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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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242/284

242:夜の語らい-10

「厄介な出来事?」

「うむ、エオナが襲われた直後からだろうな。クレセートの各地にモンスターが出現している」

 そう言うとタイホーさんはルナリド神殿の方へと視線を向ける。

 ルナリド神殿の周囲に火の手が上がっているようなことは無いし、喧騒の類もない。

 だが戦闘自体は確かに起きているのだろう。

 私の感知能力で改めて調べると、クレセート各地で妙な動きが見られる。


「出現する場所やタイミングは疎らで、戦闘能力も低い。が、HPと各種耐性だけはむやみやたらと高くてな。処理に時間がかかっているのだ」

 出現しているモンスターはタイホーさんも見たことがない未知のモンスターであるらしい。

 見た目としては白い巨大な饅頭に石膏像の腕とガラス製の目玉のような物を幾つも付けたもの。

 攻撃手段は腕を振り回すぐらいで、直撃しても骨折する程度で大したことは無く、魔法は無し。

 特殊能力と思えるのも、戦闘の音の広がりが微妙に悪くなるぐらいしかないようだ。

 だが、HPはボスのように高く、即死魔法のような即時無力化が出来る魔法には悉く耐性があり、放置が出来る相手でもないと言う事で、時間と手間がかなり取られているようだ。


「まあ、改造マミラセンシシの件もあって、クレセート全体で緊急出動の体制が整っているから、その内片付きはするだろう。ルナたちももう出ているしな」

「なるほど」

 うん、奇妙で厄介な相手だ。

 タイホーさんが見たことが無いと言う事は、今回の黒幕の自作モンスターなのだろうが、これではまるで倒されるために出て来ているようなモンスターである。

 そして、倒されるために出て来ていると思えても、放置できないという厄介さもある。


『エオナ。緊急報告だ』

「あら、ゴトス」

「エオナさん?」

「ああ大丈夫。ちょっと私の仲間から連絡があっただけよ。それで?」

 と、ここでラビネスト村の調査に出てもらっていたゴトスから連絡が入る。

 どうやら金毛の羊の機動力もあって、一日で着けたらしい。

 とは言え、セキセズ枢機卿が黒なのは既に確定しているので、大した情報は得られないだろう、ゴトスの報告を聞くまではそう思っていた。

 だが、アチラの状況は私の想像以上だった。


『ラビネスト村はファシナティオ支配下のフルムスが可愛く見える状況になっているぞ』

「……。視覚をリンクさせるわ」

『分かった』

 私はゴトスが使っている茨人形の視覚情報を、私にも送るようにする。

 そうして見えてきたのは……確かに地獄のような状況だった。


「これは……ひどいわね……」

「エオナ……」

「エオナさん……」

 ラビネスト村は炎に包まれている。

 そして、炎に包まれた村の中で、村の住民同士が殺し合いをしている。

 男も女も老いも若きも関係なく、自分の視界に入った相手を泣きながら、悲しみながら、怒りながら殺している。

 だが、死んでも終わりにはならない。

 弾けた頭が、割けた腹が、もげた腕が独りでに動いてくっつき、死んだ村人を再生させ……次の殺し合いに強制参加させている。

 その光景に私は無意識に手をきつく握りしめている。


「ゴトス。村の中には入っていないでしょうね」

『命令されても入らないから安心しろ。なんと言うか村全体に呪いのようなものがかかっている感じがあるし、入ったら俺も巻き込まれるのが目に見えてるからな』

 どうやらゴトスは村近くの丘……現在魔鬼王ラス・イコメクの封印がある場所の近くから、ラビネスト村の観察をしているらしい。

 で、アチラの状況を詳しく知るために周囲を見渡してもらうが……かなり状況は悪そうだった。


「殺し合いは夜間限定。終われば記録を抹消して日常へ。村の周囲には推奨レベル70台の改造モンスターが多数徘徊していて、目撃者を消すと共に記憶がある状態での逃走を阻止、か。厄介ね」

『茨人形の体のおかげで向こうからは味方と誤認してもらえているが、そうでなかったら逃げられるかも怪しかったぐらいだ』

「殺し合いで得た負の念はエネルギーに変換してラス・イコメクの封印解除に回し、素材の類も転移で何処かに送っている感じね」

 ラビネスト村の周囲には身長3メートルを超える大型の鬼を基にしたスケルトンが十数匹徘徊していて、警備をしている。

 村の周囲に張られた呪いのようなものによって殺し合いが続けられると共に、生成物はラス・イコメク復活と黒幕の考える何かに利用されている。

 そして、ラス・イコメクの封印を解くための仕掛けに流れ込んでいる力は……ラビネスト村からだけではなく、クレセートやクレセート周辺の土地からも流れ込んでいるようだった。


『解除を狙うか?』

「絶対に止めて。たぶん、解除失敗と同時に不完全でも構わずにラス・イコメクの封印を解除して、一部を『フィーデイ』に出現させてくるわ。そうなったら、最悪の展開に向かって突き進む以外の道が無いわ」

『分かった』

 呪いの核そのものは味方と誤認されているゴトスのおかげで簡単に見つかった。

 と言うより、ラス・イコメクの封印の前に堂々と置かれていた。

 が、ゴトスにも私にも安全な解除は難しそうで、おまけに解除失敗に伴って『フィーデイ』全体に対する致命的な被害が生じるのが素人目にも分かったため、今は手を出さずに周囲で待機してもらう。


『……。エオナ、私からも緊急報告』

「あら、そっちもなのね」

 続けてスヴェダからも報告が入ってくる。

 スヴェダにはクレセートの枢機卿や教皇様について裏からこっそり探ってもらっていたのだが、どうやら何かあったらしい。

 私はゴトスとの視界リンクを切ると、続けてスヴェダの視界とリンクさせる。

 そして見たのは……


『セキセズ枢機卿の私室が人肌張りの猟奇的な部屋だった』

 床、壁、天井に生きている人間の皮膚を敷き詰めた猟奇的としか言いようのない部屋だった。

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