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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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281/284

281:戦い終わりて-2

「それにしても、想像以上の大都市ね。『エオナガルド』は」

「まったくだな。クレセート、フルムス、それに他の都市に比べても遜色のないサイズだ」

 別の私……エオナ=マネージがルナとゴトスの二人と一緒に復活の様子を見ている頃。

 私ことエオナ=ライブラリは自分の定位置である『エオナガルド魔法図書館』に戻っていた。

 そして、新しく生み出された本の検分をしようと思ったのだが……どうやら、来客のようだ。


「でもサイズ以上に質がおかしいでしょう」

「そうだな。最高級の素材から作られた料理、医薬品、衣服。武器にしても木製の範疇なら上から数えた方が早い物。ただ何よりもヤバいのは……」

「まあ、ここよねぇ……」

 『エオナガルド魔法図書館』に入ってきたのはサロメとビッケンの二人だった。

 どうやら、二人はラス・イコメク討伐を祝う宴が始まるまでの時間で『エオナガルド』の中を探索していて、此処に辿り着いたらしい。


「全部スキルブック……だよな」

「そうね。そして、背表紙を見る限りでは、スィルローゼ以外の神々について記したものもある……と言うより、ほぼ全ての神のスキルブックがあるんじゃないかしら」

「全てのプレイヤーにとっての理想郷に近いな。こりゃあ……」

 サロメとビッケンの二人は近くの本棚から本を取り出すと、暫く立ち読みをしてから元の場所に返す。

 しかし、プレイヤーにとっての理想郷か……随分と甘い考えである。


「いえ、そう甘くもないみたいよ。『ファウド・ウド・ミ・パシブ=バフ=ファミング・アインス』。うん、やっぱり駄目ね」

「は?」

 どうやらサロメは気付いたらしい。

 これまでの感嘆とした表情から一変して、渋い顔をしている。


「エオナ。ここのスキルブックは最初から最後まできちんと読み込んで、頭の中に知識を入れないと発動できない。そうでしょ?」

「ええ、その通りよ。此処の本は私がルナリド様から授かったスキルブックを生成する魔法を利用して作られている。だから、使い捨てでない代わりに、内容をきちんと把握しておく必要があるわ。外に出てからもね」

「マジかよ……理想郷は所詮理想郷だったって事か……」

 私の言葉にビッケンは天を仰ぎ、嘆く。

 どうやら、何か得たい魔法があったようだ。


「それと図書館ではお静かに。パッシブやサーチ系の魔法を使うぐらいならともかく、攻撃系の魔法を使ったりしたら、その時点で叩き出すわよ」

「言われなくても分かっているわよ」

「それぐらいの常識はあるから、大丈夫だ」

 ちなみにサロメが使おうとした『ファウド・ウド・ミ・パシブ=バフ=ファミング・アインス』と言う魔法は、ファウド様のパッシブ魔法の一つで、農耕行為に対するバフが常時かかるようになる魔法。

 私は取得していないが、エオナ=ファームは取得している魔法である。

 サロメが取得していないのは……サロメにとってファウド様の魔法はサブ信仰の中でもさらにサブの魔法であり、農耕と言う生産をする機会が無いから、取得する気も無かった、と言うところだろう。


「ちなみに貸し出しは?」

「『エオナガルド』住民以外には認めていない。貴重品だもの。メモや写本は認めているから、それでどうにかしなさい」

「分かったわ」

 なお、『エオナガルド魔法図書館』に所蔵された事がある本ならば、私には『エオナガルド』の何処にスキルブックがあるのかが感知できる。

 なので、密かに持ち出すことは不可能だ。


「こっちの禁書庫ってのは?」

「そのままの意味。私が認めなければ、立ち入りは不可能。読んだ人間の精神に異常を来す可能性があるスキルブックが収められているわ」

「「……」」

 私の言葉に二人とも半歩ほど足を引く。

 どうやら、そんなスキルブックもあるとは思っていなかったらしい。


「心配しなくても、本がある事を認識してしまっただけで精神崩壊を引き起こしかねないような代物は、禁書庫の中にもう何段か禁書庫をあって、その奥に封じられてるわ。禁書庫の第一層にあるのは、その神様の信者なら問題なく読める代物。その神様の信者でなくても目眩を起こしたり、失神したりする程度ね」

「いや、本を読んだだけで目眩や失神は十分ヤベぇから……」

「と言うか、何処のラストダンジョンと言うか、力を得るためのダンジョンなのよ、ここは……」

 二人はそう言うが、資格のない人間に使わせるわけにはいかない魔法はかなり多い。

 信仰値を犠牲にする代わりに強大な力を持つアルテ系の魔法。

 即死や石化と言った致命的な状態異常をもたらす魔法。

 単純なダメージ魔法にしても広範囲だったり、高威力だったりする魔法。

 階級がゼクス以降の一般人に持たせるにはハイスペックな魔法。

 他にも色々とあるが、いずれにしても資格のない人間が読めて使える様になったら、多くのトラブルを招くことになるだろう。

 だから、神様たちがそう言う仕掛けを仕込んでおくのは当然だろう。


「参考までに聞いておきたいのだけど、『エオナガルド魔法図書館』の最深部にはどんな魔法があるの?と言うか何層あるの?」

「禁書庫の層については……一番深いルートで今は15層くらいかしら。スキルブックたち自身が資格のない人間を阻むように簡易のダンジョンを構築しているのよね。最深部付近になると私も『エオナガルド』を脅かすような脅威が無い事と本の内容についてのだいたいの情報しか認識できていないわ」

「完全にダンジョンなのか……それも管理者にとってすら未知の……」

「もうここ、ローレム山地、ポエナ山地に次ぐ第三の魔境でいいんじゃないかしら……」

 なお、禁書庫のダンジョンは乱雑に組まれた網の目のように入り組んで、合流と分離を繰り返すだけでなく、日々繋ぎ方が変わってもいる。

 おかげで専門の調査チームが数日に一度潜っては、命からがら逃げ帰ってくる状態である。

 まあ、仮に死んでも『エオナガルド』内なので死に戻りで済むが。


「最深部にある魔法は……乱と混沌の神イヴ=リブラ様と無と終焉の神ゾタ=ミデン様の共同著書だったかしらね。世界の創世と終焉に関わる本だと聞いてはいるし、気配から本当だと把握もしてるけど……私も実物は見たことが無いわね」

「もう本当になんなの此処……神様の名前なのは分かったけど、どっちの神様の名前も聞き取れなかったわ……」

「俺もだ……てかこれ、エオナのメイン人格の方も把握してないだろ……明らかにラス・イコメクの数倍はヤバいのが眠ってるじゃねえか……」

 なお、エオナ=フィーデイはビッケンの言うとおり、此処の事を把握していない。

 資格がない者は手にする事が出来ないと言う仕掛けもあるし、私が伝えていない事もあるが、エオナ=フィーデイは無と終焉の神ゾタ=ミデン様を認識できないし、『エオナガルド』に害を及ぼすものがある訳でもないからだ。

 黙っていても、話しておいてもやる事は変わらないなら、黙っておいても問題は無いだろう。


「まあ、他のメンバーの最低限のリハビリとラビネスト村の調査が終わるまでの数日間で潜りたければ潜るといいわ」

「「……」」

 私はそう言うと、口の端を痙攣させている二人を尻目に、手元の本を読み始めた。

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[一言] ろくなことが書いてない気がするコンビ!
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