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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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253:かける他なし-5

「ーーーーー!」

 一方的な攻撃を繰り返すスヴェダへのカウンター。

 そんな思惑の下に生じた白い鬼は地面に向かって落ち始めているスヴェダの姿を捉えると、その落下先を予測する形で飛び出す。

 その勢いは凄まじく、足場として使われた尖塔は完全に破壊され、轟音も響いた。

 空中に居るスヴェダに回避の手段は存在しなかった。


「よっと」

「ー!?」

 スヴェダが怨霊であり、その気になれば空中で幾らでも動き回れる存在でなければ。

 哀れな事に白い鬼は空中でもう一度身を翻して立ったスヴェダの眼下を勢いよく通り過ぎていき、そのまま地面に衝突。

 大きな音と大量の砂ぼこりだけを巻き上げる形になる。


「……。死んでない」

 だが、この程度で死ぬほど白い鬼は柔な存在ではなかった。

 スヴェダの怨霊としての能力……生命の位置を感知する能力によって、砂ぼこりの中で白い鬼が健在なのを感知する。


「……」

 尖塔の高さと勢いから、白い鬼が地面との衝突で受けたであろうダメージを推測。

 LIEC-2の戦闘能力を考え、HPと同様に攻撃力や防御力も上昇したと考える。

 そして、尖塔を破壊しつつ登ってきた時のスピードや、尖塔から飛び降りたスヴェダを素早く見つけ出して襲い掛かってきたことから知能レベルや索敵レベルを推測。

 最後にこれらを総合的に考えた戦闘能力を割り出し、自分一人で対処できるかを考える。

 スヴェダの出した結論は……。


「うん、無理。呼ぶ」

 一人で相手をするのは厳しい、仮に倒せたとしても時間と被害が許容範囲外になるという物だった。


「弓と追跡の神ボーチェス様。このような身であっても構わぬと言うのであれば、御力をお貸しくださいませ。色指定、赤、『ボーチェス・ライト・ミ=アロ・ポインタ・フュンフ』」

 スヴェダの弓から普通の外見の矢が放たれる。

 だが、ただの矢ではない。

 狙い違わず白い鬼の体に突き刺さった矢は、白い鬼の体に赤いオーラを纏わせると共に、クレセートの何処からでも見えるような赤い光の柱を頭上に立てる。


 スヴェダの使った魔法の名は『ボーチェス・ライト・ミ=アロ・ポインタ・フュンフ』。

 弓につがえた矢に魔法をかけ、矢が突き刺さったものの上空に、周囲一帯の何処からでも見える様な光の柱を生じさせるだけの魔法であり、攻撃能力は一切持たない。

 俗にポインタ魔法と呼ばれるものである。


 だが、活用しようとすれば幾らでも活用できる魔法として評価は高い。

 超遠距離からの攻撃を行う際のマーカー。

 隠密行動を取ろうとしている敵の強制看破。

 味方への符丁。

 幾らでも使い道がある。


 そして、今現在のクレセートのように、特に使い道を事前に決めていなかった場合には、ゲーム時代からNPC相手でも通用する一種の信号として用いられる。

 緊急事態の発生、自分たちでは対応できない何かがあることを知らせる警告として。


「これでよし」

 スヴェダはこれを知っていたからこそ、増援を呼ぶために、無用な被害を招かないために赤の光柱を立てた。

 だが、計算違いもあった。

 今のクレセートで戦っているのはレベル50以上である上に、戦う意思と技術をきちんと持っている者だけである。

 戦えない者はルナリド神殿を含む、事前に決められた避難場所へと移動していた。

 そして、ここまでの戦いでポインタ魔法は一切使われていない。


 結果として、ポインタ魔法を見た者はそこに特別に危険な何かが居ると判断した。

 その考え自体は間違っていないが、高レベルかつ実力のあるプレイヤーでも油断できない相手が居ると認識した。

 だから……


「なるほど、LIEC-3と言うところか。南無っ!」

「ーーー!?」

「あ……」

 まず真っ先に足裏に金属製の輪を付けたタイホーが地面を滑るように現場に現れ、全力の掌底を白い鬼……タイホーの予測通りに正式名称LIEC-3と製作者に名付けられているモンスターに叩き込み、起き上がりかけていたところを再び地面に倒す。


「ー!?」

「うおっ」

「あー……」

 続けて黒焔少女アビスサロメの物だろう。

 クレセートの町の一角から何発も炎の槍が放たれて、地面に倒れているLIEC-3を焼く。

 超遠距離攻撃を安全に行うためなのか、何かしらの方法によってフレンドリーファイアが起きないようされた炎の槍はLIEC-3だけを焼いていく。


「突撃ぃ!」

「避難民を守るのだ!!」

「ここで退いて何がルナリド様の騎士か!!」

「うーん……」

「ーーーーー!?」

 最後にルナリド神殿を守るために内部や周囲に居たプレイヤーが殺到。

 無数の攻撃魔法がLIEC-3に叩き込まれていく。


「変なLAとか持ってないよね。G35の作品だから、油断できないんだけど……」

「「「撃て撃て撃てぇ!!」」」

「ーーー……」

 それは正に数の暴力。

 ルナリドの魔法を中心としてはいるが、あらゆる属性の魔法が放たれ、LIEC-3に叩き込まれていく。

 並のレイドボスならば一瞬で蒸発するような火力を受けては、LIEC-3も耐えられるわけはなく……爆炎の中でゆっくりと倒れていく。


「これは……なるほど、そう言う仕掛けか」

「……。LAは無いけどやらかしたかも」

 そしてLIEC-3が倒れると同時にまだ残るはずだった魔法のエフェクトが消失。

 一部の者だけが感じ取れる形となって、余ったエネルギーは何処かへ……否、ラス・イコメクが封印されている場所へと流れていく。


「……」

 タイホーの視線がスヴェダに向けられ、それに気づいたスヴェダは小さく頷く。


「全員聞け。さっきの筋肉が付いた白鬼はオーバーキル厳禁だ。余ったエネルギーが敵に利用されているぞ。そしてこれからどんどんやってくる。彼女の行動が切っ掛けのようだからな」

 タイホーの言葉と同時にスヴェダは誰も感知していないLIECに向けて矢を放ち、始末する。

 すると直ぐにLIEC-3が何処からともなく現れ、スヴェダへと襲い掛かろうとする。


「だが、彼女が居なければ、誰にも位置が知られていないLIECは倒せない。そして放置すればしただけ大きく不利になる。ならば……後は単純な話だ。拙僧たちであの白鬼を適切に倒せばいい」

 そして現れたLIEC-3は……タイホーに邪魔をされ、タイホーたちも敵と認識され、新たな戦いが始まる事にになった。

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