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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
2章:フルムス

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93:フルムスの中を歩く-1

 ルナたち『満月の巡礼者』によるフルムス攻略作戦まで後48時間。


「さて、朝の御祈りは無事終了、睡眠と食事は十分、と。じゃあ、案内よろしく」

「あの子が言っていたけど、本当にこういう場所が苦手なのね……」

 ミラビリス神殿の一室で目を覚ました私は朝の勤めを終えると、シュピーの本体に案内される形で、神殿内のとある一室に移動した。

 なお、シュピーはまだ部屋で眠っている。


「おや、シュピー様にエオナ様。入用ですか?」

「ええ、武器を何本か。あ、私のは使い捨ててもいいような物を貰うつもりだから」

「分かりました。見ていってください。と言っても、質も量も見ての通りなんで、そのつもりで」

 そこは『オニノハ武具店』フルムス支店の店長、アオーニ・オニノハの部屋。

 大量かつ多種多様な武器と防具が所狭しと並んでいる。


「とりあえず貴方も適当に武器を見繕っておきなさい」

「そうね。そうするわ」

 そう言うとシュピーの本体は細い刃を持つ剣……所謂レイピアが並べられた辺りへと向かう。


「んー……アオーニさん。ちょっといいかしら?」

「何でしょうか?」

「この短剣の持ち手だけど、こんな感じに弄れないかしら?」

「出来なくはないですが……ああ、詳しくは聞かないでおきます。高位の神官様は私たちには想像も付かない戦術や戦略をお持ちな事も多いですから」

「助かるわ」

 私の方は出来るだけ粗末な造りの槍を2本。

 それに刃が丈夫そうな短剣が4本。

 加えて、今日やる事に使うべく、持ち手の部分にちょっとした加工を施してもらい、小さな物品を仕込めるようにした粗末な短剣を10本ほど貰う。


「で、ここに、これを仕込むっと」

「植物の種?何かの魔法を時限式で発動させるとか、そんな感じかしら?」

「まあ、そんなところね」

 で、それらの短剣にとある植物の種を仕込む。

 今回は主戦場となる場所が分かっているから、こう言う仕込みがやり易くて何よりである。


「さて、それじゃあ出かけましょうか。シュピーにシュピーの本体さん」

「あ、はい」

「行ってらっしゃ……なんで私も連れていく気なの?」

 これで準備は完了。

 変装もし終わっているので、フルムスでの活動開始である。


「道案内は必要じゃない。私、フルムスの地理には詳しくないし、」

「だったら、あの子だけ連れて行けばいいでしょう?」

 で、シュピーもシュピーの本体も連れていく。

 表の理由としては道案内として。


「ボソッ(ある意味では念のためにって奴よ)」

「ボソッ(念のため?)」

「ボソッ(どうにも状況がきな臭いし、後の事を考えると、貴方と顔を合わせておきたい相手が居るのよ)」

「ボソッ(なら分かったわ。ただ、戦闘能力は期待しないで)」

 裏の理由としては……まあ、色々である。

 あの発熱具合から昨日の今日で激しい運動はさせるべきではないだろうが、それでもミラビリス神殿の外には出しておきたいのだ。


「二人とも気を付けてな。外には敵しか居ないと思ってくれ」

「危ないと思ったら、すぐに逃げてねー」

「ええ、分かってるわ」

「行ってきますねー」

「行ってくるわ」

 そうして私たち三人はボロのフードで顔を隠した上で、ミラビリス神殿を後にした。



----------



「で、まずは此処なの?」

「ええ、此処よ」

 さて、フルムスの様子だが……確かに昨日までに比べると若干行き交う人と言うか、路地や道の脇で無気力に座り込んでいる人の数が減っているように思える。

 そして、それに合わせるようにファシナティオの屋敷の地下にあるヤルダバオト神官の気配が濃くなっているようにも思える。

 まあ、この件については先にやるべき事をやってから、調べるべきだろう。


「二人ともちょっと屈んで。で、適当に何か話をしている風に装って」

「分かったわ」

「分かりました」

 なので、私はやるべき事を済ませるべく、適当な建物の外壁の方を向きつつ、その場にしゃがみ込む。

 同時にシュピーとシュピーの本体もその場にしゃがみ込んで、雑談を始める。


「『ルナリド・ムン・フロト・ファトム=ミ=イメジ・フュンフ』」

 私は雑談に紛れ込ませるように魔法を詠唱、発動。

 壁の向こうの空間にとあるイメージを出現させる。

 すると反応は直ぐにあった。


「!?」

「えーと?」

「雑談を続けて」

「とりあえず、壁向こうの誰かが哀れには思えてきたわ」

 壁の向こうに居るスィルローゼ神官の気配が大きく動く。

 そして、慌てた様子でメモを取り始める。

 で、メモを取り終わった感じがしたところで、私の頭の中のイメージを変更。

 一方的な報告をし続けていく。


「で、壁の向こうには誰が居るの?」

「メイグイって名前のスィルローゼ神官よ。ついでに言えば、この建物自体がフルムス調査部隊の根城よ」

 そう言うと私は自分の右斜め後ろに視線をやる。

 するとそこには酒瓶を片手に持った見慣れない男が座り込んでいて、私とシュピーたちの顔を見ると、まるで酔った様子の見えないウインクをこちらに向けてしてくる。


「いざって時の駆け込み場所の一つって事ね」

「そう言う事。メイグイにはもう貴方の顔を伝えてあるから、これで相手の顔を知らなくて、って事にはならないわ」

 これで顔合わせは完了。

 なお、メイグイにはシュピーの本体の顔だけでなく、私がミラビリス神殿の面々と接触済みである事、今日から攻略作戦の準備を始めること、ファシナティオの屋敷の地下の危険性についての情報、ついでにメンシオスがどういうモンスターなのかも流してある。

 あちらからの接触は……まあ、上手くやってもらうしかない。


「さて、それじゃあゴボウを手に入れに行きましょうか」

「ゴボウねぇ……そんなものあるのかしら」

「あ、ありますよきっと」

 そうして私たちはフルムス調査部隊の建物を後にして、次の行動に移り始めた。

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