続く、夢
今日も僕は夢の中に逃げてしまった。
目を閉じれば、見たくない現実はどこにも存在していない。
目を閉じれば、見たくない現実を見なくて済む。
夢の中で夢の中と気が付かずに青春を謳歌している。
夢の中で夢の中と気が付かずに恋愛を楽しんでいる。
夢の中で夢の中と気が付かずに仲間を信頼している。
夢の中で夢の中と気が付かずに裕福を享楽している。
夢の中の居心地が良すぎるのだ。
何度も何度も、夢の中に逃げ込んでしまう。
夢の中で失敗しても、それは起きれば揮発してしまう、ただの記憶だ。
夢の中で挫折しても、それは起きれば揮発してしまう、ただの記憶だ。
夢の中で絶命しても、それは起きれば揮発してしまう、ただの記憶だ。
夢の中で悲観しても、それは起きれば揮発してしまう、ただの記憶だ。
夢の中の居心地が悪くても、目を開けてしまえば抜け出すことができるのだ。
何度も何度も、夢の中から抜け出した。
夢の中、実に素晴らしい…場所。
夢の中、実に都合のいい…場所。
いい夢ならば、何度でも見たいと切望できる。
悪い夢ならば、夢でよかったと安堵できる。
夢を見ることができるから、僕は生きていけるのだ。
夢を見て喜べる瞬間があるから、僕は生きているのだ。
夢を見て、夢でよかったと安堵できる瞬間があるから、僕は生きているのだ
夢を見ることができなくなったら、僕は間違いなく…生きて、いけない。
夢を見ることができなければ…僕は間違いなく、生きていきたいと思えない。
「永遠に夢を見続けるいい方法があるんです。」
僕は夢の中で、とてもいい申し出を聞いた。
「夢を見続けることができる代わりに、現実に戻れなくなりますが、それでもよろしいですか?」
願ってもない話だ。
僕には現実など必要ない。
ああ、これはいい夢だ。
こんなにも僕は満足している。
こんなにも僕は堪能している。
僕は、夢の中の世界を手に入れた。
夢の中は快適だ。
夢の中は快適だ。
夢の中は快適だ。
夢の中は、快適だ。
夢の中は、快適だ。
夢の中は、快適だ。
夢の中には、僕しかいない。
夢の中は、夢の中でしかない。
夢の中は、僕の中にしか広がっていない。
夢の中には、僕の願う展開を作る、僕の創造物しかいない。
夢の中で、僕は満たされていた。
自分の求める人物だらけの世界で満たされていた。
満たされていたのは、自分の欲求があったから。
僕は孤独だった。
他人だらけの世界で孤独だった。
他人は僕の孤独をことごとくスルーした。
僕の孤独を受け止めてくれる存在を、僕は求めた。
夢の中で、僕は、僕の孤独を受け止めてくれる存在に甘えた。
夢の中で、僕は、僕の孤独を受け止めてくれる存在に依存した。
僕が生み出した、僕に都合のいい誰かは、僕の中に生まれた人物。
僕が生み出した、僕に都合のいい誰かは、僕が生み出した人物。
僕が生み出した、僕に都合のいい誰かは、僕が生み出さなければ生まれなかった、僕の産物。
夢の中には、僕しかいない。
僕は、夢の中でも、孤独なのではないかと気が付いた。
夢の中には僕しかいないのだから、結局僕は孤独なのだと気が付いた。
僕の生み出した人物が、僕の願う言葉をくれる。
やめてくれ。
僕の生み出した人物が、僕の願う言葉しか言ってくれない。
やめてくれ。
僕が願わない言葉を聞きたい。
僕の生み出した人物が、僕が願わない言葉を、口にする。
やめてくれ。
僕が願わない言葉を、僕の願い通りに口にするのを、聞きたくない。
ここには、都合のいいことしか言わない、僕の産物しかいない。
誰にも認められない世界が愛おしい。
誰にも認められない世界に戻りたい。
ああ、戻ればいい、ここは夢の中なのだから。
見たくない夢を見た僕は、びっしょりとぬれた体の冷たさに驚いて目を開けた。
「ああ、よかった。」
夢だった。
「そうですね、いい夢でしょう、あなたの夢ですから。」
見たくない夢を見た僕は、びっしょりとぬれた体を、抱きしめた。
夢だった。
「そうですね、いい夢でしょう、あなたの夢ですから。」
夢だった。
「そうですね、いい夢でしょう、あなたの夢ですから。」
夢だった。
「そうですね、いい夢でしょう、あなたの夢ですから。」
夢だった。
夢だ、これは。
夢が、続いている。
夢は、いつまで続くんだ。
夢を、見ることをやめなければ。
夢から覚めることができない。
夢から覚めることができない。
夢から覚めることができないから、抜け出すことができない。
目を開けることができない。
目を開けることができない。
間を開けることができないから、現実を知ることができない。
目を開けることができないから、現実の僕が今どうなっているのか知ることができない。
僕にはもう、現実を確認することができない。
僕にはもう、現実に戻るすべがない。
僕にはもう、現実がない。
僕にあるのは、夢だけだ。
僕にあるのは、都合のいい、夢だけだ。
僕にあるのは、抜け出すことのできない、不愉快な夢だけだ。
僕は今から、都合のいい夢を見ればいい。
けれど、僕は、都合のいい夢など…結局ただの孤独の確認に過ぎないと知っている。
僕は今から、抜け出せない夢を見続けるだけなのだと気が付いた。
僕は、僕の見ている夢には終わりがないという事を、いまさら知った。
僕はもう、起きることができないと、いまさら、知った。
僕は、今さら。
夢なんて見るもんじゃないと、思った。