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傷付ける水  作者: 奈月遥
5/5

硝子水

KP;(あ、そういや、さっき『硝子水』って何回か電話口で言ってたな)(悪い笑みを浮かべるキーパー)

少年(井上賢治);比喩、だと思ってたんだけどなあ……言葉って恐ろしいもんだ、本当に。(なんだなんだ)

KP;そう呟いて、顔を上げた少年の愛鏡に、一人の少女が映る。

少年(井上賢治);………!(思わず後退る)

KP;硝子を嵌めたドールアイのように煌めく黒い瞳、輝くように眩い漆黒の艶やかな髪、透けるドレスにはラメがちらめられ、光の加減で白にも透ける空色にも見える。

少年(井上賢治);きみ、は。

KP;彼女を、少年、キミは知っている。

少年(井上賢治);……硝子水。

KP;だって、彼女は、あの人が最初に教えてくれた、未言、なのだから。

少年(井上賢治);君が……硝子水。

KP;すっと、目の前の少女の目が細められる。

KP;少年、〈目星〉の判定を。

少年(井上賢治);(……了解です)1D100=90≦85 失敗! んんんんんんんんんんんんん。

KP;なんで、失敗、するの(大笑い)

少年(井上賢治);んんんんんんんん?! なぜここで!! 85パーセント!!

KP;彼女が、キミの頬に手を触れる、と。そこが硝子水みたいに泡立って、痛みが、走る。ここかな。正気度判定を。

少年(井上賢治);はーい。1D100=54≦76 成功!(さっきのはなんだったんだ)

KP;うむうむ。では、正気度を1減少させて。

少年(井上賢治);ん……。(ぴりっとした)了解。76→75。

KP;少年は、気付いてしまった。言葉とは、無限であるのだと知っているのだから気付いてしまった。目の前のものは、人によって幾重にも語られ、在り方を変える、言葉そのもの。それは……常識の外にある存在。或いは……神格と呼べるもの。

少年(井上賢治);う……あ……。

KP;硝子水「キミは、ワタシを知ってる」

少年(井上賢治);僕は、君を知っている。

KP;硝子水が、少年の喉を、小さく冷たい指で撫でる。

KP;硝子水「ワタシも、キミを知っている」

少年(井上賢治);君も、僕を知っている。(ちょっと微笑む)

KP;その細く白い指が、食道を辿るように下へ降りて行き。

少年(井上賢治);(若干身震い)ん……。

KP;硝子水「何度も飲み込まれて、キミの中へ入って、血となって巡った」

少年(井上賢治);ん……あ……。

KP;指が、お腹で止まり、彼女は掌をそっと押し付ける。まるで、恋した人に甘えるみたいに。

少年(井上賢治);(ちなみに触れます?)

KP;硝子水「お願い……。独りは――」ん。触れるよ。触ったとこから切り傷になるけど。

少年(井上賢治);了解です、じゃあ。

KP;直感的に分かる。だって、少年は彼女を知っているから。

少年(井上賢治);(髪にそっと触れる。手が切り裂かれるが別に気にしない)

KP;硝子水の目が、驚いたようにまるまると大きくなって、跳ねた光が少年の目を射す。

少年(井上賢治);うん。……大丈夫。僕は君を独りにはしないさ

KP;一瞬、戸惑った顔。そして、秋晴れの光を跳ね返したような爽やかな、眩しい笑顔。少年の心から、恐怖と狂気の絡まりが、しゅわりと泡のように弾けて消える。

少年(井上賢治);ずっとそこに居てくれたんだろ? 僕が少年だったころから、あの人やきょーちゃんが居たころから。……僕の大事な一粒だよ、硝子水。大丈夫、大丈夫。

KP;硝子水は、少年のそばから一度離れて、鞄のペットボトルを手に取り。それは美しい硝子細工の瓶と変わって、硝子水は、それを大切に、手で包み、頬を寄せる。

少年(井上賢治);わあ……。

KP;さぁ、少年よ、キミは何をすべきか。どちらを選ぶか。〈適切なる判定〉を宣言せよ。(組み合わせです)(間違っても、こちらから正しい判定に妖します)

少年(井上賢治);〈他言語:(未言)〉と〈写真術〉で。いかがでしょう

KP;おめでとう、硝子水。あなたは、少年に受け入れられた。判定を。(まぁ、これだけポーズ決めてる女の子いて写真撮らなかったら突っ込むわ)←台無し

少年(井上賢治);他言語(未言)88、写真術80です、いきます。

KP;あ、てか、組み合わせ判定のやり方わかる?

少年(井上賢治);あーと、一気に振るやり方とかあるんです? 無ければ一個ずつふる予定でしたが。

KP;パーセントの低い方を基準に判定するだけよ。一回で判定する

少年(井上賢治);なるほど、では80で。

KP;(ちゃんとルールブックに載ってるやりかたなんだぜ)

少年(井上賢治);(そいつは失敬)1D100=74≦80 成功!

KP;(ちなみに、よくある使いからは〈マーシャルアーツ〉+〈こぶし〉とか)

少年(井上賢治);あbっぶなっ。

KP;ぎりっぎり(笑)あー、と、持ってるカメラはデジカメ?

少年(井上賢治);一眼レフですー、よくわかってないですがそんな感じ。(カメラ詳しくない)

KP;一眼レフもフィルムとデジタル両方あるよ。レンズの種別だからな(厳密には違うが)

少年(井上賢治);(完全にかっこいいだけで選んだので)ではデジタルで。

KP;ういうい。パシャリ。シャッターが切られる。撮影した画面には、可愛らしい少女が一人。不思議なのは、その姿が、景色を反射して映す自販機の硝子に、映っていないこと。

少年(井上賢治);………。

KP;少年は、所持品に〈未言ストック:硝子水(写真)〉を加えてください。

少年(井上賢治);了解。

KP;撮影によって、硝子水の未言巫女は体の緊張を溶かし、少年の頬によく冷えた手の瓶を押し付ける。

少年(井上賢治);ん……ふは、冷たいよ

KP;硝子水「ふふっ。だいすき」眩い笑顔で、囁くように告げて、彼女は炭酸の泡のように弾けて消えた。

否。

姿を消して、少年に憑き纏う神秘となった。

少年(井上賢治);ほあっ……(顔が赤くなる)……うん、ありがとう。これからも、よろしくね。硝子水。

KP;(というところで、このセッションは閉めようと思うが、どうだろうか)

少年(井上賢治);(良いと思います)


*注釈は後日更新いたします*

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