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漂流できない  作者: まがり 小夜
19/22

11 - 1

 気まぐれからだろうか、それともきちんとした意思があってだろうか、今日は何を借りるでも、何を返すわけでもなくツタヤに行くことにする。日曜の朝はゆっくりしていても誰にも文句を言われない。いっそ夕方まで布団の上に寝そべっていても良いのだが、明日起床しなければいけない時間を想定すると、睡眠のリズムの関係で少しは調整しなければと思い、頑張って午前中に起きることにしている。それに、今日ツタヤに行くにはそれ相応の理由はあるのだ。日曜のお昼の時間帯には、大体、あの人がいる。

 本当に気まぐれで、それ以外に何の目的もないので好きな服装をして外出することにする。前みたいに美容院に向かうときは、仕事着の自分に合うように切ってほしかったのでそれを着たし、友人等と遊びに行く際はその人と似た系統の服を選ぶことが多い。今日は好きな格好。ネット通販で好きなブランドがワンピース二着で一万八百円のセールをしていたので、それを狙って買ったものだ。本当は別の、売り切れてしまった色のものが欲しかったのだけど、この色も意外と自分に似合っている。六割引きでこれを手に入れることができたのは非常に満足だ。

 去年の誕生日、年に一度ほど会う友人から貰った小さな水色の石のネックレスを首に着けて、会社で使っているエメラルドのウォレットポーチを肩にかけて家を出た。


 まるでスニーキングするように、棚の一列一列を見て回りながら見逃さないようにじっくり探す。気分はストーカーか、それとも犯人を追う主人公か。数分ほどそうしていると、連ドラの棚で高い場所へひょいひょいとパッケージを挿している三好さんの姿が見つかる。

「三好さん」

 声をかけると、「ああ」と言ってこちらを向く。

 バサバサバサッ。

「あーあー、もう」

「すみません、ありがとうございます」

 集中心を欠くとすぐ手元に積んだパッケージを崩してしまうのだから、そんな時ぐらいきちんと気を付けていればいいのに。分かっていて声をかけた私も悪いか。ぷっ、と笑うとしゃがみ込んでパッケージを拾い三好さんに渡す。三好さんは申し訳なさそうに笑みを浮かべる。

「大丈夫ですか、いつも。そんなので」

 しまった、少し見下したように聴こえてしまっただろうか。つい呆れた声が漏れてしまった。

「大丈夫ですよ、多分。僕、平衡感覚がないんです。だから、いつもこんなんで」

 嫌な顔ひとつせずに恥ずかしそうに笑ってすっくと立ち上がる。左の小脇に抱えられたパッケージは十五本ほどだろうか。こうやって静止している状態を見てみればさしてバランスが取りにくいことはなさそうなのだが。本当に平衡感覚が良くないのだろう。

「あ、そうそう。今日は三好さんに用事があって来たんですよ」

 棚に挿していく指先を眺めながら付いていく。前クールのドラマに……これは、一昨年の冬流行ったやつか。まだ人気が衰えないのか、一巻と四巻は二本ずつ挿されていく。その指先が止まり、三好さんはこちらへ首を回す。

「え、僕ですか」

「はい。私も……言いたいことがあって。いや、言って『おきたい』ことがあるんです」

 これで何が本題なのか、三好さんはわかってくれたようで、ふたつ返事で時間を合わせることが決まり、十四時に駅前で集合する約束をこぎつけた。

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