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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
1章:ロズヴァレ村

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26:これからするべき事-2

「しかし、こうなってくると問題はやっぱりあれか」

「完全に死んでしまえば生き返る事は出来ない、でしたっけ」

「ええ、サクルメンテ様はそう言っていたわ」

 私たちプレイヤーのやることは変わらない。

 だが、『Full Faith ONLine』において重要な機能である死に戻りは『フィーデイ』では失われてしまっている。

 この差は大きい。

 なにせ、全く未知の相手に挑む時や、格上あるいは同格の相手と戦う時の動きがまるで変わるのだから。

 そして魔蟲王マラシアカの自爆のように初見殺しの戦術を取るモンスターだっているのだから。


「蘇生魔法って言うと……ほぼルナリド神官の専売特許だったか」

「私も他人を復活させるのなら一応持ってますけど、自動復活や強力な復活になるとルナリドとサンライだけだったと思います」

 加えて、死に対する対処方である蘇生魔法は『Full Faith ONLine』でも扱える神が極めて限られている魔法だった。

 私は自動復活も他者の蘇生も習得しているが……現実となった今、死んだ直後の他人を冷静に蘇生できるかは少々怪しい。


「そこは現実になったことで取り払われた制限をうまく活用するしかないでしょうね。相手も利用してくるから一筋縄ではいかないでしょうけど」

 となってくると……一番良い戦術はやはり一方的な虐殺になるような戦い方か。

 尤も、そのような戦い方をすると、それはそれでヤルダバオトの叛乱と言う権能に引っ掛かって、予期せぬ反撃をもらいそうで怖いところではあるか。


「それと、死んだら生き返れないってのも問題だけど、死んだ後にきちんと弔われないとモンスターになるってのも大きな問題でしょうね。戦う側にとっては勇敢に戦って、負けて、その結果としてモンスターにされるなんて悪夢でしかないでしょう?」

「まあな……」

「そう……ですね」

 そして弔いがきちんとされていなかったらモンスターになる可能性があると言うも問題だ。

 これを聞いたら、殆どの人間は二の足を踏まずにはいられないだろう。


「……。あー、凄く嫌なことに気づいちまった……」

「どうしたの?ジャック」

 と、ここでジャックが明らかに深刻そうな顔をする。

 どうやら何か気付いてしまったらしい。


「いやな、俺の記憶が確かなら、こっちに飛ばされてきた時、ロズヴァレ村の中に直接出てきた連中は自殺するか、クレセートへ集団へ向かうかで、その自殺者についてはエオナがきちんと埋葬してくれたらしいんだが……」

「あー……そうだったわね……」

「?」

 そしてジャックの言葉で私も思い出す。

 あの日に何があったのかを。


「枯れ茨の谷に飛ばされたプレイヤーの中に死人が出ているんだ。しかも死体の弔いなんてまるで出来ない状況で」

「!?」

 そう、あの日、私は枯れ茨の谷の最奥に落ちた。

 それと同じくして、何人ものプレイヤーが枯れ茨の谷に落ちている。

 その中には……死者を出してしまったパーティもあったはず。


「輪廻ってのがどうなっているのかはよく分からないわ。でも、もしも死んだ場所の近くで生まれ変わり易いとなれば……マラシアカの配下になるような形で元プレイヤーのモンスターが居てもおかしくはないわね」

「そんな……そんな事って……」

「仲間を守るために戦って死んで、そしたら次は仲間を襲うモンスターへ……改めて想像すると、それだけでも胸糞悪くなる話だな」

「おまけにモンスター相手の弔いって、現実化した後だとやっている人が一気に少なくなっていそうな気がするわね……」

「そりゃあそうだろ。死ねば皆仏とは言うが、仲間を傷つけ、場合によっては殺した相手をきちんと弔える人間なんて……確実に少数派だ」

「……」

 彼らが元の世界に帰れる可能性はもうない。

 それどころか、それ以上の悲劇に陥っている可能性は……決して低くはない。


「エオナ、お前がこの前、枯れ茨の谷に行ったとき、そう言う手ごわいモンスター……と言うか妙なモンスターには遭遇したのか?」

「遭遇した覚えはないわね。ゲーム時代と違うと言えばカミキリ魔法兵だけど、カミキリ魔法兵たちはどうにも生まれた後に訓練を積むことでなっている節があるし」

「じゃあまだ……」

「可能性や推測の部分ばかりだから何とも言えない。けれど、今後はモンスター相手であってもきちんと弔うべきであるってのは確かでしょうね」

「はい……」

 いずれにしてもやるべき事はあまり変わらないが……知っているのと知らないのとでは大きな差が出る話ではありそうだ。


「そう言えばシヨンは何時までロズヴァレ村に居られる予定なの?貴方はシー・マコトリスの護衛なのよね」

「予定では、明後日には出発する予定です。シーさんは行商ですし、私たちが村々を回らないと、それはそれで問題が起きてしまいますから」

「そう、なら他のプレイヤーたちを見かけたら、今の話を教えておいてほしいわ。信じてくれるとは限らないでしょうけど……少しずつでも広めておいた方がいい認識でしょうから」

「はい。必ず。サブではありますが、誠と商売の神シンセップ様の名に懸けても」

 だから私はシヨンに頼みごとをした。

 私は少なくともマラシアカの件が片付かなければロズヴァレ村を離れられないし、ジャックも村を出るにはまだ実力が足りない。

 この状況で他のプレイヤーに情報を伝えられるのはシヨンだけであるから。


「最後に確認なんだが……エオナ、リポップ対策は手に入れたんだよな」

「手に入れたわ。最初に使う時はちょっと覚悟がいるだろうけど」

「分かった。なら、俺も最低限の仕事くらいは出来るように鍛える。このまま何も出来ないってのは幾ら何でも嫌すぎるからな」

「ええ、お願いね。協力できることはさせてもらうわ」

 状況は確実に動いている。

 そして、対処が遅れれば、遅れただけ私たちにとって不利な流れになる。

 私がスィルローゼ様から授かった新たな魔法を使う時は……案外近いのかもしれない。

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