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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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256/284

256:ラス・イコメク-1

「『スィルローゼ・プラト・ラウド・スィル=ベノム=ソンカペト・アインス』『スィルローゼ・プラト・ワン・グロウ・ツェーン』」

「「「ーーーーー!?」」」

 魔鬼王ラス・イコメクの封印があるラビネスト村近くの丘にやってきた私がまずやったのは、丘を埋め尽くすような数でひしめき合い、その中心で耐え続けているゴトスたちを倒そうとしているLISBたちを倒す事だった。

 だが、これまでに得た情報とこの場を直接見た感想として、オーバーキルは可能な限り避けるべきだと判断。

 なので、私は小さな茨の絨毯を展開すると、それを成長させることによって効果範囲を大幅に広げて、丘を茨で覆い尽くした。


「おおっ……すげえな、こりゃあ」

「メ、メエェ……」

「「「ーーーーー!?」」」

 効果は劇的だった。

 茨の絨毯の上に乗ったLISBは脚から順に溶けるように崩れ落ちていき、LAである黒い靄すら生じることなく消え去っていく。

 どうやらゴトスの予想通り、スィルローゼ様の魔法なら問題なく狩れるようだし、封印と毒でLAの発動すら出来なくなるようだ。

 そして、地形による継続ダメージならほぼ相手のHP通りのダメージしか与えずに済む、と。


「調査、助かったわ。ゴトス」

「エオナ」

 私は此処まで全力疾走を続けてくれたスリサズを労わりつつ『エオナガルド』に戻すと、ゴトスに近づいていく。


「あー、その、役に立ったなら幸いだ。ただ、LISBについては殆ど対処できなかった」

「弱点を探し出しておいてくれただけでも十分よ」

「でも、アイツら倒すたびに復活どころか増殖を……」

 ゴトスも金毛の羊も疲れた様子だが、大きな傷は負っていない。

 どうやら、敵の数が増えて逃げ回る事が無理になった後も上手く立ち回り続けていたようだ。

 で、ゴトスが懸念事項を言ったタイミングで新たなLISBが地面から出現しようとするが……


「ーーーーー!?」

「……。問題ないみたいだな」

「だって、どう考えても継続ダメージを負わせるタイプの領域魔法との相性が壊滅的に悪いもの」

 出現と同時に茨の絨毯の中へと沈んでいって消滅した。


「ただ、倒されることは計算に入れているんでしょうね。倒される度にオーバーキルになった分のダメージを封印を壊すための呪いに取り込んでいるわ」

「つまり倒す度に封印解除が近づくって事か……」

「倒す度に数が増えるのは、嫌がらせ、敵勢力の排除、エネルギー採取の効率化、色々と含んでいるわね。まあ、あそこまで一気に増えたのはクレセートの方から大量のエネルギー供給があったからこそだけど」

 私はゴトスに周辺の警戒を念のために頼むと、地面に手を着き、この辺り一帯に施された仕掛けの解析を行う。

 本来この手の細工は私にとって門外漢なのだが、今回は封印の解除に関わっているのと、従姉妹であるG35が下手人であるおかげだろう、何とか読み取る事が出来ている。


「完全復活までは後……5時間ほど。間に合うわね」

 続けて私は魔鬼王ラス・イコメクの封印自体を確認する。

 LISBとLIECの働きによって完全復活までの時間はあと5時間ほどにまで縮まっている。

 呪いの安全な解除は当然ながら不可能。

 つまり、相手の能力の性質もあり、ラス・イコメクの最終的な処理については討伐一択となる。


「『エオナガルド』に移送する。だったか」

「正確には封印が解けた後の出現場所を『エオナガルド』の特別面会区に設定するわ。そうすれば、私たちだけでも戦線の維持は可能よ」

「まあ、『フィーデイ』で出現したら戦うどころじゃないからな……」

 私の実力ではG35が仕掛けた呪いに干渉する事は出来ない。

 しかし、茨と封印の神スィルローゼ様の代行者として、スィルローゼ様が施した封印をスィルローゼ様の許可の下に一部書き換えるぐらいの事は出来る。


「一応、訊いておくが、封印の強度を上げて復活阻止、とかは無理なんだよな。あるいは性質を変えるとか、封印が解けた後の出現場所を何も無い場所にしてしまうとか」

「無理ね。その辺の自動追尾機構とでも言うべき、相手の封印に合わせて自動調整する機能は私が手を出せない形できっちり組み込まれてる。封印が解けた先を何もない場所にしてしまうのは妙案ではあるけど……将来が怖いわ」

「まあ、そうだよな……」

 なお、ラス・イコメクを倒さないと言う選択肢はない。

 倒さなければ未来に禍根を残すことになるし、その禍根は確実に大きなツケを払う形で戻ってくる。

 具体的には私が封印に施した細工を読み解いたG35が、何も無い空間からラス・イコメクを引き摺り上げて召喚するとかで。

 だから、最悪を避ける最善手は今回で完全に倒し、滅ぼしてしまう事となる。


「さて、封印の書き換えは終わったわ」

 私は立ち上がると、周囲を見渡す。

 周囲はLISBたちが暴れ回った影響でだいぶ開けている。

 まあ、これだけの広さがあるならば、後でタイホーさんたちが来ても滞りなく入って来れるだろう。


「じゃあ、展開するわ」

「分かった」

 だから私は私の体を茨の状態に戻すと周囲の茨と同化。

 そして、丘全域を覆い尽くす茨を足場として、折り畳まれた空間の中に存在している私の本体を……『エオナガルド』を『フィーデイ』へと引き摺り上げていく。

 それは地鳴りを伴い、遠目には丘が膨れ上がっていくように見え、天変地異が起きているように思えた事だろう。


「ふう、門の展開には成功したわね」

「えーと、エオナは……」

「ゴトスの目の前の壁も門も私のようなものよ。まあ、分かり易くするために門の中にエオナ=フィーデイは作っておくわ」

 暫くして丘に出現したのは、高さ十数メートルに及ぶ茨の壁に囲まれた城のような建物一部であり、咲き誇る赤い薔薇と聳える尖塔は遠目には豪勢な冠のように見える事だろう。

 壁には幅数メートルの門が一つだけ存在していて、そこから中に入れば『エオナガルド』に入る事が出来る。

 これが許可がなくても『フィーデイ』から『エオナガルド』に入れる状態にした、私の状態である。


「じゃあ、居住区を抜けて面会区に行きましょうか」

「……。分かった」

「メッ」

 そうして私はいずれ来るルナたちの為に門を開け放つと、門の中に用意しておいた私に意識を移して『エオナガルド』へ入っていき、ゴトスと金毛の羊は茨人形の体から本来の体へと戻っていった。

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