ったんだよな。ゴブリン食えたら一気に食料事情改善するしさ。毎年一定数出ている餓死者も減るなら悪い話じゃない。死者が減るに越したことはない。これでも色々考えているんだよ。
戦場で食ったのは失敗だったが、一応そういう私なりの理由はあったんだよな。
最近さ、考えたことをすぐ実行しちゃうから良い面と悪い面があるね。
例えばこの前私は金に困ってたんだよ。まあ大抵の場合金欠で困ってるんだけどさ。なんていうかさ、遊ぶ金が欲しかったんだ。たまには遊ばないとやってられなかったんだ。具体的に言うと週六回は遊びたかったんだ。出来れば週七回は遊びたかったんだ。
でだ、当然そんな生活をしていたら金はなくなる。私は部屋の中で金目の物は何かないかなーって探してたんだよ。
その時だ。その時だよ・・・魔が差した。冷静に考えたら悪かったなと反省はしているんだけどさ。
私は気づいたらシオンの下着を上下セットで7組手に持って、兵士たちのいる訓練所に向かっていたんだ。ちなみにシオンはシャワー中だった。
あとついでに自分の下着も持って行った。
・・・・・・・・・・
私は兵士の訓練所の端にシートを敷いていた。その上には売り物のシオンの下着がある。そして掘り出し物として私の下着も置いておいた。
さて、シオンの兵士からの人気は高い。なんせ見た目があれな上に落ち着いた雰囲気を持っている。常に暗い雰囲気を漂わせてはいるが、自分だけに笑顔をみせてほしい的な願望を持つ男はきっと多いだろう。
端的にシオンは高嶺の華扱いされていた。私はこの商品は売れると思ったんだよ。そう、私の商品も当然。
「・・・これ、本物ですか?」
「私を誰だと思っている?彼女との関係性を考えたら・・・入手することはいつでも可能だとお客様は思わないかね?」
「買います。いくらですか?」
「これくらいでどうだね?」
「買います」
「ありがとう素敵なお客様。ついでにこちらに掘り出し物もあるんだ。見ての通り目の前にいる素敵な美少女のものだ」
「ごめんなさい。そういうのはちょっと」
「・・・・・・あ、うん。なんで?」
こういうやり取りが7回続いた。シオンの下着は一瞬で売れたが、私の下着は一切売れなかった。見向きもされなかった。なんだろう、ウンコついてると思われたのかな?謎だわ。この世界の謎だわ。ありえなくない?そんなことを考えていた時だ。
「・・・随分とまあ、まさかこんなことをするなんて」
そこには鬼がいた。ゴゴゴゴゴゴゴゴという感じのオーラを放っているとある美人世話係がいた。今朝も見た顔だった。あのときは怒ってなかったけど。
「すまない、試しにやってみたかったんだ」
「言いたいことはそれだけですか?」
いかん、ガチギレしている。今まで何しても怒られたことないのにガチギレしている。これはあかんやつだ。逃げるか?いや、不味い。結局夜には顔を会わす。今夜も一緒に寝たいしなんとかしないと・・・。
私は夢で見たお兄さんがたまにやっていた綺麗な土下座をシオンに対してしていた。
シオンの表情は見れない。見れるのは地面だけだ。
とりあえずこれで急場を凌ごう。大丈夫、シオンは優しい。いつも優しくしてくれたシオンを私は信じている。きっと許してくれるはずだ。
「私は悲しいです・・・そうですね、同じ目に合いなさい」
私はその場でパンツとブラジャーをもぎ取られた。上下ともにだ。そしてシオンは背中に怒りのオーラを見せながら立ち去っていった。
あれ?てことは今ノーパンノーブラなの?
私は思わず生唾を飲んだ。
ノーパンノーブラ美人お世話係・・・だと?
