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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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232:情報交換-8

 魔鬼王ラス・イコメク。

 レギオンボスは討伐に要求される人数の都合上、最終段階であるラス・イコメクの討伐に至るまでのルートは複数存在している。

 最も一般的なルートはルナリド神殿関係のクエストを幾つもこなして信用を稼いでいき、教皇様からの依頼で討伐に赴くという物であり、ルナやサロメ、タイホーさんなどはこのルートだろう。

 他のルートとしては文献や伝承、民話の類を探っていく事で、その存在に気付いて討伐に赴く形であり、一般的には裏ルート扱いをされるが……スィルローゼ様の封印が如何なるものかを探っていく内に辿り着いた私にとってはこちらこそが正規ルートである。

 最後のルートは現地で枠が空いていれば入れてもらおうなどと言う温い考えを抱いているプレイヤーを排除するために、不定期に場所が変更されている封印場所を偶然発見するパターンであり、これで辿り着くのはよほどの幸運である。


「なんでラビネスト村の近くなのよ!」

 そう、レギオンボスの居場所は不定期に変更される。

 メタ的には温い考えのプレイヤーを排除するために、設定的にはレギオンボスが封印されている領域の次元座標が不安定であるために『フィーデイ』上で対応している場所が変化する為に、そう言う設定になっているのだ。

 そして、今現在ラス・イコメクの封印が存在しているのは……ラビネスト村と言うクレセートから徒歩で数日、馬などの乗騎で一日ほどかかる場所にある村近くの丘だった。


「落ち着けカグヤ。拙僧が確認した時点で封印がそこにあるという話で、封印にも異常は生じていない。それにエオナも言っていたように、戦う時は専用のエリアだ」

「それはゲーム時代のお話でしょうが!相手はどんな不正を仕掛けてくるのか分かっていないのよ!もしもラビネスト村に何かあったら、アタシは……アタシは……」

 ラビネスト村には兎と細工の神ラビトリワク様の神殿が置かれている。

 各種細工を主要産業としている村で、恐らくだがスィルローゼ様に対するロズヴァレ村のようなものなのだろう。

 それならば、事前に聞いていたカグヤさんが世話になった話と合わせて、取り乱すのも分からなくはない。

 だが、落ち着くまで待っている暇はない。


「ルナ。クレセート周辺で未解決の猟奇殺人や大量虐殺はどれくらいあったの?」

「猟奇殺人や大量虐殺自体が見当たらなかった。だが……」

「だが?」

 だから私はルナに質問をする。

 捜査の進展はどうだったのかと。


「セキセズ枢機卿含めて、何人かの枢機卿の管理下にある村々で少し妙な事が起きている。村一つが消えるようなことは起きていないが、『悪神の宣戦』以前に比べると行方不明者が増えているようだ」

「行方不明者ね……」

 死者ではなく行方不明者か。

 ああなるほど、広く薄く、各所から人を集めて、その人を利用して……と言う事か。

 モンスターが単純に戦闘能力を増したのなら、増えるのは行方不明者ではなく死者であろうし。


「エオナ、私からも聞きたい。お前の能力で黒幕の位置は探れないのか?」

「……。厳しいわ。どういう方法を使っているのかは分からないけど、私の能力の範囲外になるように動いているようなのよ」

 ルナの質問に私は首を横に振るしかない。

 確かにクレセートにもヤルダバオト神官は居る。

 ヤルダバオト神官ではないが、悪意と叛意を強く抱いている者も居る。

 だが、今回の件の黒幕に当たるような人間は私が把握出来ている範囲では居ないのだ。


「ギルマス、エオナ様、死者の記憶を探れるような魔法は無いのですか?」

「あるにはある。だが、アレは魂がある相手にのみ効果を有する物だ。今回の様に魂が無くなってしまった相手には効果がない」

「私の記憶にもそう言うのはないわね」

 メイグイの言葉に私もルナも心当たりが無いかを探ってみるが、見つからない。

 『エオナガルド魔法図書館』の蔵書にも該当する魔法は……記憶を一瞥した限りでは見つからない。

 可能性があるとすれば時空間系の魔法を扱える神の魔法だが、私に適性があるとも限らないし、見つけても使うのは厳しそうだ。


「死者の記憶を探る方法ですか……僕に心当たりが無いわけではないですよ」

「本当?」

「ええ、ただ借りられる、と言うか、使ってもらえるかは怪しいですけど」

 だがヤマカガシには心当たりがあるらしい。

 可愛らしく顎に指をあてて少し悩んだ後に口を開く。


「どういう方法?」

「ルナリド様の神器が何か知っていますか?」

 私たちの目がルナの指に填まっている『整月の指輪』に向かう。

 私が知るルナリド様の神器と言えば、まずはこれだ。


「ゲーム時代からあるのですって」

「そっちだとヨミノマガタマだったかしら。私はイベント未経験だから詳細は知らないわ」

「私も詳しくは知らないな。だが、教皇様が持っているのは確かだ」

 もう一つはヨミノマガタマと言う名前の神器。

 ただ、こちらがどのような神器かは殆ど分からない。

 精々名前から勾玉状の神器である事が窺えるくらいだ。


「そのヨミノマガタマですが、死者の記憶を探る能力を持っているそうです。陰と黄泉の神ルナリド様の神器でもありますし、魂の有無程度で使えなくなるような代物ではないと思うのですけど……どうでしょうか?」

 だが、この場で見つけられない黒幕について話し合っているよりはまだ可能性がありそうである。

 だから、私たちの代表としてタイホーさんとルナが教皇様にヨミノマガタマについて伺う事を決めた。

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