安室奈美恵様ご引退記念といたしましての『裸の女王様』
1
心の裸って、観たことある?
彼女のなら、こうかな?
ほんといえば、
あたしなんかには、わからないよ。
ただの、あたしの妄想だよ、
あるいはあたしの、悲しみだよ。
最後の舞台だというよ。
飛行機もとれないらしい。
ホテルもとれないらしい。
本会場の外でいいから、
沖縄まで飛んでいきたかった?
あたし、そんなでも、ないよ。
アムラーたちの、集いだよ。
これ、書いたときは知らなかった。
安室奈美恵さん、
アルコールは、一滴も飲まないんだって。
彼女の引退を聞いて書いたから、
ほぼ、1年ほど前に書いたうた。
きゃんゆー?
時代を牽引したとか、
平成最後の年だから。とか。
きゃんゆー?
ちょっと、聞いてみて。
2
『水の中』(歌姫さんに寄せて)
ある歌姫さんが引退する。
特に思い入れのある人ではないが、
時代を創った類稀なる才能には
敬意を表する。
わが街に、
ミニFM局なる遊び場あり。
そこで毎夜、『大昔の流行歌特集』の回とか、
今の全く知らない現役演歌歌手がゲストの回とか、
地元の焼肉屋さんの提供番組で、たまに聴く。
出てくる演歌歌手ご本人の名前は知らない。
そして、そこで語られる有名そうな、
それも名前も知らない
テレビには出ない、
演歌の大物先生の
コンサートの感動を語ったりする。
その先生との出会いのエピソードとかも。
感涙にむせび泣き、
一生ついていこうと決めた、とか。
そこで、流れた、全く知らなかった歌。
ちょっと耳に残る言葉だね、
「よいぐれて」なんて歌詞を聴いて、
少しはいいなと思ったりする。
曲名は、忘れた。
彼女の引退ってどんなだろう
場末のスナックの営業で
歌を歌っていることは
現役なんだろうか。
でも、それを現役じゃないって言ったら、
現役って、なに?
って、なるよね?
ひるがえって、歌姫さんの引退。
やめるといっても1年は仕事をする。
歌も歌うんだろうか?
その歌に「こころ」はあるのだろうか?
ふと、思ってしまったよ。
彼女もたまには酔っ払ったりするのだろうか?
その時、タワーマンションの最上階の
だだっ広い部屋の片隅で、毛布にくるまって、
「よいぐれて」の女性の歌を
聴いていたりするのだろうか?
そして、そんな歌を歌ってみたかった
って、
酔いながらなら、その心の奥の本音を、
つぶやいてみたりするのだろうか。
彼女もたまには「酔いぐれて」、
『あたい』も若いころは
歌が好きでダンスが好きで、
好きなだけで良かったの。
歌ってるだけで、
踊ってるだけで、
楽しかったし、
生きてるんだって、実感できた。
むかしは、良かったなぁ。
『安室奈美恵』なんて「演」りたくなかったな、
なんてね。
今が絶頂ならやめたくても
やめられないんだろう。
他の人と隔絶した頂きや、
他の時と隔絶した頂きが絶頂であり
「絶頂とは次の瞬間そうでなくなるから絶頂なんだよ」
とは誰のセリフだったか?
その、彼女が味わった、
虹色の星の煌めきも、
窒息寸前の真っ黒な不安も、
足元が消えて無くなるほどの孤独も、
誰ひとり味わったことのない、
めくるめくヤツだったんだ、きっと。
時には死にたくなるほどの。
それを幸せと呼ぶのが正しいのか、
「よいぐれて」の歌手を不幸せというのか、
それはいえない、ほんとうの、『水の中』。
3
心の裸って、観たことある?
安室さんのなら、こうかな?
どうかな?
ほんといえば、
あたしなんかには、わからないよ。
ただの、あたしの妄想だよ、
あるいはあたしの、悲しみだよ。
なぜか、観ているだけで、
聴いているだけで、涙する。
酔っ払っていなくてもね。
あゝ、金や銀のお月さまやお星さまの
泣いている今夜、
あの人の引退の日でも、涙は、
こらえられないとは、思っていたけど、
なぜかふざけた涙のような水が、
ゆっくりとゆっくりと、両眼に滲んで
神様もいない世界だから、
いまや、涙のふりして。
そして、涙を拭いて、
生き続けるための祝福を、と。