ふう、私はとんでもないものを生み出してしまったな。シオンのスカートは長めだったが、逆にエロさを感じたよ。
前置きが長くなった。冒頭で王様に私はお小遣いをおねだりしていたね。部屋に戻ったらさ。
部屋に金塊が届いていた。慌てて返しに行った。シオンに見つかったら今は流石に不味かった。タイミングが悪すぎたんだ。
本当はダメ元でやってみたかっただけなんです。小遣いは求めてたが今晩遊べる分くらいで良かったんだ。流石に金塊は良心が痛んだ。多分これ国庫の横領だよ・・・久々にちょっとひいた。
・・・・・・・・・・
さて、国王様からは新しい話を聞いた。こんな話があるらしい。
わりと重要な話だ。
「隠者あるいは賢者と呼ばれるものがいる」
これ、ゲームだとかなり重要なイベントなんじゃないかな!!?早くそういうことは言ってよ。
・・・・・・・・・・
私とシオンはいつものごとく一緒に旅をしていた。ちゃんと弁当も持っている。今回は日帰りではない。
隠者は家から片道3日ほどの場所に住んでいた。毎週一回は戦争だからわりとシビアな日程だ。
早めに戦争を終わらせなければいけない。そう思った私は戦争でオーガを縊り殺し、魔王軍を血祭りに上げていた。
縊り殺したオーガの首を掲げ首から流れる生き血を啜りながら私はこう叫んだ。後で腹壊さないことを祈る。まあ今はノリ優先だな。
「ガッハッハ!吾を倒せるものはどこぞにおるか!!!!!どこぞにおるか!!どこぞにおるか!!」
三国志のもろパクリだった。
ダメなフラグがたった。立ったら駄目なフラグが立っていた。この台詞は言っちゃダメなやつだった。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した・・・・・・私は失敗した。
これは・・・この台詞を言った直後に味方に裏切られて死んだ魏延の台詞だった。
幸い裏切りには合わなかったが軍団長がついにプッチン切れて刀で斬りかかってきた。散々メスガキムーブして煽りまくったのも効いてたんだろう。心当たりが多すぎたよ。
すごく・・・・・・強かったです。久々に大怪我したよ。生きてるって最高だね。
「行儀が悪いです。あと、危険です」
シオンに少し怒られた。シオンのパンツ売ったときよりは優しい怒り方だった。
軍団長との死闘で出来た傷口を治療して癒やしながら、予定通り私は隠者の住む場所に移動した。
三日後には余裕で完治した。そして目の前には普通の小さい家があった。
なんだろう、高い塔とかを想像していたよ。あるいは大きな屋敷。
私達は玄関の呼び鈴を鳴らして住人の返事を待った。
「なにかな?」
ガチャッという音とともに綺麗な大人の魅力あふれる感じの女性が出てきた。今まで出会ったことのないタイプで緊張した。
その女性が隠者と言われている存在だった。
「突然押しかけてすみません、これ菓子折りです」
野蛮に育った私も一応礼儀はわきまえていた。
「お茶を淹れましょうか」
幸い歓迎してくれた。
そして、私はお茶を飲むとついついリラックスする性質なので礼儀作法が崩れないように注意しながら話を始めた。
隠者はとても綺麗な女性だった。色気があった。女としての包容力みたいなものを感じた。多分男性にすっごいモテそうだった。
そして、目元には包帯を巻いていた。
「痛いですか?」
私はそう聞いた。
「痛くないよ」
さらっと返された。単なるそれっぽいファッションの可能性を私は疑っていた。目元隠しているのにすっごく自然に動くんだよな。まるで見えてるかのように動くんだよな。
実は単なるそういう厨二病じゃないよな・・・。
私はとりあえず色々と質問することにした。
「隠者さんは、いつから此処に住んでいるんですか?」
「もう覚えていないくらい前だよ。多分千年前くらいかな」
さらっと嘘っぽい話を言った。家は明らかに新築だった。
「最近お家のリフォームとかされましたか?」
疑っていた私はそう突っ込んだ。
「いや、特にしていないよ」
ウソつけ。
このあたりで私はハズレだなと判断していた。
私は隠者への期待値を最低ラインに落としながら適当に色々と聞くことにした。ある意味いつもの国王様とのお茶会と同じだった。
「名前はなんて言うんですか?」
「色々とあるからねえ。ある程度経つと気分転換したくて変えるんだよ。名前には思い出が伴うからね」
それっぽい返事が返ってきた。
「思い出が伴うなら変えないほうが良くない?」
私はすっかりタメ口になっていた。
「幸せな思い出ならね。でも、世界は絶望に満ちているんだ。最初は幸せな思い出でもね、最後には絶望に変わってしまう。だから私は名前を変えるんだよ。名前を呼ばれると辛いことを思い出す。名前に伴う幸せな記憶もあるさ、でもね名前に伴う辛いことの方がずっと多いんだよ。なにせ、この世界は絶望に満ちているからね。神様は本当に意地悪だよね」
なんかそれっぽいことを捲し立ててきた。
でも、一理あるかなあ。この人は辛いことあったから嫌になって引きこもってるのかも。ちょっとだけ私はこの隠者に共感を抱いた。
実は借金で夜逃げして隠れてるとかじゃないよね。
隠者と私の初めての出会いはこんな感じだった。不思議と隠者の持つやる気のないダウナーな空気は馬が合いたまに通った。
遠いからたまにだけど。




