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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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251:かける他なし-3

「こいつは……」

 陽属性の槍でLISBの額を突いたゴトスは直ぐに違和感を感じる。

 手応えは確かにあった。

 敵がスケルトンの姿をしている事や、推奨レベル90のレイドボスの取り巻き並のHPを持っていることから一撃では倒せないだろうと言う判断は下していた。

 だが、ゴトスがLISBに与えたと感じたダメージ量はゴトスの予想よりも明らかに少ないもの。

 そして、攻撃の瞬間に微かではあるが自分の持つ槍の輝きが弱まったのも感じ取った。


「ーーーーー!」

「メッ」

「悪いが回避は任せる。色々と試す必要がありそうだ」

 LISBたちの攻撃を避け、防ぐ事を金毛の羊に任せたゴトスは、直ぐに詠唱を始める。


「『サンライ・シャイン・フロトエリア・レイレイン・フュンフ』」

「「「ーーーーー!?」」」

 ゴトスの手から無数の光が放たれ、雨のように降り注いだそれらはLISBたちの体を穿ったように見えた。

 だが、光の雨が晴れた後に姿を現したLISBたちには傷一つないどころか、ダメージすら碌に受けているようには見えなかった。


「『サンライ・フレイム・エクイプ・エンチャ・アインス』」

「?」

 ゴトスの槍に宿る色が紫から赤に変化する。

 そしてその状態でゴトスはLISBに攻撃して、骨の表面に僅かだが傷を作る。

 だが、直ぐに消えてしまった傷に、LISBは攻撃されたと言う感覚すらないようだった。


「被ダメージの一部吸収。遠隔はほぼ100%、近接で30%近く、と言う所か。吸い取られた力は……回復にも使われていそうだが、封印解除の方にも回されているか?にしても、高難易度で時々見かけるが、吸収関係は普通は特定の属性に限ってなんだがな。となると……『ソイクト・ソイル・エクイプ・エンチャ・アインス』」

 ゴトスの持つ槍の色が黄色に変化する。

 それからゴトスは再び攻撃。

 先程と同様の結果を得る。


「製作者の性格の悪さがよく分かるな。なら……『スィルローゼ・ウド・エクイプ・エンチャ・アインス』」

 少し時間をかけて、次は青に変化する。

 五行の相乗作用も考えない攻撃は、わざと低段階の魔法を使っている事もあり、最低限の効果しか発揮しない。

 だが、それで問題ないとゴトスは再び槍で突く。

 LISBはこれまでの攻防で受けても問題ないと判断したのか、あるいは初めから学習能力を持たされていないのか、手早くゴトスたちを捕らえるべく、守りも考えずに突っ込んでくる。


「ーーー!?」

「「「!?」」」

「ほう……」

 だが、これまでの槍とスィルローゼの魔法による付与を行った槍では効果が大きく違った。

 ゴトスが槍でLISBの体を突いた瞬間、LISBの体が砕け散り、大きく仰け反り、そのまま倒れた。

 普通に考えれば、アインスの付与しかかかっていない槍で突かれたところで、こんな結果が起きるはずはない。

 狩りにゴトスが金毛の羊と協力して、全力かつ全速力で攻撃をしてもこんな事にはならないだろう。


「なら、こっちはどうだ?『スィルローゼ・ウド・ワン・ソンランス・アインス』」

「ーーー!?」

 続けて放ったのはスィルローゼの魔法の中でも最も基本的な攻撃魔法だった。

 当然、こちらもLISBたちのステータスからすれば脅威でもなんでもないし、被ダメージ吸収の能力の効果を考えれば、ダメージなど欠片も存在しないはずだった。

 だが、地面から生えた細い茨の槍はLISBの脚を粉砕し、その場に倒した。


「スィルローゼ様だから……ではないな。あのマミラセンシシの製作者はエオナの従姉妹で、LISBもそいつの作品のはずだ。埋められる穴は埋めておくはずだ」

 この時点でゴトスはLISBに施された仕掛けをほぼ完全に看破した。

 被ダメージ吸収は攻撃者との距離が遠ければ遠いほどに割合が高まる。

 吸収の対象は最も信仰するプレイヤーとNPCが多い七大神の魔法。

 そして、属性ではなく信仰の対象によって吸収できるか否かを決めると言う強力な能力の対価は、スィルローゼのような一般的でない神々の魔法による被ダメージの大幅どころではない増加。


「カンペっと……『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ドライ』!」

 ゴトスの前方から茨の波が放たれる。


「「「!?」」」

 茨の波がLISBたちに触れる。

 効果は……劇的だった。


「ひゅう、コイツは爽快だ」

 茨の波に触れたLISBたちが片っ端から消し飛んでいく。

 足をすくわれて転倒し、転倒した先で茨の波に触れて弾け飛んでいく。

 ゴトスの魔法一発で、ゴトスたちの近くに居たLISBたちは簡単に倒れていく。


「だが、ま」

 しかし、ゴトスはこんな簡単にLISBたちが終わるとは思っていなかった。

 より正確に言えば、あの改造マミラセンシシを作り上げたG35が弱点を一回突かれただけで壊滅するような欠陥品を大量生産するなどとは考えていなかった。

 だから、茨の波が消えた直後に、倒れたLISBから黒い靄のような物が生じて、自分の方に向かってきても驚くには値しなかった。


「このくらいのLAは当然か」

 そして、その黒い靄が触れた人間の心臓と脳幹を電気的に強制停止させる事によって、高レベルのサンライ神官が有するような通常の即死に対する防御をすり抜けつつ、殺しにかかってくる物である事も、大して驚く事ではなかった。


「とは言え、こっちには効かないし、問題は無いな」

 むしろ、笑いすら浮かべた。

 何せこの場に居るゴトスは人間の姿形こそ取っているが、実際にはただの茨を編んで作られた人形であり、止まる心臓も脳も持ち合わせてはおらず、効くはずもないのだから。


「ただ……こっちは想定外だな」

「メエエェェ……」

「「「ーーー……」」」

 だが考えていない事態も起きていた。

 何せ気が付けば、ゴトスの周囲に居るLISBの数は当初認識していた数の5倍以上、100体を超える数になっていたのだから。

 それは倒されたら倒された数倍だけ新たに生み出すと言う、単純だが脅威でしかない考えだった。


「すまんエオナ。暫く逃げ回る事に専念する。まだカンペ必須のスィルローゼ様の魔法でこの数のモンスターを増殖LAを封じつつ倒すのは無理だ」

「メッ!」

 故にゴトスは普段の自分の立ち回りと同じように守りを主体とした動きに切り替えると、エオナが到着するまでの間、逃げ回る事に専念する事にした。

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