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売り子と保安官と泉

「売り子くんと泉に?」

 作業をしていた店主が振り返る。

「それはまた、なぜです」

「案内役が欲しくてな」

「わざわざうちの売り子を選ぶ意味があるんですか?」

「な、いや、別にその……声がかけやすかったからとか、頼れる民間人があいつしかいないとかそういうわけではないぞ」

「あらあら……春ですか」

「く、あの売り子にしてこの店主ありだな、つまらぬことを言うのはやめるのだ」

「ははは。まあ、いいでしょう。ただし」

「ただし?」

「ちゃんと返してくださいね」

「当然だとも!」



「てんちょーと何話してたんですか?」

「いや、別に」

「別にってことはないでしょー」

「お前を案内役として借りる許可を取っていただけだ、それ以外は特に変わったことは話していない」

「へえ?」

「無駄口叩いてないで乗れ」

「え、何に」

「馬にだ」

「それ一人乗りじゃないんですか?」

「二人でも乗れるようになっている」

「えっそれって」

「勘違いするなよ。このご時世、二人で乗ることができれば何かと便利かと思いそのように作っただけだ」

「ふ……はいはい」

 馬にまたがった保安官の後ろに売り子が乗る。

「出発」



 泉のほとり、少し離れた場所に馬を停め、保安官と売り子は歩く。

「で、保安官さんはなんで泉に来ようと思ったんです?」

「ああ。そもそも泉とは何かということを我々はよく知らないと思ってな。民間人の安全を守るためにはその辺りのこともはっきりさせておかねばならんと思ったのだ」

「おお……真面目……」

「馬鹿にしてるのかお前」

「してませんよ、感心してたんです」

「馬鹿にしてるな?」

「言ったでしょ、真面目なあんたが好きだって」

「は……はあ?」

「で、どうやって調査するんです?」

「お、おお。それはだな。とりあえず覗き込んでみて、その感覚を記録してみる」

「自分の身体で実験するんですかー?」

「それ以外にあるか?」

「俺を使えばいいのに」

「使えるかそんなもの。民間人を危険に晒すわけにはいかん」

「やだイケメン」

「ふざけるなよ……」

「いやーやっぱ真面目ですねー。かっこいいとこあるじゃないですか」

「かっこいいも悪いもない、義務だからな」

「使命ってやつ? まあいいですけどね」

 あ、そういえば、と言って売り子がポケットに手を入れる。

「これ、返すの忘れてたんですよね」

「煙草の箱ではないか……なぜお前が持っている」

「保安官さんの健康に悪いと思って預かってたんですよ」

「道理で、ないと思っていた」

「本当に?」

「正直なところなくても別に困りはしない、お前が持っていろ」

「いいんですか?」

「楽しめない奴が持っていても煙草が可哀想だろうからな」

「ほー。じゃ、ありがたくいただきますよ」

 売り子は箱をポケットにしまった。

「さ、調査に行くぞ」

「はーい」

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