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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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247/284

247:G35-4

「この……程度で……」

「『スィルローゼ・プラト・ワン・バイン・ツェーン』」

 黒い霧を纏った剣によって壁に縫い付けたG35に向けて私は拘束魔法を発動。

 指の一本すらそう容易くは動かせないようにする。

 だが、これだけではまだG35に抵抗の余地は残っている。


「なめ……」

「まだだエオナ!拙僧たちが……っつ!?」

「悪と叛乱の神ヤルダバオトよ。汝が代行者に指名せし者エオナが要求する」

 ヤルダバオトのメダル、改造マミラセンシシ、周囲の人間を燃料にする黒い矢、人間を材料にした強化アイテムや身代わりのアイテム、転移反撃アイテム、そして贋作神器。

 どれも上手くはいかなかったが、使い方次第ではもっと苦戦を……場合によっては敗北を強いられたアイテムである。

 そして、G35が他にもまだ同様のアイテムを所有していない可能性に賭けるのは明らかな悪手だ。

 だから私はこの一手を打つ。


「彼の者に渡せし加護の一切を停止せよ。『ヤルダバオト・ゼロ・ワン=ブレス・ラプス・アウサ=スタンダド』」

「るぎいっ!?」

「エオナさん!?何を……」

 私の指先からG35に向けて禍々しいヤルダバオトの力が放たれ、G35がヤルダバオトから得ていた力の一切を奪い取る。

 自分がヤルダバオトの代行者であると認め、これまでの行動で勝手に溜まっていたヤルダバオト向けの力をヤルダバオトに渡さなければ使えないのは癪だが、その効果は確かである。

 特にG35のように既にヤルダバオト以外の神から見限られている者にとっては。


「で、でも……」

 だが、この状態で普通に殺してもまだG35は倒し切れないだろう。

 G35自身にかかっているヤルダバオトの加護は失われても、G35の持っているアイテムは生きていて、そこには現状を打開できる可能性があるのだから。

 だから、殺すのではなく、滅ぼす。

 G35の存在そのものを消し去り、アイテム程度では復活できないようにする。

 今の私ならば、それだけの行為も不可能ではない。


「茨と封印の神スィルローゼ様が代行者にして、悪と叛乱の神ヤルダバオトが代行者に任ぜし者、エオナが求める」

 私の体から薔薇色の稲妻が出始める。

 それは黒と紫の電気を従え、時々混じらせてもいる。


「天を覆うは心身魂を蝕み磨り潰す、月の骨が秘奥にして、我が継承せし黒き霧」

 クレセートの空が見る者全てに圧迫感と不穏な気配を感じさせる分厚い黒雲に覆われる。


「黒雲の内にて迸り、閃き、煌めき、輝くは十禍秘める鮮血の稲妻」

 雲から私の体が発している物と同種の稲妻が垣間見え始める。


「光導くは人知る神の知恵。心も、体も、魂の一握すら残さず滅ぼすための道を切り開く」

 雲が発する稲光はその頻度も輝きも増していき、私とG35の周囲では私の魔力に呼応するように砂ぼこりが独りでに舞い上がり始めている。


「ヤバい……全員逃げろ!出来る限り遠くにだ!」

「撤退!とにかく撤退を!!」

「あ……あ……」

 危険性を悟ってくれたのだろう。

 タイホーさんとヤマカガシたちは既に全力で逃げ出し始めている。

 そして私たちの周囲には、私と怯え震えるG35だけが残る形になってくれた。


「我が求めるは唯一人の滅び。故に大地には十禍退け、破壊を止める茨の垣を張り巡らす。我が双眸に宿る獲物以外を傷つける事を拒む決闘の力の印を汝と言う存在に刻み付ける」

 詠唱が進む。

 G35を中心として、巨大な的のような文様を描く形で茨が伸びて、周囲への被害が生じないようにする。


「ま、待ってエオナ……こんなのを撃たれたら私は……」

 今更命乞いを聞く気などない。

 G35は既にそれだけの罪を犯している。

 だからこそスィルローゼ様ですら無力化するようにはっきりと命じられたのだから。


「降れよ導きの紫。焼けよ十禍の紅。滅ぼせ月骨の黒。一度ならず十、百、千、万と彼の者に確かなる滅びが与えられるその時まで永劫に」

 私は自分の魔法に巻き込まれないようにするために少しずつ後退を始める。

 当然G35から目を離すような真似はしない。


「そんな……こんな魔法があるなんて私は……」

「『スィルローゼ・サンダ・エリア=ワン・ライトニグ=スィル=バイン=スリプ=パライズ=フリズ=ペトロ=ウィルス=ベノム=カス=オルステデバフ・アハト』」

 私が長い長い詠唱を終えると同時に、頭上の黒雲から地上の的の中心に居るG35に向けて魔法が放たれる。

 そして次の瞬間には、口元を僅かに歪ませたG35の全身を包み込むように薔薇色の稲妻の柱が立つ。

 閃光で視界が埋め尽くされ、音は衝撃波となって周囲に撒かれ、クレセートに存在するもの全ての心と体と魂と大きく震わせていく。

 至近距離に居る私には全体像は分からないが、それは正に神の鉄槌と呼ぶに相応しい一撃だろう。


「さて……」

 何故、これほどの威力になるのか、それは極めて単純な話だ。

 スィルローゼ様とヤルダバオトの代行者である私が、使う力に合わせて調整した事前詠唱を含む形で、一切の手加減なく、神の血によってもたらされた効率的に人間を破壊する知識に基づき、スィルローゼ様の魔法の中で最も威力の高い攻撃魔法を放った。

 だから、被害を周囲に出さないための詠唱が無ければ、クレセート中の生物を死滅させてなお、力が有り余るような一撃になった。

 ただそれだけの話である。


「綺麗さっぱり消え去ったわね」

 そうして魔法の効果時間が終わり、稲妻が消失し、黒雲が晴れた後。

 月光に照らし出されたG35が居た場所には、直径十数メートル、深さ数メートルの表面がガラス化したクレーターが出来上がり、クレーターの内部には人の痕跡は何も無かった。

11/19誤字訂正

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