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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
2章:フルムス

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75/284

75:昔の情報

本日は二話更新です。

こちらは一話目になります。

「まったく……オラクルの魔法を使う度に貴様は失血死の危険を冒すつもりか……」

「いやー、スィルローゼ様に会えて、色んな情報を教えてもらって、直接使命を与えてもらったらつい興奮し過ぎちゃったみたいで……」

「エオナ様……」

 翌日。

 ゲッコーレイたちに見送られる形で、私たちはグレジハト村を後にした。

 なお、フルムスの敵が動いていないのは確認済みである。

 どうやら、向こうで何かあったらしく、直ぐに再出撃とは行かないようだった。


「まあ、狂信者特有の危険はさておくとしてだ。内容はともかくミナモツキについての情報が手に入ったのはいいことだ。それにスキルブックの生成にエオナの体が使えるのは僥倖だな」

「その通りね。ミナモツキをどうするかは確定したし、抜け毛感覚で落ちる花弁がレベル80台のレイドボス素材扱いになるとは思わなかったわ」

「抜け毛……」

 だから私たちはその隙を突いて、『満月の巡礼者』の本陣へと向かう。

 目的はルナに神託魔法のアハト、ノイン、ツェーンを習得させてルナリド様と会わせ、新たな魔法を授かる事。

 そして、その魔法の性能次第だが、フルムス奪還に向けた本格的な作戦を開始する為である。


「で、僥倖ついでに思ったんだが、腕の骨の一本でも取り出して、貴様の武器を強化するのに使ったりするのはどうだ?スィルローゼの代行者である貴様の骨を使った武器ならば、スィルローゼの魔法を飛躍的に強化する効果ぐらいは最低でも得られるだろう」

「あー、確かに良さそうねぇ。とは言え、骨の再生にどの程度の時間とエネルギーを必要とするかが不明確だから、やるならフルムスの一件が終わってからね。万が一って事もあるし。でも真剣に考えておくわ」

「骨って……」

 と言う訳で、今は私、ルナ、メイグイの三人で移動中。

 メイグイが私たちの会話を聞いて、微妙に遠い目をしつつ何かを呟いているが……まあ、気にしなくていいか。


「あの……」

「ん?なんだ?」

「どうしたの?」

 と、ここでメイグイが恐る恐ると言った様子で手を上げて、発言の許可を求める様な姿勢を見せる。


「前から疑問だったんですけど、ルナ様とエオナ様はゲーム時代からのお知り合い……なんですよね?」

「ああそうだぞ。都市間模擬戦争にレイドボス、後は特殊なアレコレで協力したり、争ったりした仲だ」

「仲間になる時はだいたいルナが誘う側だけどね」

「貴様はこれでもかと言うぐらいにソロ気質だからな」

 私とルナの付き合いは……割と長い。

 お互いに必要な時だけ付き合う形ではあるが、だからこそ現実になった今でも友好的でいられるのかもしれない。


「呼ぶ時の役目としては……」

「都市間模擬戦争だと嫌がらせ役が大半よね。罠を仕掛けて事前に削れるだけ削っておく感じで」

「レイドボスだとスィルローゼの究極封印魔法によって敵の強力な攻撃……特にLA(ラストアタック)を無力化する役割が多いか。サクルメンテの魔法によるバフデバフ延長も頼むが……そっちの役目はもっと上のが来ることもあるしな」

「流石にタイホーさんとは比べないでよ。あの人は支援の最高峰でしょう」

「まあ、今の状況でもほぼ確実に何処かで生きていると断言出来るプレイヤーの一人だしな……」

 後、ルナとの付き合いが楽なのは、ルナが無理な事をやらせないし、事前にきちんと話し合いの場を設けてくれると言う部分からも来ているのかもしれない。

 なお、タイホーさんと言うのは……サクルメンテ様の御使いで、特定のギルドには所属していないプレイヤーであるが、支援系のプレイヤーの最高峰と称されるレベルのプレイヤーである。

