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13話 浮気


 既婚者と肉体関係を持つことの是非について俺は真剣に考えていた。うん、やっぱりなしだな。



 快楽は一瞬、裁判は二十年だ。あるいはこの聖女の旦那さんが物騒な方だった場合、俺は一発やった代償に命を狙われることになるだろう。返り討ちにしてしまえば良いという考えも無くはないが・・・俺は他人の幸せな家庭を壊したいわけじゃないんだ。



 NTRに唆られる気持ちが無いかと言えば嘘になる。なんせ俺は基本的に糞だからな。だが、他人の家庭を壊してまでやりたい訳ではないんだ。



 俺にも大切にしている家族がいるからな。



 よし、やめとこう。助けたご褒美にちょっとしたキャバクラ的サービスを受けた。それで充分だ。



 「ありがとうございます。でも俺、旦那さんのことを考えると流石に心が痛みますし・・・本日はこのへんで」


 「クスクス・・・別にわたくしは構いませんのに。そうですね、夫も認めてくれてますから問題はありませんよ」



 なん・・・だ・・・と?



 俺はあまりの衝撃の発言に網タイツから視線をそらして聖女の顔を見つめていた。相変わらず綺麗な顔だった。そしてクスクスと上機嫌に上品に笑い続けていた。



 少しだけ違和感を感じた。


 クスクス笑っているときに口が動かないのだ。言葉を発している時は動いている。だけど、クスクス笑いの時は口が動かない。


 なんだろう・・・腹話術じゃないけど高貴な方はそんなふうに笑ったりするのだろうか?ありうるな、きっとそうなんだろう。なんせ聖女だし。扇子なんかで口元を隠して上品に笑うとかそんな作法もあった気がするし。



 「いやいや、でもやっぱり抵抗がありますよ。すごくお綺麗ですから残念ですけど」


 「クスクス・・・本当に夫公認なんですのに。なんせこの前も夫の目の前で致しましたし。ええ、素敵な夜でした」


 

 ・・・あ、これあかんやつだわ。変態だわ。夫婦揃って変態だわ。



 「ハハ・・・そうなんですね」


 「クスクス・・・ええ、わたくしの泊まっている部屋にちょうどその時に撮影したものがあります。良かったら一緒に見ませんか?夫も喜ぶと思うのです。何なら子供も一緒に家族揃って一緒に見ましょう。普段はそうしていますし」



 俺はドン引きしていた。


 流石に既婚者は不味いと半分萎えかけていた俺の股間のチョモランマはあっという間に雪崩を起こして平地になっていた。


 夫と・・・お子さんの前で普段はやってるのかぁ・・・うん、ちょっとあんまり関わらないほうがいい人だな。かなり高レベルの関わっちゃいけない変態だな。



 ふと視線を感じた。



 視線の先を見ると・・・そこにはドミさんがワクワクした表情でこちらを見ていた。


 「やっぱりこうなったか、もうこうなったら愉しむとしよう。今後どうなるか実に愉しみになってきた」


 目は口ほどに物を言うというが、表情からはそんな言葉を発しているように見えたよ。心配してくれているような雰囲気はゼロだった。



 ふと別の視線を感じた。


 視線の先を見るとカーネルが心配そうにこちらを見ていた。


 「なんで俺の仲間はあんなわかりやすいぼったくりバーに引っ掛かかってしまったんだろう・・・ある意味自業自得なんだけど助けてあげないと・・・でもなあ自分から引っかかりに行ったしなあ」


 みたいな複雑な表情をしていた。カーネルにはまだ俺への優しさが残されていた。そのように感じた。



 さて、どうしよう。流石にきつい。旦那さんの目の前という時点でかなりきついのに子供の前はきつい。そんなことはやるべきではない。よし、話を誤魔化そう。



 「あの城の糞ゴミ吸血鬼退治について話しませんか?あのどうしようもない良いところなんて欠片もない極悪非道極まりない糞吸血鬼を殺す方法について語りたいです」


 俺は容赦なくドライを売った。どうせ殺す相手だ。あいつにもなんとなく良いところがあるのはわかっていたが、殺す相手だ。何の問題もない。早く死んでくれ。情報だけ話して早く俺のために死んでくれ。俺と魂の契約を交わしたあの牢屋であった男もそれで納得するだろう。馴れ合おうが何しようが所詮は敵だ。



 「クスクス・・・ではそうしますか。あの吸血鬼ともわたくしは縁が結ばれてしまいましたし・・・ちゃんと縁は綺麗に清算しないといけませんしね」



 俺はこの聖女がすでに少しだけ怖くなっていた。ドライとも何かやったのだろうか?ドライはこの聖女のことをおぞましい女と言っていた。そして俺に投げ渡した時も今思えば手で触ることすら避けていたように感じる。



 何かこの聖女にはあるのだろうか?単なる淫らな性癖だけならいいのだが。



 「クスクス・・・わたくしもその件については考えておりました。街の方を広場に集めてくださりませんか?わたくしの能力は他者の強化です。城を攻めて吸血鬼を殺したい希望者を募りたいと思います。今のままでは戦力が足りません。どうかご協力くださいな。復讐したい方は・・・多いでしょうし。なんせ相手は・・・この街の方を苦しめてきた極悪非道の吸血鬼ですから。ちゃんと縁は清算しないと・・・クスクスクスクス」



 聖女はヨナやアリシアの方を見ながら語りかけていた。ドライを殺すために街の人を集めてほしいと語りかけていた。



 ヨナは少しだけ悩んでいたが・・・最終的には同意した。ヨナが頷けばアリシアも同じだった。



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