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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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248/284

248:G35-5

「やり過ぎだ馬鹿者」

「アイタッ」

 クレーターに背を向けようとした瞬間、私はタイホーさんに頭をはたかれた。

 表情としては怒り半分呆れ半分と言う感じか。


「やり過ぎと言われても、これくらいやらないと滅ぼせるか怪しかったから、文句は言われたくないんだけど」

「時間をかけるなり、拙僧たちに頼るなりすればいいだろう。そうすればもう少し地味な攻撃で仕留める手もあっただろう」

「タイホーさんたちに頼るのはともかく、時間に関してはちょっと怪しい所があると言わせてもらうわ」

「……。ラビネスト村で何かが起きていると言う事か」

「そう言う事よ」

 私はゴトスに連絡をして、ラビネスト村の現状について報告してもらう。

 が、あまり長時間ラス・イコメクの封印の前に居ると疑われそうだったらしく、少し離れた場所にゴトスは移動していたらしい。

 報告には少し時間がかかりそうだった。


「うわぁ……一体何をしたらこんな事になるんですか。エオナさん」

「何って……」

 と、ここでヤマカガシたちがやってくる。

 と言う訳で、『エオナガルド』に居る教皇様を外に出した上で、私はG35に対してどんな魔法をどのように使ったのかを説明する。


「相手が一切の抵抗を出来なくした上で……」

「信仰値が限界突破している代行者が最大火力魔法を……」

「完全詠唱かつ神の血と魂ごと滅ぼす霧も利用した強化を重ねた上で発動か……」

 そうして説明した結果、ヤマカガシの仲間たちは一様に頬を引きつらせ、教皇様は天を仰ぐ。

 タイホーさんはこめかみを指で抑え……ヤマカガシは何故か目を煌めかせた上で私の方を向いている。


「このクレーター。向こう百年は雑草一本生えないかもしれんな……」

「そこは大丈夫よ。保護術式はちゃんと機能させたし、ワンオバトーのターゲッティングで被害も及びづらくした。後に残るような影響は出してないわ」

「だといいのだがな……後、やはりやり過ぎだと拙僧は評価するぞ。2から3割は威力を落としても大丈夫だっただろう。これは」

「そこはもう結果論でいいわよ。そもそもそんな細かい調整をしていられる状況や相手でもないし」

 そもそもの話として、今回私が使った『スィルローゼ・サンダ・エリア=ワン・ライトニグ=スィル=バイン=スリプ=パライズ=フリズ=ペトロ=ウィルス=ベノム=カス=オルステデバフ・アハト』は幾つもの欠点がある魔法である。


 まず第一に最低限詠唱しなければならない部分が極めて長い。

 これだけ長いとどれだけ相手の詠唱が遅かろうが、相手のアイテム欄が雑多であろうが、確実に対抗手段の行使が間に合う。


 第二にこの魔法、実は対象としてしている相手が、事前に指定したエリアの外に出た時点で発動しなくなる。

 なので、先述したとおりに詠唱が極めて長いのもあり、拘束の類をせずに撃とうとしても、逃げられてお終いである。


 第三に消費MPの問題で、アハト……第8段階でも私ことエオナ=フィーデイが扱っていいMPの大半を持っていく。

 しかも何かしらの理由で発動に失敗しても持っていかれる鬼畜仕様である。


 スィルローゼ様の代行者である私でも使用に当たっては十分に機を窺い、適切な状況で撃つことを求められる魔法なのだ。


「と、報告が来たわね」

 まあ、その代わりにスィルローゼ様の魔法の中でも威力は最高峰。

 しかも当たれば致命的な物も含む状態異常を複数同時に高確率で付与できる。

 私が所持する魔法の中で、破壊力と言う一点で見ればこれ以上の物はないだろう。


「ゴトス、そっちの状況は……」

『ラビネスト村に変わりはない。殺し合いは続いているままだ』

「続いたままですって?」

 私の目が険しくなる。

 G35が滅びたはずなのにラビネスト村の仕掛けが解かれていないと言う事は、装置の類を止めなければ終わらないと言う事だろうか。

 私はゴトスの口とリンクして話してくれる茨人形を手元に作り出すと、詳しい報告を聞くことにする。


『ああ、村人同士の殺し合いが続いている。村の周囲のスケルトンについてもそのままだ』

「魔鬼王ラス・イコメクの封印については?」

『解けてはいない。が、さっき見た時よりも明らかに呪いが強まっている感じがあるな。これは……ラビネスト村以外からもエネルギーが流れ込んでいるな』

「……まさか」

 私はクレーターの方を見る。

 そして稲妻に撃たれる直前のG35の顔を思い出す。

 そう、G35は口の端を僅かに歪めていた。

 恐怖や怯えではなく、喜びや笑いを示すような形に。

 アレが狙って出した表情であるならば……。


「スヴェダ!未知のモンスターがクレセートに出現していると聞いているわ。そいつらは今どうなってる!?」

 私は最悪の予想を頭で思い描き、手元に二つ目の人形を作り出しつつ、スヴェダの報告を受ける。


『……。キモ白饅頭なら、カミア・ルナ巡礼枢機卿たちが続々と倒していってる。目が弱点みたいで、倒すペースはかなりいい感じ。あ、今、一体倒した』

「……。ゴトス」

『聞こえたよ。で、結果から言わせてもらう。明らかにこっちの呪いが強まった。とは言え、目に見えてと言うだけで、説明がつかないほど一気にと言う感じではないな』

 スヴェダとゴトスの報告に私を含めた全員の顔が青ざめる。

 何故ならば、こうしている今もラス・イコメクの復活は刻一刻と迫っている。

 それも、狩らなければ街に被害を出すモンスターを狩ることによって、相手に力が貯まっていくという最悪の流れで。

 ならば、狩るのを止めればいい。

 誰もがきっとそう思ったことだろう。

 だが、そんな単純な手段を許すほどG35と言う女は甘くない。


「「「!?」」」

 クレセートの一角で天を衝くような爆炎が上がった。

 そしてスヴェダから直ぐに報告が入る。


『高火力メンバーが居なかったPTが戦っていたキモ白饅頭が爆発して被害者多数。おまけに……キモ白饅頭の中から全身真っ白のガリガリ鬼が出てきた。キモ白饅頭と違って結構強そう。死人は出ていないけど、助けないと拙そうだから助ける』

 そう、一定時間で対処できないようなら、当たり前のようにより被害が拡大するような方向で動いて来るのがG35なのだから。


『どうする?エオナ』

「どうするって……」

「「「……」」」

 対処の順番は……見えている。

 だから私はタイホーさん、ヤマカガシたち、教皇様とそれぞれ一度目を合わせる。


「ラス・イコメクの足止めはしておきますので、クレセートの安全が確保出来次第対処をお願いします。その気になれば三日くらいは何とかなるでしょうから」

「分かった。こちらの始末が終わり次第、イナバノカグヤ、マクラ、カミア・ルナ巡礼枢機卿の三人に戦力になりそうな連中を片っ端から連れていく」

「ご武運を。エオナさん。必ず救援に行きますので」

「私のヨミノマガタマを渡しておこう。君なら扱えるはずだ」

「感謝します」

 私が魔鬼王ラス・イコメクを足止めしておくのが、最善策だ。

 だから私は教皇様からヨミノマガタマを受け取ると、スリサズを呼び出して跨る。


「全力で飛ばしなさい。スリサズ」

「バウッ!」

 そして私の求め通りにスリサズはラビネスト村に向けて全力で駆けだした。

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