 性格も温和ながらしっかりとした芯がある人で、ゲーム内でお悩み相談室のようなこともやっていた。

 実力も合わせて考えれば、ほぼ間違いなく今も生きていると言うか……サクルメンテ様の代行者になっていると思う。


「と、タイホーさんで思い出したけど、私の知り合いって『満月の巡礼者』かクレセートに居る?」

「今更と言うか、普通なら昨日の移動中に聞く話だろう。それは……」

「他に色々とあって忘れていたのよ」

「まあいいか。で、名前は?」

 私は何人かの名前を挙げる。

 その中には現役組のフレンドも居るが、『悪神の宣戦』時には既に引退していたプレイヤーの名前もある。


「何人かは『満月の巡礼者』に移って、今回の戦いにも加わっているな。そうでないのもクレセートで見かけた覚えがある」

「そっか、無事なら何よりだわ」

「ただ、何人かは覚えが無いし……行方不明として扱われているプレイヤーの名前もあるな」

「まあ、そっちについては仕方がないわね……」

 結果は……マチマチと言うところか。

 これについてはゲーム時に居た場所、あるいは最終ログアウト地点に飛ばされたと言う事情を考えたら仕方がないことだろう。

 『フィーデイ』の何処かで生きている事を願うばかりだ。


「ところでルナ様はエオナ様を『満月の巡礼者』に入れたりは……」

「ルナリド様に頼まれてもしない。コイツに長期的な集団行動は無理だ。断言する」

「絶対に断るわね。フルムスの件が片付いて、クレセートに問題が無いことを確認したら、世界各地を回らないといけないのは分かっているし」

「デスヨネー」

 なお、誰になんと言われようともギルドに加わる気はない。

 私にはスィルローゼ様の代行者として為すべき事があるのだから。

 仮に加わるのであれば、私の行動に文句を付けないのが大前提だが、それならギルドに加わる意味だってないし。


「ああそうだ。もう一人、聞き覚えがあったら行方を聞いておきたい名前があったわ」

「誰だ?」

 と、ここで私は一人のリア友だった女性の名前を思い出す。


「カニメデ。聞き覚えはある?」

「カニメデ……いや、ないな。知り合いか?」

「リア友だった子よ。もし聞き覚えがあったら……まあ、垢BAN組とは別の意味で問題がある子なんだけどね」

 カニメデは……ゲーム好きの優しい子だった。

 色々と問題があると自認しているリアルの私とも友人で居てくれたぐらいであるし、スィルローゼ様目当てで『Full Faith ONLine』を始めた私に色々と手ほどきをしてくれたプレイヤーでもある。

 きっと今の状況に巻き込まれていたら、積極的に人助けもしていただろう。


「……。そう言う相手か。確かに垢BANされたわけではないから、データは残っているし、巻き込まれる対象ではあるのか」

「えと?」

「カニメデは『悪神の宣戦』以前にリアルで亡くなっているのよ。もう一年以上前の話ね」

「ああなるほど……でも、確かにあり得る話ですね……」

 ただ、現実世界の彼女は既に病気で亡くなっている。

 だが、『Full Faith ONLine』のデータは残ったままになっている。

 そんな彼女が『悪神の宣戦』でどうなったのかは……誰にも分からない。

 一番最悪のパターンとしては中身にヤルダバオト側の何かが入っているパターンだが……そもそも巻き込まれていない可能性が一番高く、巻き込まれても中身が入っていないパターンもある。

 出会わないのが一番で、出会ったら……慎重に見極めるしかないだろう。


「ま、ルナに聞き覚えが無いなら、今は気にしても仕方がないことだわ」

「そうだな。それよりも直に本陣に到着する。着いたら、直ぐに作成を始めよう」

「分かったわ」

 私たちの前にフルムス攻略のために『満月の巡礼者』が築いた即席の砦、フルムス攻略の本陣が見えてくる。

 そして私たちは石と木で出来た砦の中へと入っていった。

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