第0話 平常な1日
「これでラストっと」
と呟きながらアサルトライフルのトリガーを引く。
アサルトライフルから放たれた弾丸はこちらに向かって来たゴブリンに吸い込まれていく。
弾をくらったゴブリンは血を吐きながら崩れ落ちる。
「よし、これでおしまい。後は、どんな収穫があるかだけどゴブリン位だと期待薄なんだよな。」
一人言を言いながら先ほど倒したゴブリンが身に付けている物を回収していく。
ゲームの世界とは違い、資金を得るには魔物が身に着けている物を回収して換金する必要がある。
「目ぼしいものは棍棒だけか、弾を使ったからトータルで赤字ですか…。」
トレジャーハンティングを始めた頃だったなら棍棒だけでもワクワクしていたが1年も続けていると損得勘定の方が強くなってくる。
とはいえこの棍棒も換金アイテムなのでしっかりと回収する。
「別のゴブリンを倒したときは魔法石をゲットできたけど、ラッキーは続くもんじゃないよね。」
異世界大陸だけあって、魔法の概念がある。
魔法石は何らかの魔法が込められた石であり、人が魔法を使う時には欠かせない。
しかし、魔法が使えるのは異世界大陸の中だけで、大陸から一歩でも外に出ると魔法は使えなくなってしまう。
この棍棒も異世界大陸が突然現れた3年前は珍重されて高値が付いていたのだが、数が出回っている今では、子供のお小遣い程度の価値まで下がっている。
それでも数が集まればそれなりの金額になるので見逃しはしない。
「アイテムも回収し終わったし、宿営地まで帰りますか。」
ポケットから帰還魔法が込められた魔法石を出し、念じた。
一瞬で景色が草原から街中に切り替わる。
着いた先は異世界大陸にもうけられた拠点のひとつである。
3年前に突如現れた異世界大陸は国連の管理下に置かれ、探索が続けられているが、探索が完了したのは沿岸部のみ。
探索が進まないのは、大陸の上空は不可視状態になっており、ドローン、航空機や衛星から見ることが出来ないからである。
また、大陸が出現したものの、何かが攻めてくることもなく、平穏な状態が保たれていることも探索に駆り出すモチベーションが低いというのもある。
「さて、まずは収穫物を換金しに行きますか。」
と国連が運営している換金所へ向かう。
換金所内は様々な国籍の冒険者でごった返している。
空いている換金窓口にならび声をかける。
「ゴブリンの棍棒5本と魔法石(小)を円で換金お願いします。」
「しめて5万3000円になります、ありがとうございました。」
換金を行い、常宿に戻る。
「今日もそこそこの稼ぎで良かったー、小サイズとは言え魔法石もゲットできたし。明日もゲットできると良いなー」