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4.決意

難産でした。

今回はプロローグ終わりって感じです。

また短いですね。もっと長く書けるよう頑張ります。

こんかいはガチシリアスです。

「・・・・・・はっ! ・・・な、なんて事するんですか!?」

「情けないナァ。でもまぁイイモノ見れたしネ、クク」


 覚醒したばかりの意識で思い出したのは、さっきの紐無しバンジー。

 ありえない。気を失う前に見た景色は、学校の屋上からの景色なんて目じゃなかった。


「可愛かったナァ、私の腕の中でスヤスヤと眠るアナタは。ソンナに私の腕の中は気持ちがヨカッタのかナァ? クク」

「なに言ってるんですか気持ち悪い。気を失ってたんです。貴方のせいですよ? あんな行動普通じゃない」

「今さら私がフツウじゃナイと気づいたのカイ?」

「え? 自覚あったんですか? 意外です。無自覚だと思っていました」


 くつくつと楽しそうに喉を鳴らし肩を揺らすのを見ると、普通に格好良いのに。


「もったいないな」

「ンン? 何か言ったカイ?」

「いえ、何も」

「ソウ・・・ククク、まあイイヤ・・・で、何時まで私はこうしていればいいのカナ? まあ私としてはずっとこのままでも構わないケドネェ、クク」


 こいつに言われて、はて、と思わず首を傾げた。そしてすぐに気付く。

 所謂お姫様抱っこ。おそらくこの世の女性が小さい頃憧れたのではないかというシチュエーションにあたしはジャストミートしていた。


 なぜ気付かなかったのだろう。相当な赤面ものである。

まあ顔には絶対に出さないが。


「貴方が離せばいいじゃないですか。それともあたしみたいな小さめな少女が好みとか。うわあ、どん引きですね。やっぱりあたしが自分で降ります」


 そういって、体を捩ってこいつの手から逃れ降りる。その時にこいつを軽くけっとくのも忘れずに。



 だが私は失念していた。こいつに連れて来られたところがどんな場所なのかを。


 歩き出そうとしてナニカにつまずく。

「いてっ・・・何? ・・・・・・ひぁ」


 見なければ良かった。



 地面には赤い水たまりが出来ており、そこには血みどろの、おそらく死体が横たわっていた。

 それに躓いたのだ、あたしの体まで血みどろである。

 

 とっさに彼の方を向く。あいつは嗤っていた。いつものように、にたにたにたにた。


「な、に笑って」

「せっかク私が濡れナイように抱いていてあげたのにネ。今のアナタのカオ・最高だヨォ?クカカカカカカ! アーア、そんなに服を汚してしまったら、ママに怒られちゃうヨ? ククク」


 何だ。何なんだその顔は。何が言いたい。

 そんなにあたしが哀れか。そんなにあたしの不幸が可笑しいか。


「・・・んな」


 こいつが現れてからおよそ一か月間、碌な事が無かった。


 せっかくあたしは平穏な日々を過ごしていたのに。

 学校ではそれなりに友達は居たし、勉強だってそこそこ出来る方だった。

 運動に至っては五十メートル走校内二位の実力である。文句なしだ。

 それに容姿だって、別にそこまで悪くは無いと自分では思ってるし、努力もした。

 悪い事なんて一度もしたことは無い。親孝行もしてる。


 なのに。


 それなのに、なんであたしだけ。


 何かがぷつんと、あたしの中で切れた気がした。


「ふざけんなっ!」


 どうしてあたしだけこんな目に合わないといけないのか。

 あたしよりも悪い奴なんていっぱいいるじゃないか。こういう目に合って当然の奴とか、沢山いるじゃないか。


「なんであたしばっかなの!?」

「・・・・・・」

「黙ってないで何とか言ってよ! どうしてあたしなの!?」


 溢れて来た涙を袖で拭く、顔に血が付くが関係ない。


 力いっぱいこいつの服を掴み、力いっぱいに叫ぶ。


「帰してっ! あたしを帰してよっ!」

「それはできないネ」

「何でっ!? もういいじゃない! 十分楽しんだでしょ!? いっつもいっつも私の事を笑って・・・・・・もうやなのぉ・・・もういやぁ・・・」



 その場にへたれ込んで、喘ぎ泣く。涙が止まらない。


 もう限界なのだ。あたしはそんなに強くない。強がってるだけのただの人なのだ。

 一か月も嫌な思いをして、突然変な所に連れて来られて、血まみれになって、耐えられる訳が無い。




 不意に、あたしの手じゃない手に涙を拭われた。


「済まない。僕だって、君の様な別の世界の子供を連れて来たくは無かった。いい訳はしない、いや出来ないな。君は賢いから。」


 一瞬誰だか分らなかった。顔をあげて、声の主を見る。


 あいつだ。いつもにやにや笑っていた嫌な奴が、しゃがみ込んであたしの涙を拭っているのだ。


「それが、本性、です、か?」

「フフ、さあね・・・・・・本当は僕たち大人が解決しないといけない事なんだけどね。まして異世界人に頼るなんて、ダメな大人だよ」


 そう語る彼の瞳は、憂いを帯びていて、年老いて見えた。


「この世界を救って欲しい」

「世界、ですか。冗談じゃ」

「無い、残念ながらね」

「随分一方的ですね。」

「馬鹿な事を言っているのは百も承知さ」

「じゃあ帰して下さい」

「できない、今すぐには」


 ずいぶんな話だ。すぐには帰せないだの、世界を救えだの。

 しかも、彼の顔は真剣だから困ったものだ。なんだこのギャップは。アニメのジャイ●ンと映画のジャ●アンくらいのギャップじゃあないか。


「いつ帰してもらえますか」

「・・・・・・今この世界は三つの国が衝突している。元は一つだったのだが、所謂意見の違いが内戦を起こし、大きな戦争へと変わろうとしている」

「つまり、あたしにそれを止めろと」

「・・・・・・」

「ふざけんなって感じですね」

「すまない」

 けど。やらないと帰れないのだろう。


「あたし簡単に死んじゃいますよ?それでも・・・」



 彼はあたしを立ち上げて


「僕が君を守るから、君は世界を救ってくれないか。この通りだ」


 王に平伏するようにあたしに頭を下げた。

 そんな彼は、痛々しくて、救いたいと思った。


「ずるいですよ、貴方」

「よく言われるよ」


 やるしかない。自分で言うのもなんだがあたしは割とさばさばしている。

 今はこの性格が有りがたかった。


「立って下さい・・・・・・あたしは何をすれば良いんですか?」


「・・・・・・ク」

「はい?」


「クカカカカ!ソレでこそアナタだヨ。イイヨ。此処に誓おウ。私の名はベルモンド・アルフォート。アナタの身を敵から守り、アナタの敵を踏み砕く、騎士となるヨ、ククク」


 満足げに笑う彼に今までの様な邪さは無く、あたしに否が応でも決意をさせるものだった。


「あたしは坂本 叶子。あ、こっちじゃあカナコ・サカモトかな・・・よろしく」


 そう言って、あたしは手を伸ばした。

 

 あたしの手を握り返す彼に初めて好意を感じたのだった。


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