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22話 変身


 気づけばカーネルが動いていた。そして、何かを呟いていた。気づけば声は大きくなりそれはまるで叫び声のように聞こえた。



 「友よ、何故死んだのだ。何故私を置いて先に死んだのだ。哀しい。どうして私よりも先に死んでしまったのだ。私は哀しい」



 「友よ、何故泣く。傷が辛くて泣くのなら私が癒そう。この手にした呪われた力で私が友の傷を癒そう。どうか泣きやんでくれ。哀しいんだ。友が傷つきもがき苦しみながら泣く姿を見るのは辛いんだ」



 「私が守ろう。君がこれ以上傷つかなくて済むように私が守ろう。傷ついた身体と心を癒そう。頼む。泣き止んでくれ。どうか昔の君に戻って欲しい。私は君の側にいよう。君がどんなに変わろうとも私は君の為に戦おう」



 「そのためには力がいる。癒やす力だけでは足りない。破壊の力だ。この拳で全てを破壊する力とあらゆる攻撃を受け止める力がいる。ああ、力が欲しい。これ以上友が傷つかなくて済むように友を守れる力が欲しい」



 「変身モードチェンジ




 気づけばカーネルはピンク色の光を纏っていた。そして、まるで魔法少女の変身シーンのように纏っていた服がピンク色の帯状の光とともに消えていった。


 そして少しずつ少しずつ、違う衣装を纏っていった。



 いや、それは衣装ではなかった。甲冑だ。まるで前世で言うところの戦国時代に武者が纏っていたかのような甲冑を纏っていた。左手に握っていたマジカルステッキは甲冑と一体化し、刃のようになり左手と一体化していた。



 甲冑はドス黒い不吉なピンク色をしていた。嫌なことにそれは糞聖女の触手とよく似た色だったよ。



 カーネルも・・・いつか糞聖女のようになってしまうのだろうか。ふと、そんなことを考えたよ。



 もしそうなってしまったとしたら・・・俺はどうすればいいんだろうか。狂ってしまったカーネルを前に俺は果たしてどうするのだろうか・・・



 俺に・・・カーネルを殺すことはできるだろうか?



 そんな日が来ないといいな。守ろう。カーネルが苦しむことに耐えられなくなって、狂わなくて済むように・・・俺もカーネルを守ろう。そう思ったよ。






 ふと、糞聖女の方を見た。



 涙こそ流していなかったが、狂ったように嗤いながら魔軍を指揮するその姿は・・・なぜか泣いているように見えたよ。




・・・・・・・・・・




 変身したカーネルは周囲にピンク色の光を振りまいていた。すると・・・傷ついていた魔軍の傷が癒やされていた。傷ついていたオークが、オーガが、ゴブリンの傷が癒やされていた。もちろんあの糞聖女の傷も変わらず癒やされていた。



 再度攻撃を受けても、攻撃を受けた端から癒やされていた。



 それは回復し続ける死なない無敵の軍勢の完成だった。



 死んでもすぐに甦る騎士VS傷ついてもすぐに傷が癒やされる魔軍の戦いは続いていた。完全に拮抗していた。むしろ少しだけ押していたかもしれない。こんな隠し玉があったのか。



 そして、カーネルを見るとカーネルはまるで爆発寸前の火山かのように右の拳に力を溜めていた。ギチギチとギチギチとまるで破裂寸前の爆弾かのように力を溜めていた。見ていて怖かった。仮にあの拳が俺に振るわれたとしたら俺は即死するだろう。


 そんな・・・恐るべき力を見ているだけで感じたよ。



 カーネルは・・・その恐るべき力を秘めた右の拳を容赦なく屋上の底部に向けて振り抜いていた。




・・・・・・・・・・




 城は容赦なく破壊された。



 きれいに真っ二つに破壊された。入ったときに絶望を感じさせた城はカーネルの拳により容赦なく破壊された。



 勝てる。流石にこれでドライの結界も破壊されるだろう。そうすれば騎士の無限湧きもなくなるだろうし、後は回復する魔軍で取り囲んでしまえば終わりだ。そう思っていたよ。



 城の結界はギチギチと悲鳴をあげているかのように見えたよ。だが、ドライがその時動いた。木の根っこにあたる部分だろうか・・・それが触手のように素早く動き、二つに割れた城に絡みつくことで城の崩壊を無理矢理に止めた。



 カーネルの拳で真っ二つに割れた城だったが、それでも崩壊はしなかった。限界ギリギリには見えたがそれでも城と結界は依然として健在だった。




・・・・・・・・・・




 カーネルが再び右の拳に力を溜めていた。先程と同じく見ているだけで恐ろしい程の力を拳に溜めていた。流石にもう一発城に放てば終わりだろう。そう思っていた。



 だが、ドライの判断は早かった。魔軍を蹴散らすために振るわれていた触手のような枝の大部分がカーネルへの攻撃に回されていた。



 無理もない。この場で一番脅威なのはカーネルだ。カーネルのみがこの城を破壊し得る攻撃力を持っていた。ドライの攻撃は苛烈さを増していた。カーネルは枝の攻撃を捌いたり反撃したりするだけで精一杯になった。



 カーネルは両手の拳をまるでラッシュするかのように振るい続けていた。仮にそれがドライ本体に振るわれたなら倒すことが出来ただろう。


 だが、ドライはそれはさせないとばかりにカーネルが自由に動けないようにうまく捌いていた。近づこうとするカーネルを後退させる攻撃をしたり右手に力を溜めさせないように妨害したりしながらカーネルとドライの潰し合いは拮抗していた。



 騎士たちと魔軍の戦いは互角。


 ドライとカーネル+糞聖女の戦いも互角。




 不味いな。直感だが俺はそう思った。カーネルとドライのどちらが持久力はあるだろうか?カーネルは強い。恐ろしく強い。だが、あくまで人間だった。持久力は人間なんだ。



 拮抗した潰し合いになれば先にカーネルが潰れる。今のうちになんとかしなければいけない。それはわかる。わかるんだが・・・決め手がない。決め手がなかった。だが、このまま手をこまねいている訳にもいかない。


 よし、突っ込もう。ドライ本体に攻撃を仕掛けよう。幸い騎士の飛ぶ斬撃でぶった切られた腕も脚も回復済みだった。



 俺はドライに向けて疾走していた。今までで一番速かったはずだ。槍に力を込めながら疾走していた。



 そして、あっさりと俺は刃のように尖った枝の攻撃を受け四肢を失った。胴体にも枝は容赦なく突き刺さっていた。そうだな、まるで百舌鳥の早贄のようだったよ。俺はそのまま枝に拘束をされ身動きすらろくにできなくなった。



 失敗した。焦りすぎたな。チャンスを待とう。力を溜めながら再生を待ちながらドライの隙を待とう。



 四肢を失い全身を容赦なくズタボロに穿かれながらも俺はまだ勝負を捨てていなかった。諦めなければいつかは勝てると信じていたからだ。






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