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21話 破界


 俺は騎士の相手を適当に流しながらドライを注視していた。動きに不自然な所はないか、どこかを庇うような仕草はないか、弱点はどこなのか、攻撃の合間に隙はないか。


 あらゆることを考えながら動きを見ていたよ。結論は出た。



 わからない。隙はない。あるのかもしれないが少なくとも俺にわかるレベルでの隙はない。


 弱点もわからない。あの女の放つ火が効いているのはわかる。不定形の触手の生えた化け物の攻撃が効いているのもわかる。だが、致命的に効いているような様子はない。ダメージを受けた端から再生しているからだ。



 うん、わからないな。こういうときは考えていてもどうしょうもない。さて、突っ込むか。自分の身体でドライの今の攻撃力を確認しておくのも重要だろう。敵戦力と自前の戦力の比較は大切だ。




・・・・・・・・・・




 もう死ぬことに慣れていた俺はドライが一斉に攻撃したあとの僅かな隙とも言えない時間にドライ本体に向かって突っ込んでいた。


 迷いはない。俺に出来ることなど限られている。俺にできるのは槍を振るうか突いて心臓を穿くことだけだ。



 気づけば俺は吹き飛ばされていた。死角から高速で飛んできたまるで触手のような動きをする枝に俺は胴体をしこたまぶん殴られていた。


 吹き飛ばされて宙を飛んでいる瞬間だ。複数の騎士達が俺を見て力を溜めていた。



 あ、これあれだわ。そう思った瞬間俺は左手と右足を切り落とされていた。何度も喰らって死にまくった飛ぶ斬撃だった。致命傷は避けたが四肢を2つ失った。



 ふう、強いな。やっぱり無理か。ドライ本体に隙はない。なんせ攻撃できる枝は何百もある。それが各自独立して自由自在に動かせるのだ。どのタイミングで仕掛けても反撃は可能だろう。はぁ、どうするかねえ。


 しかも騎士たちは間引けない。何回殺しても同じ数湧き直す。こちらの頭のおかしい糞聖女様の左手も無限湧きだが・・・決め手にはならない。厳しいな。




 この城に初めて入る前にカーネルは言っていたな。吸血鬼は自分を強化する結界を張っていると。



 強化、強化か。言葉で言えば簡単だが実に理不尽だ。この結界が果たしている役割はいくつかある。



 まずは1つ、永遠の夜の世界を作ること。これは吸血鬼の弱点である昼の世界を切り離すことに成功している。あくまでこの城限定の話だがこの城に留まる限り、太陽の作る昼の世界という吸血鬼の恐るべき弱点を切り離せるわけだ。



 2つ、ドライ自体の戦力の強化。夜は吸血鬼にとって力の増す時間だ。しかも満月。吸血鬼は月の満ち欠けにもおそらくは影響を受けている。満月は一番力を発揮できるコンディションだろう。あの変化した木の能力はおそらくはいつでもどこでも使えるような能力ではないはずだ。おそらくはこの城の結界の中、満月の時限定の能力だろう。じゃないといくらなんでも反則すぎる。




 3つ、魂の高速循環再生システムの構築。これは騎士達の無限湧きという形で利用されている。騎士達は単なる人間だ。呪いの鎧を着た人間達だ。本来なら死ねばゆっくりと一週間ほどかけて土に溶けるはずの騎士達の遺体は一瞬で城に吸収されていた。そして同じ騎士が新しく生み出されていた。厄介だ。実に厄介だ。こちらにも魔軍はいるが、こちらは死ねば数が減る。時間が経てば経つほど不利になるだろう。




 結論だ。この結界の中ではドライを殺せない。戦力不足だ。


 この結界をどうにかしないと手詰まりになっていずれは負ける。それもそんなに遠い先の話ではない。一時間も持たないだろう。魔軍の残兵は3000程度まで減っていた。


 ある意味残ったものは精兵だが、再生するのは不定形の触手の生えた化け物だけだった。あとは普通に傷を負ったままだ。



 残り時間は少ない。その間にこの結界を壊さなければならない。結界の起点はどこだ?ドライを殺せば結界も消えるのはわかる。


 だが、それが出来ないから今悩んでいる。城を破壊すれば結界は消えるのか?もうかなり城の外壁はボロボロになっていたがもっと壊せばこの結界に悪影響は与えれるのか?どうすればいい?どうすればこの不利な状況をひっくり返せる?



 俺は戦場から少しだけ距離を取り考え続けていた。傷の回復が完了する僅かな時間の間だが考え続けていた。


 


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