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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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245/284

245:G35-2

「たださ。曽祖父様の御兄弟の言うとおりになっていない部分もあるんだよね」

「言うとおりになっていない部分?」

 元凶についてはおいておこう。

 今の私にはどうもできない相手であるし、スィルローゼ様たちが対処をしていないとは思えない。


「あの方はこうも言ったんだよ。『困った事があれば、私の息子である悪と叛乱の神ヤルダバオトを頼ればいい。必ずやそなたの力になってくれるだろう』ってね」

 G35のヤルダバオト神官としての適性は……当然ながら高い。

 私を数段上回っていると言ってもいい。

 だが、そう語るG35の声音と目は何処か不満げなものだ。

 そして、G35の不満に感じるのはたぶん正しい。

 これまでの所業と言動から得られるであろう力の量を考えると、G35の力は妙に弱い。

 それはまるで、ヤルダバオトがG35に力を与えることを拒否しているかのようであり、勝手に代行者にされた上に色々と押し付けられそうになっている私とは真逆と言ってもよかった。


「で?なんでスィルローゼ一筋のエオナの方が私よりもよほど多くの力を得ているのかな?」

「認識阻害!?」

 それ以上の思考をする時間は無かった。

 気が付けばG35は私の目前に移動していて、右手には黒い短槍を握り、左手には札のような物を持った状態で攻撃の構えを取っていた。

 気を抜いていた覚えはないし、私はG35の悪意と叛意の揺らぎは常に観測していた。

 なのに気付けなかったと言う事は、気付けないようにされていた、と言う事だ。


「返してよ。それは私の……」

「くっ……」

 攻撃を避ける時間は無かった。

 だから私は攻撃を受けた後の処置を始めようとした。

 しかしG35の攻撃が行われるよりも早く……


「かかりましたね。『グロディウス・アス・セット・ピット・フュンフ』に」

「も?」

「は?」

 G35の姿が消える。

 G35の足元に突如開いた、底が見えない程に深い大穴に落ちたことによって。


「あ、僕の魔法です」

 どうやらヤマカガシの魔法に救われたらしい。

 効果は……落とし穴を生み出すと言うところか。

 それにG35は見事に引っかかったと。

 確かに落とし穴のような地形変化ならば、G35がターゲッティング能力の対象になっていても効果は発揮するだろう。

 攻撃と言っても、相手の足元に穴を開けるだけなのだから。


「このっ!大した力もない雑魚の癖に!」

 だが攻撃は攻撃。

 G35の持つ攻撃に反応して反撃する力が発動。

 G35がヤマカガシの背後に攻撃を終えた状態で姿を現す。

 しかし、G35の思うような状態にはならなかった。


「邪魔を……な!?」

 G35は私のターゲッティング能力の対象となっていて、私以外に傷つけられない代わりに、私以外を傷つけることも出来ない状態にある。

 そんな状態で、反撃能力によってヤマカガシを攻撃したと言う結果を残しつつ転移したらどうなるのか。

 お互いの能力によって生じる矛盾の解決策は、実にシンプルな物であり、ヤマカガシには一切のダメージが入らず、G35の持つ武器は粉々に砕け散るという形で現れた。


「『グロディウス・サンダ・ワン=アイテム・ブレイク=スネク・フュンフ』」

「ぐ……ぎっ!?」

 予想外の結果にG35も動揺したのだろう。

 目と口を大きく見開き、呆然としていた。

 そして、そんな隙を見逃すような私たちではなく、ヤマカガシが魔法を唱えて稲妻の蛇を生み出して攻撃するのに合わせて、私はターゲッティング能力のオンオフを素早く切り替える。

 そうする事によってヤマカガシがG35の反撃を受けないようにしつつ、無数の稲妻の蛇によってG35の所有するアイテムを幾つも破壊することに成功する。


「よくもやって……っつ!」

「せいっ!」

 私が剣で切りかかる。

 するとG35は盾を出して、私の攻撃を防ぐ。


「転移アイテムは品切れかしら?」

「なんの……事かな……」

 G35の表情に動揺の色は見られない。

 だが、視線の動きからして、アイテム欄の確認をしているようではある。

 どうやらG35は能力ではなくアイテムによって戦闘能力の大半を得ていたようだ。

 となれば、ヤマカガシの使うアイテム破壊魔法と思しき魔法はG35にとって天敵に近いと言っても良さそうだ。


「転移からの不意打ちは私が楽ってだけで、絶対ではないんだよ!」

 G35が私の剣を弾きつつ距離を取る。

 G35としては一度仕切り直すつもりだったのだろう。


「大した力のない雑魚にアイテムを幾つか壊されたぐらいで……」

「では、『ジェノレッジ』も認めていた拙僧の力ではどうだろうな?」

 しかし、そこには既にタイホーさんが居て、攻撃の構えを取っていた。

 だから私もターゲッティング能力を一時的にオフにする。


「ふんぬっ!」

「ーーー!?」

 G35の頭上に現れたタイホーさんが放ったのは掌底。

 ただし、各種補助魔法がかけられた上に、タイホーさんのサクルメンテ様に対する信仰が込められた掌底である。

 その一撃は完全に音を置き去りにし、生じた衝撃波と爆風によって周囲の空間が震え、辺りにあった軽い物は吹き飛び、かなり重い物でも僅かに揺れる程。

 当然ながら掌底を放った跡には……巨大なクレーターが穿たれている。


「えーと、タイホーさんって支援役でしたよね。エオナさん」

「私と同じで、現実化に伴ってゲーム時代の信仰値の限界を超えているんでしょうね。リアルとの折り合いが付くならば、タイホーさんなら有り得るわ」

 支援役であるはずのタイホーさんの火力がゲーム時代に比べて飛躍的に上がっている事は驚くに値しない。

 私の攻撃能力が信仰値の高まりによって大幅に向上しているのと同じ理屈だ。

 それよりも問題はだ。


「はぁはぁ……信仰値の上限解放とかただのチートじゃないの。威力との関わり合いを考えなさいよ。てか、不公平極まりないでしょ。代行者クソ過ぎるでしょ。現実になったからと言って、クソな部分を出さなくていいから」

「ふむ、自動蘇生か」

「みたいね。ヤルダバオトの魔法かしら」

「あ、やっぱり生きているんですね」

 多少息は荒くしつつも、元気な様子で剣と盾を構えているG35をどう仕留めるかだ。

 私は再びG35にターゲッティングをしつつ、剣を構える。

 タイホーさんとヤマカガシも、次こそG35を仕留めるべく動き出す。


「どちらにせよ、普通の自動蘇生なら次で終了よ」

「ふざけるな!誰がアンタたちに殺されてやるものですか!!」

 私が剣で切りかかると、G35も黒い剣を振るい、鍔迫り合いとなった。

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