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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
1章:ロズヴァレ村

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36:規格外-1

「ふぅ、何とかなったわね」

 『スィルローゼ・ロズ・コセプト・スィル=スィル=スィル・アウサ=スタンダド』。

 それは私がスィルローゼ様から授かった規格外の魔法。

 効果は対象となった存在から一切の抵抗能力を奪った上で、その存在の概念ごと永久に異空間に封じ込めると言うもの。

 この魔法によって生じる異空間はヤルダバオトの力が届かない為に中から脱出する方法はない。

 死んでいないからリポップすることは出来ず、概念ごと封じられているために新たに生まれる事も出来なくなる。

 正に無限にリポップし続けるモンスターたちにとって天敵と言ってもいい魔法である。


「反省点は……」

 そして、私はその魔法によってマラシアカを封印した。

 これでマラシアカはもう二度とこの世に出てくることは無い。

 恐らくだが、今頃ヤルダバオトは何故マラシアカが居なくなったのかも分からず、慌てふためいている事だろう。


「多々あるわね」

 まあ、封印するまでの流れについては反省点ばかりだ。

 一度完全に殺されてしまっていたし、もっと早く封印に移行出来たのではないかとも思う。

 それに何より、ロズヴァレ村をかなりの危険に晒してしまった。

 ジャックとシヨンたちが上手くやっている事を願うが……これについては信じるしかない。


「とりあえず『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ズィーベン』」

 もう手遅れの可能性もある。

 だがそれでも、やれるだけの事はやるべきだと判断して、私は地面の中を進むカミキリ兵たちも、地上を移動しているモンスターもまとめて薙ぎ払うべく『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ズィーベン』を発動する。

 すると、これまでとは桁違いに広い範囲に、それまでより太い茨が、数まで目に見えて多くなった状態で放たれ、崖下から崖上まで、地中も地上も関係なしに茨で埋め尽くして、全てのモンスターを貫いて殺していく。

 うん、どうやら信仰値がこれまでの上限である255を超えた影響が既に出ているらしい。

 明らかにスィルローゼ様の魔法の効果が上がっている。


「……。このままやるべき事を済ませてしまいましょうか」

 私は右手の手首から茨を生じさせると、崖上に向けて伸ばしていく。

 そして崖上の地面にしっかりと根を張って固定すると、私の体の中へと茨を巻き上げて崖上へと登っていく。


「極自然にやっちゃったけど、これって魔法じゃなくてモンスターの使う能力と同質のものよねぇ……」

 今の私は信仰値255を超えたため、スィルローゼ様の御使いではなく代行者と呼ばれる状態にある。

 この代行者と言う状態は……はっきり言ってしまえばモンスターに近い。

 スィルローゼ様の力によって自ら望んで変質しているか、ヤルダバオトの力によって望まず変質しているかと言う大きな差はあるが……元の生物から全く別の生物になっているという点、魔法ではない固有の能力を有するようになっているという点に変わりはない。


「ま、私的には問題は無いか」

 まあ、私としてはスィルローゼ様により近づいていているので、そう言う面での問題は感じない。

 別の面の問題があるので、この件について話せる相手は限られるが。


「さて……まずは始末ね。『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ズィーベン』『スィルローゼ・サンダ・ソン・コントロ・アインス』」

 崖上に登った私はカミキリ城に向けて茨の波を放つ。

 そして放った茨の波を『スィルローゼ・サンダ・ソン・コントロ・アインス』によって操る事で、カミキリ城の隅々に茨を届かせ、城の中に残っているモンスターを確実に始末していく。

 これで一時的にではあるが、この地のモンスターは全て始末されたことになる。


「続けて、『スィルローゼ・プラト・ラウド・スィル=ベノム=ソンカペト・アハト』……」

 更に『スィルローゼ・プラト・ラウド・スィル=ベノム=ソンカペト・アハト』によって周囲に茨を敷き詰め、他の魔法で茨の領域含めて強化を重ねていく。

 ここで代行者になった事と、此処が枯れ茨の谷で、枯れているとは言え元々大量の茨があった影響が出たのだろう。

 出現させた茨はそのまま根付き、枯れて茶色くなった茨たちも青々としたものに変化する。


「では……円と維持の神サクルメンテ様。スィルローゼ様の代行者であるエオナが恐れながらも求めます」

 私はそれらの茨を操ると、幾何学的な模様を地上、空中、地中に描いていき、立体的な結界を作り出していく。


「悪と叛乱の神ヤルダバオトによって歪められし、彼の地の理と輪廻を貴方様の力によってお正し下さいませ。木を東に、火を南に、土を中心に、金を西に、水を北に、陰は月に、陽は日に。色空変転して、正円を描け。さすれば、彼の地の理と輪廻は正されて、あるべき姿が保たれる」

 結界を作り出した私は、それぞれの方位に属性の色に合わせた薔薇の花を咲かせていく。

 花の数が増すほどに多くの力が結界内で渦を巻いていき、術者である私でも全容を把握しきれない程に膨大な……けれど優しく暖かな力が結界の中に満ちていく。


「『サクルメンテ・チェジ・ルール=リーン・メンテ=ピュリファ=キプ・アウサ=スタンダド』」

 そして、私の詠唱と共に私がサクルメンテ様から授かった魔法が発動。

 枯れ茨の谷とカミキリ城のエリア内に存在していた、ヤルダバオトが生み出した異常の全てが取り払われていく。


「これでよし」

 これでもう枯れ茨の谷とカミキリ城のモンスターが自分の生まれたエリアの外に出ていくことは無い。

 そして、残っているかは分からないが、この地で倒れて、この地で彷徨っていたプレイヤーの魂があったのであれば、あるべき輪廻に移動できた……はずである。

 うん、流石に輪廻についてはよく分からないので、サクルメンテ様から授かった知識の受け売りしか出来ない。

 上手くいっている事を信じるしかない。


「さて、やるべきことはやったし、帰りましょうか」

 こうしてやるべき事を終えた私はカミキリ城に背を向けた。

05/02誤字訂正

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