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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
2章:フルムス

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71:グレジハト村報告会-4

「ちょっと待って。それは何処からの情報?幾らファシナティオが魅了使いだからって、それはあまりにもと言うか、あっちゃいけない事でしょ。なにしてんのよ、ファシナティオ以外の敵幹部は」

「だが事実だ……」

 呆れた様子でルナが差し出した紙には、交戦中に敵の元プレイヤーが叫んでいたり、話したりしていた内容を聞き取ったこちら側の人間の証言が書かれていた。

 内容としては、先程もあったような『ファシナティオ様の為に』なんて叫びや、『○○方面が手薄なように見えるから、あっちから攻めよう』と言ったマトモな意見、『ワンオバトーが消滅させられたぞ!?どうなっている!?』と言う混乱している様子が見られる言葉などが殆どだ。

 だが、その中にこんな証言があった。


『ゲッコーレイは必ず捕まえろ!ファシナティオ様の命令だ!』

『ゲッコーレイは絶対に逃がすな。だが殺すな。アレはファシナティオ様が直々に殺すのだ』


 此処まではいい。

 ゲッコーレイは広範囲バフデバフの使い手だし、グレジハト村守備隊の隊長だ、狙われるのも当然と言えるだろう。

 問題は此処から。


『ファシナティオ様は仰った。自分よりも目立つ存在など許されない』

『ファシナティオ様は言った。私より愛されている女なんて死ね』

『ファシナティオ様の言葉だ。あんなブスがどうして私よりも人気なんだ』


 等々。

 正直、文章を読んでいるだけでもやる気が削がれると言うか、見るに堪えないと言うか……うん、ルナが億劫そうになるのが分かった気がする。

 完全に私情と言うか私怨で攻撃を仕掛けてきている。

 それもかなり醜い嫉妬を伴って。


「一応聞くけど、ゲッコーレイの身辺警護は大丈夫?」

「心配しなくても、思想などに問題が無い事を確かめた上に魅了耐性を万全にした高レベルプレイヤーを複数人体制で付けているから、問題は無い」

「そう、なら大丈夫ね」

 正直、頭痛で頭が痛いのレベルで頭が痛くなってくる話だ。

 だが同時に厄介でもある。


「こう言う支離滅裂な思考回路を有する相手って行動予測が一切出来ないから、やりづらいのよねぇ……」

「そうだな。普通なら事前の兆候とかで相手の動きを予測することも出来るんだが、モンスターの能力を活用されると、その辺りも難しくてな……」

 こう言うのが相手だと、あらゆる戦いにおいて重要な先読みの難易度が著しく上昇するからだ。


「えーと……」

「お二人の頭の出来とファシナティオの頭の出来に差がありすぎるせいでツラい。と言う話です。メイグイさん」

「あ、なるほど」

 正直な話としてだ。

 馬鹿の相手は簡単だ、相手が釣られる餌を用意すればいいのだから。

 普通の相手も簡単だ、基本に忠実に攻めればいいし、奇策だって狙える。

 自分より頭がいい相手でもそこまでツラくは無いし、策の読み合いは楽しさすらある。

 天才の相手でもそこは同様で、学ぶいい機会でもある。

 しかし……この手の我が儘で自己中な、私とは別の意味で人間として破綻している輩の相手は難しい。

 相手の情報が出揃っているのなら、そこから動きの予測も出来るが、情報が足りないと、こちらが有り得ないと考えから捨てた手を平気で打ってきて、こちらに大損害を与えてくることもある。


「そうよねぇ。モンスターとしての能力もあるのよねぇ……ミナモツキとか、メンシオスとか、確認は取れていないけど、フルムス周辺のボスモンスターやクエストモンスターとか。これで能力が無ければまだマシなんだけど……」

「私が色々と億劫そうにしていた理由が分かったか?」

「ええ、嫌でも分かったわ……」

 ファシナティオの行動は、例えて言うならば、目の前の壁を壊すべく持っている大金槌を全力で振り回した挙句、適当に放り投げる様な行為である。

 どこにどう損害が出るかまるで読めず……下手をすると壁の向こうに居た誰かの頭をカチ割ったりもする。

 全く以って厄介な話である。


「でもまあ、こうなってくると、ファシナティオが人間だった時の話はより重要ね。たぶんだけど、人間だった頃から同じような思考回路を持っていて、『悪神の宣戦』以降ではほぼ最速のタイミングでヤルダバオト神官になっているような女でしょうし」

「そうだな。アレの考えなど読みたくもないが……読まなければ危険すぎるし、改めて整理するとしようか」

 だが、幸いと言っていいのかは分からないが、今のファシナティオにはゲッコーレイと言う明確な攻撃目標が存在している。

 なので、そこから探ったり、測ったり出来る部分が少なからず存在するだろう。


「メイグイ。ファシナティオの資料を」

「はい、どうぞ。ルナ様」

 メイグイがファシナティオについての資料を机の上に並べてくれる。

 どうやら、こちらに来てから初めて明確に処分せざるを得ないプレイヤーだったという事で、教訓も兼ねてある程度の資料は何処の守備隊の手にもあるらしい。


「あ、こちらもどうぞ」

 それに加えてヤマスラさんが手書きの資料を何枚か提出してくれる。

 こちらは当時直接関わった人間しか知らない情報に……ゲーム時代のファシナティオの物と思しき噂もあるか。


「では、ゲーム時代は置いておくとして、『悪神の宣戦』以降のファシナティオについてだな」

「分かったわ」

 正直、気は進まない。

 だが相手はスィルローゼ様を馬鹿にした相手でもある。

 それを思い出したら……私のやる気はだいぶ戻ってきた。

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