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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
2章:フルムス

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76:砦にて-1

本日は二話更新です。

こちらは二話目になります。

「おかえりなさいませ。ギルマス」

「ああ、今戻った。サブマス」

 砦の中では『満月の巡礼者』のサブマスに、砦内に居るプレイヤーの中でも立場のあるプレイヤー、それから何かしらの役目を持っているであろう元NPCが集まっていて、私たちを出迎えてくれた。


「私が居ない間に起きた事を聞きたい。いいか?」

「分かりました」

「ああそれと、今から言う条件のアイテムを……」

 馬から降りたルナは早速サブマスと話を始める。

 やはり『巡礼枢機卿』と言う立場だけあって、ルナは中々に忙しいらしい。


「ドウドウ、よし一緒に行くよー。手伝いよろしくね」

「はい、分かっています」

 メイグイはルナの馬を連れて、元NPCと一緒に何処かへと向かっていく。

 どうやらあの元NPCは馬の世話役であったらしい。


「さて……」

 で、私だけ他プレイヤーの前に取り残されたわけだが……


「何か……」

「無事でよかったのニャー!エオニャアアァァン!!」

「そぉい」

「にゃだだだだ!?関節!?関節決まってるのにゃ!?」

 とりあえずプレイヤーの中の一人、私の顔見知りでもあるノワルニャンが茨の馬を消して、地面に立った私に抱き着くべく跳んで来たので、その腕を掴んで背負い投げの要領で地面に下ろし、その上で関節を決めてやる。


「現実になった『フィーデイ』ではハラスメント警告なんて出ないけど、相手の許可なく抱き着くのはNGよ。ノワルニャン」

「ギブギブニャー!私が悪かったから放してくれなのニャー!」

 私はノワルニャンの腕を放す。

 するとノワルニャンは直ぐに距離を取り、腕ではなく、尾てい骨の当たりから生えた黒い猫の尻尾に向けて息を吐き始める。

 うん、どうやらあの程度の関節技では全く効いていないらしい。


「相変わらずね。ノワルニャン」

「そっちこそ相変わらずで何よりなのニャ。エオニャン」

 で、落ち着いたところで私とノワルニャンは握手を交わす。

 彼女の名前はノワルニャン。

 黒い髪に金色の目、そして御使いモードの影響で猫の耳と尻尾を生やしている、猫と狩猟の神キャッハンの神官である。

 付き合いは……まあ、程々と言うところで、一緒に戦う機会があれば共闘するし、競い合う場面ならお互いに鎬を削ると言う感じだ。

 それとどうしてか、出会う度に接触申請を出してきた上で、今回のように抱き着いてこようとするのだが……そちらの理由はよく分からない。

 たぶん趣味なのだろうけど。

 今も握手が終わると共に抱き着かれているけど。


「久しぶりね。エオナ……」

「久しぶり。そっちは相変わらず……と言いたいけど、暗くなった?」

 さて、私とノワルニャンの挨拶が一段落着いたと判断されると、他のプレイヤーも私に話しかけ始めてくる。


「はぁ、暗くもなるわ。生きる為に戦わなければいけない世界なんて、アッチでは無縁だったもの」

「ま、それはそうよね。でも、心は折れていないようで何よりだわ。黒焔(ダークブレイズ)少女(ウィッチガール)アビスサロメ」

「サロメでいいわよ!てか、アンタ、私の語り口の変化から色々と分かっているわよね!分かってて言っているわよね!」

「え?」

「チクショウ!これだから狂信者は!!アンタのそう言うところにゲーム時代から頭に来てんのよ!!」

 まず話しかけてきたのは黒焔(ダークブレイズ)少女(ウィッチガール)アビスサロメ。

 『Full Faith ONLine』では色々と気取った喋り方をしていて、中々に特徴的だった彼女であるが、今は前髪を長くして全体的に陰鬱としたオーラを漂わせている上に、気性も激しくなっているようだった。

 全身から蘇芳色と赤色の混ざった魔力を放出している。

 なお、彼女の所属はゲーム時代から『満月の巡礼者』であり、メイン信仰はルナリド様、闇属性と火属性を主体とした魔法による遠距離攻撃でのダメージディーラーとして活躍していた。


「落ち着けってサロメ……」

「これが落ち着いていられるかー!コイツ無神経過ぎんのよ!後衛組として連携はよくしてたけど、平然と色々と際どいところを攻めすぎなのよ!!しかも報告書通りなら、普通の後衛職涙目の超火力と超範囲攻撃を今は身に着けてるし!!」

「と言われても、あの頃の私も、今の私も、出来るからやっているだけなんだけどねぇ」

「基本の発想がおかしすぎるのよ!狂信者!!ああ、なんかもう怒っている私が馬鹿らしくなってきたわ……ちょっと冷静になるために黙るわ……」

 なお、私とサロメの仲はあまり良くない。

 私としては仲良くしたいのだが、どうにもサロメの方が見ての通りの反応なのである。


「あー、それじゃあ次だ。俺の名前はディープスマッシュ。メイグイの直属の上司で、今は伝令部隊の隊長だ。信仰は言うまでもなく馬と早駆の神ホスファスラ。夜露死苦だ」

「ええ、よろしくね。知っているだろうけど、私はエオナよ。メイグイには後で私が感謝していたと伝えておいて」

「分かった。で、ああうん、なるほど。サロメが怒る理由が分かった気がするわ。マジで通じてねぇ」

「?」

 三人目はディープスマッシュと言う名前の茶髪をモヒカンでまとめた男性。

 伝令部隊の隊長と言う事は、ファンキーな見た目に反して結構な重役であるし、相応の実力者と見ていいだろう。


「まあ、あのエオナさんが相手ですからねぇ。仕方がない。あ、自分は医療部隊の隊長で、ケンゴと言います。怪我や病気の際には直ぐに言ってくださいね」

「エオナよ。よろしくお願いするわね」

 四人目は白衣を身に纏った緑色の髪に眼鏡をかけた中年の男性。

 見た目と物腰の両方から、とても柔らかそうな雰囲気を受けるし、彼の治療を受ける人は色々と安心できるだろう。

 ただ……私の場合、たぶん彼の世話になっても仕方が無いと言うか、世話になる事自体ないと思う。

 大抵の怪我は自力で再生できてしまうし、今の私の体で病気にかかるとしたらよほど特殊な病気だろうから。


「さて、本当は他にも責任者と呼べるだけのプレイヤーは居ますけど、彼らは現在休んでいますので、今この場での挨拶は申し訳ないですが出来ません」

「今は緊急事態だもの。取れる休息は取っておくべきだから、それで構わないわ」

「ありがとうございます。では、ギルマスの天幕へと向かいましょう。自己紹介を終えたら、エオナさんをそちらへ案内するようにサブマスから言われていますので」

「分かったわ」

 そうして私は四人のプレイヤーに取り囲まれた状態で、ルナが待っている天幕へと歩き出した。

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[一言] エブリラ枠キタコレ
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