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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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246:G35-3

「ヤルダバオトの力は私の物なの!とっとと寄越しなさい!エオナ!」

「あげたいからと言ってあげられるものじゃないでしょうが」

 G35と私が示し合わせたようにお互いを弾く事で鍔迫り合いは終わる。

 そして直ぐに私は鞭化した剣を縦横無尽に振るって攻撃を仕掛け、G35は盾と剣で私の攻撃を適切に打ち払っていく。

 うん、おかしい。

 先程まで私の攻撃にG35は対応出来ていなかったはずだ。

 手傷を負って動きが鈍るはずなのに、そんな事が出来ると言う事は……


「はあ?信仰も力も、幾らでも奪い取れるし渡せるものでしょうが。ふざけたことを言ってんじゃないわよ」

「なるほど、そう言うアイテムね」

 G35が一瞬の隙間を縫って自分の体に注射器のようなものを突き刺す。

 するとそれだけでG35の動きが目に見えてよくなり、負ったはずの傷も治っていく。

 そして私の目はG35の使ったアイテムの原料を正確に捉えてくれた。


「人間を材料にしたステータスを上乗せする薬とは随分と趣味が悪いわね」

「ははっ!意味分かんない!私を強化する薬に成れた事に感謝はされども、そんな嫌悪丸出しの顔をするなんて、エオナはやっぱり馬鹿ね」

 薬の材料は生きた人間。

 いや、薬にされた状態でもまだ生きていて、神々の加護や信仰もそのまま封入されている。

 だから、それを取り込めば、薬にされた人間の力をそのまま取り込めることになる。

 理屈は分かるが……それは絶対に超えてはいけない一線だろう。

 何故ならばだ。


「馬鹿で結構。信仰とは己の魂と意志の下に篤くするからこそ意味があるもの。他人の信仰と力を一時的に奪い取って悦に浸るような外道と価値観の共有なんてしたくないわ」

 それは神々に対する冒涜でしかないからだ。

 故に私はより強く踏み込み、より強く切りつけていく。

 しかし、ステータスが上昇しているG35は私の攻撃を難なく凌いでいく。


「へぇ、この程度で冒涜なんて言っちゃうんだ。じゃあ、これとか見せたら、エオナはどう思うんだろうね」

「っつ!?」

 それどころか、アイテム欄を弄る時間すら得てしまっている。

 いや、問題はそこではない。

 問題はG35が取り出したアイテム……血塗れの蘇芳色の勾玉が何十個と連なった首飾りのようなもの。

 幾つかの勾玉は破損しているが、それでも一目見て分かった。

 アレは存在を許していい物ではない。


「贋作神器ヨミノマガタマ・ヒャクハチジュズツナギ。我が意の通りに暴れ狂え、喰らい狂え、殺し狂え!」

 G35の眼前に蘇芳色の球体が生じると、地面に向かってゆっくりと落ちていく。


「エオナ!」

「エオナさん!!」

 機を窺っていたタイホーさんとヤマカガシが叫び声を上げる。

 そして目だけで語っている。

 ターゲッティング能力を解除して自分たちにも攻撃をさせろ、あの攻撃を止めさせろ、と。

 だが間に合わない。

 今からではもう遅い。

 それ以上に、アレはもう何をしても止まらないし、アレをターゲッティング能力の対象外にある状態で撃たせてしまったら……最悪、クレセートが終わる。


「『サクルメンテ・アイス・ミ=バフ・ディスペル=ガド・フュンフ』」

「あはは!これが私の力よ!!」

「「「!?」」」

 蘇芳色の球体が地面に触れた瞬間、周囲一帯、恐らくはG35を中心として半径数百メートル圏内にある全ての地面が真っ黒に染め上げられる。

 次の瞬間。


「う……ぐ……」

 黒く染まった地面から無数の黒い刃が突き出て、私の体を刺し貫き、強化魔法を消し飛ばした上で私の命を絶とうとする。


「あはははははは!!」

 G35の笑い声が響き渡る。

 大幅に強化されているが間違いない。

 ルナリド様の範囲攻撃魔法の一種に、強化解除の魔法を重ねた攻撃だ。

 もしも、G35をターゲッティングの対象にしていなければ、今の一撃でヤマカガシとその仲間たち、それにこの周辺に残っている一般人たちは根こそぎ殺されていただろう。


「強化解除阻止は正解だったけど、これならさっきから私の隙を窺っている連中も……」

 だが、私が解除しなかったからそうはならなかった。

 だから……


「一時解除」

「南無阿弥陀仏。貴様には地獄すら足りぬかもしれんがな」

「『グロディウス・サンダ・ワン=アイテム・ブレイク=スネク・フュンフ』」

「へ?」

 私がターゲッティングを解除した瞬間を狙って無傷のタイホーさんとヤマカガシが動き出す。

 タイホーさんが何十発も掌底をG35に叩き込み、その隙間を縫う形でヤマカガシとその仲間たちがアイテム破壊の魔法を放っていく。


「あ……ぐ……何がどうなって……っつ!?」

「悪いけど。全身を貫いた程度で殺せるほど私は甘くないし、味方への攻撃を許す気もないわよ」

「助かります。エオナさん」

 そうしてタイホーさんが一息吐くために離れたタイミングで再びターゲッティング。

 同時に私は普段より若干再生が遅い体で立ち上がり、ボロボロになってはいるがまだ息があり、ヤマカガシへ攻撃を仕掛けようとしたG35に向けて武器を構える。


「ズルい……なによそれ……これじゃまるで一対一ボスの……まさかっ!?」

 どうやら今更G35は私が……より正確には私の中に封印されているワンオバトーの能力に理解がいったらしい。

 大きく目を見開き、口を開け閉めしている。


「私に認識されている限り、私以外を傷つけられると思うな。G35」

 そして、そんな隙だらけの姿を晒したG35を見逃すほど私は甘くない。

 だから私はG35に向かって突撃し、腹を突き刺すと、そのまま壁に縫い付けた。

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