5.ベルモンド
なんだか進展のないぐだぐだした話になってしまいました。
罵って下さい。
ごめんなさい。
そして相変わらず短い。
ほんとすいません。
「それであの、ベルモンドさん? あたしは何をすればいいの? あたし特別力が強いとか、天才だったりとかしないよ?」
「クク、そんな事初めカラ期待していないヨ。カナコには、秤になってもらウ・・・ソレと、私の事はベルで構わないヨ」
あたしは今最初に居た部屋で取り調べを行っていた。
「はかり・・・えっと、それジョーク? だとしたら相当センスないよ?」
「ヒドイナァ、コレでも人を笑わせるのは得意なんだケド・・・」
「いや、面白い面白くないはどうでもいいから真面目に話してよ」
「真面目も真面目。大真面目サ・・・あー、えっと、何と言ったカナ。ソッチで言ウ審判?みたいナ感じの・・・・・・さイ、ばん?」
彼の言葉を考えると、あたしは何かの審判か裁判官みたいな事をすればいいのだろうか。
ああ、だから“秤”なのか。
「でもなんであたしなの?」
「ソレは偶々だヨ。まあ異世界人じゃナイといけナイ理由はあるけどネ。エ? 何か期待シタの? もしカするとアタシはこうナル運命ダッタ・・・みたいナ?」
大ぶりの演技で、いやんいやんと体をくねらす様子はもしかしなくても滑稽で、不憫に思え た反面、あたしの事を気遣ってるのだろうかと徒な事を考えたが、あり得ないだろう。
「何ですかそのトンデモメルヘンな思考回路。あたしそう言う運命とか信じないから」
「つれないナァ。ノッテくれてもいいじゃナイか」
どう続けろと言うのか。 そうよ、あたし達は運命と言う名の鎖に縛られた・・・とかやればよかったのだろうか。
「いやです・・・・・・あ、そう言えば、ベルはあたしの事守るって言ったけどどの位」
「強いのカって?」
「うん。正直強そうに見えないから。どこからどう見ても優男風にしか見えないし」
そうなのだ。彼は強そうに見えない。
いや、高い所から飛び降りても平気な所を見ると強いのかも知れないが。
そこまで強そうに見えないのである。
マジシャンが喧嘩をして不良をボコボコにする――
そんな情景あたしには想像できない。
「ソレもそうだネ」
「え? 否定して欲しい所なんですけど・・・まさか本当に弱いの? それなのにあんな大見得切ったわけですか? 呆れてものも言えませんね」
「ククク、十分モノ申してくれてルじゃないカ」
「比喩ですよ。そんな事も分からないだなんて、益々行く末が心配ですね」
そう皮肉ると彼は獰猛な笑みを浮かべ、あたしの両肩を掴んで首元に息が掛かる所まで近づけ、小さく呟いた。
「逃げて御覧」
ぞっとした。
首元に掛かる息も、艶のある声も、びくともしない彼の力にも。
「あ、あたしに勝っても仕方ありません」
「オヤ?何時もヨリ弱気だネェ、ククク」
「け、貶してほしいんですか? 変態ですね」
「そうだネェ、カナコにならいいカナ、クク」
まずい、完全にこいつのペースだ。だがどうしてこういう状況になるのかが分からない。
何だこいつは。盛りの付いた雄犬じゃあるまいし。
「っ・・・・・・い、痛いです」
肩に掛かる力が徐々に強まり、それとともに不安が増してゆく。何だこれは。
ついさっきあたしを守ると言ったのは嘘だったのか。
目に力が入り、ぎり、と歯を食いしばってこいつを睨む。
「・・・やめて下さい」
「・・・クク」
しばしの沈黙の後、不意に響くノックの音。
ありがとう神様。何か急に信仰心が湧きそうです。
急に緩まる力。その隙にあたしは部屋の一番端まで後退る。
「ちぇ」
ちぇ、じゃない。
冗談じゃない。本当に危なかった。まだ顔を見ぬ御仁よ、ありがとう。
そう客の来訪に一息吐きながら、そういえばと思いだす。
「結局強いの?」
「そこそこ、カナ」
そこそこ。十分ではないが一応のレベルにあるさま。そうか。そこそこか。
「なんか釈然としない。ていうかなんであたし襲われたの?」
「クク、カナコが魅力的だからサ」
「それはどうも。・・・ずっとノックしてる外の人はいいんですか?」
なんと律儀なのだろう。別に鍵はかかっていないのにもかかわらずドアを開けない紳士さ。
だが、やはり鬱陶しい。
「開けますよ?」
「ウン。どうゾ」
にやにやと笑う彼になんだかあまり抵抗がなくなってきた気がする。
こんな仕打ちを受けたのに、だ。しかもなんだか皮肉れない。
これから先が心配になる反面、今まで感じた事のない妙な気分になっている自分に気付き、寒気がした。これはまさかの恋と言うものなのだろうか。
「いや、ありえないな」
そう。あり得るわけ無いのだ。気が動転しているだけだ。
なんだかもやもやとしたものを感じながら、あたしはドアノブに手を掛けた。