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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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236/284

236:夜の語らい-4

「「「ルナリド様の為に!」」」

「「「異端者を殺すのだ!」」」

「「「異教の徒を殺すのだ!!」」」

 私の周囲に居た武器を持った男たちが一斉に襲い掛かってくる。

 どの武器も陰属性の力が秘められていることを示すように蘇芳色の光を放っている。

 だが、その動きは私への攻撃と言う意志の統一こそ図られているが、連携が取れていない上に個々の練度に差があるため、私に辿り着くまでにだいぶ差があり、隙間がかなり出来ている。


「舐められたものね」

「「「!?」」」

「何っ!?」

 私はスリサズを『エオナガルド』に帰した上で鞭化した剣を振るう。

 一度目で刃を使い、武器を手にしていた方の腕を斬り飛ばす。

 二度目で剣の腹を使い、男たちの体を叩いて『エオナガルド』に飛ばす。

 三度目でメンシオスの黒い霧を纏い、男たちの武器粉々にする。


「人間が……消えた……」

「何が、何が起きたんだよ……」

「ば、馬鹿な、腕だけを……」

 そして、この攻撃をスリサズの能力を用いた上で行うと……まあ、私に襲い掛かろうとした男たちの中で、私に近い位置に居た者たちが、切り落とされた腕だけを残して消滅する、と言う光景が広がる事になる。


「死体も残らないなんて……」

「化け物だ……本物の化け物だ……」

「あ、あ、あ……」

 その光景はタネが分からない者には恐怖でしかないだろう。

 数を頼みにしても意味はなく、挑めば目にも止まらぬ攻撃によってこの世から腕一つ残して消し去られる。

 己が生きていた証は残らず、ただただ無意味な死を与えられるようにしか見えないのだから。


「さて、まだ来るのかしら?」

 尤も、実際には『エオナガルド』に飛ばし、拘束して、治療して、その上でルナリド様からの純粋な言葉だけでの問答による更生なので、多少痛い目にはあっているが、ルナリド信者としてはかなりの誉れではないだろうか。

 普通の信者が自分が崇める神に直接言葉を交わせる事などまず有り得ないのだし。


「うわあああぁぁぁ!」

 と、ここで恐怖に耐え切れなくなったのだろう。

 私を囲っていた男の一人が武器を捨てて逃げ出し始める。

 どうやら、この場に居る全ての人間の武器がE12のように持ち主を洗脳して操るような物ではないらしい。

 何にせよ、逃げてくれるなら、そちらの方が都合がいい。

 位置さえトレースし続けておけば、この場を片付けてから対処しても間に合う。

 だから私は逃げ出そうとした男を見逃そうとした。


「逃げる異端者には死を」

 しかし、セキセズ枢機卿が逃げ出そうとした男に向けて手を伸ばしたのを見て、私は反射的に動いていた。

 左手の内に茨の短剣を生み出し、逃げ出そうとした男に向けて投擲。

 それと同時に逃げ出そうとした男の周囲に黒い影の刃が無数に出現し始める。


「なん……」

 男に短剣が突き刺さり、『エオナガルド』に飛ばされる。

 黒い影の刃が勢い良く伸びて、男の居た場所を人が居れば全身を貫かれる形で通り抜ける。

 間一髪で男は助かった。


「貴方、何を……」

 私は直ぐにセキセズ枢機卿に向けて声を荒げようとした。

 私に対する攻撃ならばまだしも、セキセズ枢機卿の味方であるはずの男への攻撃は、私の価値観として容認できないものだったからだ。

 だが相手のが一手早かった。


「見たか!!逃げるな!!生き残りたくば奴を!異端にして異教の化け物を殺す他に道は無いと知れ!!」

「「「う、あ……」」」

 セキセズ枢機卿が大きく声を上げ、私を勢いよく指差す。

 同時に私を取り囲む男たちに無詠唱で何かしらの魔法を……恐らくは一時的に正気を喪失させ、戦意を高揚させる魔法を放つ。


「「「うおおおおおおっ!!」」」

「くっ!」

 男たちが再び襲い掛かってくる。

 いや、男たちだけではない、これまでの騒動で目を覚ましていた周囲の家屋の住民たちも、手に包丁や角材と言った家の中にあるもの持ち出して、私に襲い掛かろうとしてくる。

 男も女も、老いも若きも関係なく、周囲に居る全ての人間が私に向かってくる。


「セキセズ!」

「ぬっ!」

 もはや一人一人対処する事は出来ない。

 そう判断した私はスリサズの能力を使って駆け出し、人々の隙間を一気に通り抜けることによってセキセズ枢機卿に肉薄する。


「せいっ!」

「甘いわ!」

 そして勢いよく剣を振るう。

 対するセキセズ枢機卿は自分の前に影の壁を生み出した上で、銀の長杖を盾のように構える事で私の攻撃を防ごうとする。


「ごふっ……化け物め」

「くっ……」

 結果は影の壁は切れたが、杖は半ばまで切り裂くの限界だった。

 衝撃波でセキセズ枢機卿の衣服の一部を損壊させ、軽くダメージを与えると共に、周囲の無辜の人々を吹き飛ばして一瞬の安全は確保出来たが、それで完全に止まってしまった。


「『スィルローゼ・ウド・ワン・ソンランス・ツェーン』。そう言う情報は早めに欲しかったわね……」

 私は魔法を利用する事で大きく跳躍。

 近くの建物の屋根の上にまで移動する事で、無辜の人々に捕まらないようにする。

 その最中に茨の槍によって軽く吹き飛ばされたセキセズ枢機卿の胸元にヨミノマガタマがあるのを確認。

 同時に『エオナガルド』に居るエオナ=マネージからヨミノマガタマ関係の情報が伝わってくる。


「さて、どうしたものかしらね」

「ふふっ、ふふふふふ……」

 情報から考えるに、どうやらセキセズ枢機卿はヨミノマガタマによって陰属性の適性を大幅に高めると同時に、自制心と言うものを失っている状態であるらしい。

 陰属性への適性の高まりは神器を使っているだけあって凄まじく、既にセキセズ枢機卿のダメージは回復魔法によって完全に治っていて、こちらに向けて不敵な笑みを浮かべている。

 その笑みは正気を失っていると同時に、セキセズ枢機卿ではない別の誰かを思わせる笑みでもあった。

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