2.拉致
かなり短いです。
ごめんなさい。
連投なので、あせった結果がこれです。
笑ってください。
最近足が筋肉質になってきた気がする。
原因は“奴”だ。謎のイケメン不審者。
毎週水曜と土曜は塾の日である。それと共に不審者が来る日でもある。
あの最初の遭遇から昨日までおよそ一か月間、変わらず奴はきっちり十時半の帰りの時間に合わせてあたしに近寄って来るのだ。
でもまああたしも黙ったままじゃない。それに合わせてあたしは何度も何度も帰り道を変えて帰宅する。
しかし侮る事なかれ。
あたしに発信機でも着けてるんじゃないかと思うぐらいの遭遇率なのだ。実に百パーセントである。一体何者なのだろうか奴は。
何時も言う事は一方通行で、“一緒にオイデヨ”とか“イイモノあげるヨ”とかあたしの言う事をまるで聞いて無いようにべらべらと話す様子は、鬱陶しさを越えて滑稽に思えてくる。まあ三十回も見ると飽きるものだが。
ただ、最近悩みがある。
よくもまあ飽きないものだと感心する一方、そろそろ諦めろという苛立ちが積み重なる日々はあたしにストレスを与え、あたしの自慢のサラサラストレートヘアーのキューティクルにダメージを与えつつあるのだ。
あたしの様な乙女には重大な問題だ。
そんな迷惑な日々がいつまで続くのだろうかと、なんど天に祈った事か。
神は天にいまし、全て世は事もなしと言った赤毛の少女にあたしの現状を是非とも見てもらいたいものである。
まああたしは彼女ほど苦労していないのだが。
「それで、貴方だれですか?」
あたしは今新たなる挑戦者と対峙していた。第二の不審者である。
「某はカルトフス・ツー・ティアローニア=アルトリウスである」
「彼は貴族ナンだヨ? モット敬意を払わないとダメじゃあないカ。まあソンナ不遜なトコ
ロが可愛いのだけれどもネェ、クククク」
相変わらずにやにやと厭らしい笑みを浮かべるこいつは、楽しそうに喉を鳴らしながらその貴族とやらと肩を組んでいる。
そっくりその言葉を返してやろう。お前が敬意を払え。
心の中で悪態をつきながら、貴族とやらを見る。
ピッチリとしたオールバックの白髪はポマードでがっちりと固められている。
「そうですか。それでストーカーさんはカル・・・貴族さんと一緒に懲りもせず飽きもせず無駄な事にまたあたしの所に来たわけですね? 援軍ってやつですか? あたし地位とかに屈しないんで」
燃えるように紅いルビーの如き瞳は窪んでおり、目じりの皺が彼の年齢を物語る。
「ストーカーさんって私のコトかい? ・・・アレ? アナタ共産主義じゃナカッタ?」
白髪の中に僅かに残る青色の髪が、元が青い髪だった証。
「は? 信じたんですか? 今の時代ブルジョアなんて流行りませんよ。一々人の言う事信じるなんて愚か者ですよ。あたし愚かな人嫌いです。という事でさようなら」
新調したばかりなのか、ピカピカのスーツに身を包んだ彼の口元には、髭。
そう、カイゼル髭。紳士の証。
「待たれよ。某はそなたに用が有るのだ。故に其処からそなたが動く事を某は良しとせん」
なんと回りくどい口調なのだろうか。しかも、某、某、と何度も自称する様子はまるでブリっ子が自分の事を名前で呼ぶように見える。いい歳のおじ様が、だ。
想像するだけで寒気がする。まあ目の前に現物が居るのだが。
「はあ、じゃあ如何しろと」
「某と来い。故にそなたはベルモンドの言葉に、そして某の言葉に従わねばならぬ」
ベルモンド。恐らくストーカーさんの名前であろう。
と言うかなんだ。こいつも結局ストーカーさんと同類では無いか。
いつもなら聞く耳を持たない。だけど今日はそろそろ疲れていたし、ここまであたしを求める理由は何なのかが気になった。
そして、ついうっかり、言ってしまったのだ。
「・・・・・・まあ、ちょっとなら、いいですよ」
それがあたしの運の尽き。
足もとから立ち上るドロドロとした靄はあたしの意識を奪おうとしていて、意識を失う直前に見えたのは、二人の満面の笑みだった。
「ち、くしょう」
靄が晴れた後、叶子は消えていた。
「イヤァ、思ったヨリ手こずっちゃったネ」
「某は最初に言ったはずだ、某がやろうと。しかしベルモンドが」
「いいじゃナイ。カノジョ連れて行けたんだしサァ」
「うぅむ」
「ホラホラ、私たちも帰ろうヨ」
カラカラと男が笑った後、そこには誰も居なくなっていた。




