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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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279:ラス・イコメク-4-4

「やった……んだよな……」

「分からねぇ……」

「これまでの相手と比較できないからな……」

 ラス・イコメクだった者の灰を前に、私以外の面々は警戒を続けている。

 私個人としては、ラス・イコメクの死亡は確認済み。

 ルナの『整月の指輪』の魔法やイナバノカグヤさんの細工によるリポップ防止と能力の正常化も働いているし、メンシオスの黒い霧の影響もうけている。

 加えて封印に関わるものとしてラス・イコメクの封印されていた領域が何もない状態になっているから、その死……いや、滅びは間違いない。


「エオナ。ラス・イコメクはどうだ?」

「そうね。普通ならもう復活することは無いわ」

「普通なら、か」

「普通なら、よ」

 そう、普通ならもう復活することは無い。

 ラス・イコメクと言う存在は魂の一片に至るまで磨り潰され、滅びたのだから。

 だが、念には念を入れておくべきだろう。


「だから普通じゃない方法への対策を取っておくわ」

 私は右手だけで持っていたニグロム・ローザを左手でも持ち、切っ先を地面へと向ける。


「茨と封印の神スィルローゼ様。貴方様が代行者であるエオナが求めます」

 ラス・イコメクだった灰に私は剣を突き刺す。

 抵抗は当然ない。


「悪と叛乱の神ヤルダバオトに与した者、『万産界・皆産みの魔鬼王ラス・イコメク』。彼のものの存在と概念を金剛の茨を以って深き深き深淵に広がる混沌の薔薇園へと導く力を。無間に極彩色の薔薇が包み込み、咎人を苛み、罪を贖わせる牢獄へと繋ぎ止める力を。彼のものに終わりなき苦痛と絶望を与えると共に、終わりなき夜を始める刃が慈悲と共に振り下ろされる時まで続く封印を齎す力を我に与え下さいませ」

 剣に青い光が宿ると共に茨が伸びていき、ラス・イコメクだった灰を覆っていく。

 伸びた茨から色とりどりの薔薇の花が咲き、場に薔薇の芳香が満ちていく。


「『スィルローゼ・ロズ・コセプト・スィル=スィル=スィル・アウサ=スタンダド』」

 そして虹色の光が少しずつ漏れ出していき、ラス・イコメクと言う存在と概念そのものを捉え、封じ込めていく。

 私と言う存在の奥底に、私自身ですら触れることも知覚することも出来ない領域へと落ちていく。

 そうして光が止む頃には、ラス・イコメクはこの世から消滅し……二度と現れないようになった。


「エオナ。何をした?」

「復活ではなく再誕も出来ないようにしたのよ」

「それはつまり……」

「ラス・イコメクと同じ能力を有する存在を生み出そうとしても、生み出せなくなったと言う事。世界を滅ぼしかねない脅威の一つを完全に排除させてもらったわ」

 これでG35、それにリベリオン=コンプレークスが何かしらの方法で再度ラス・イコメクあるいはラス・イコメクと同じ立ち位置にあるような存在を生み出そうとしても失敗する。

 それどころか生み出すために要したエネルギーはそのまま私の糧になるだけとなった。

 どこまでが封印の対象範囲になるのかは私自身少々不明瞭ではあるが……当面は大丈夫だろう。


「そうか、ならば、この戦いは……」

「私たちの勝利よ」

 そして私が勝利を告げた瞬間。


「「「ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」」」

 勝鬨の声が特別面会区を満たした。



----------



「しかし……疲れたな……」

「ああ、予定よりだいぶ短く済んだが、丸一日以上だもんな……」

「もう動きたくない……」

 そう、勝鬨で特別面会区は満たされた。

 だが、直ぐにその声も動きも収まった。

 当然だ。

 ゴトスたちは丸一日以上ラス・イコメクと言う難敵と戦い続けていたし、ルナたちはルナたちでクレセートの問題を片付けてからこちらに急行して参戦してくれたのだから。

 重傷者は何人も居るし、死者だってかなりの数出ている。

 その為、特別面会区及び居住区が野戦病院のような状況を呈するのは当然のことと言えた。


「で、エオナ=ロザレス。貴方の格好は何?」

「これ?万が一の為の備えだった。まあ、必要なかったけど」

 そんな中で私たちは監獄区の一室に集まって、ゆったりと茶を飲みつつ、記憶の同期を図っていたのだが……エオナ=ロザレスがいつの間にか見覚えのある金属で出来た鋏を持っていた。

 私は直ぐにどういう経緯で手にしたのかを探ろうとしたが、エオナ=ロザレスがその部分の記憶の同期を拒否しているためだろう。

 経緯は一切分からなかった。


「まあ、他の私や『エオナガルド』、スィルローゼ様には迷惑をかけない。私個人の手に負える範囲で仕込んでいるから安心して」

「ならいいけど……」

 そう言うとエオナ=ロザレスは自分の領域に戻っていってしまった。

 いったいマラシアカと何があったのかは分からないが……まあ、監視をしておくしかないか。

 それに今は他にやるべき事が沢山ある。


「さて、まずはラス・イコメクに殺されて取り込まれて、それを私たちで再回収した魂たちに元通りの肉体をあげないといけないわね」

「その後はラビネスト村の安全確認」

「今回、私たちと一緒に戦って下さった方々の労に報いる事も必要でしょう」

「教皇様への報告も必要ね」

「ラス・イコメクに噛まれたフィーデイの右肩の治療もね。今も感覚ないんでしょ」

 今回の戦いを完全な勝利に終わらせるためにも、どれも手を抜くわけにはいかなかった。

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