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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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231:情報交換-7

「大量殺戮って……しかもそれがついでって……どうしてそんな事に……」

 大量殺戮と言う言葉にメイグイが口元を抑え、他の面々も表情を険しくする。

 だが、イナバノカグヤさんの言葉が突拍子もない物でない事はこの場に居る全員が理解できているだろう。


「実際ついでだろう。大量殺戮だけなら、もっと効率のいい方法があるのは拙僧でも分かる」

「そうでしょうね。仮に僕にこんな矢を作れる技術があるならば、クレセートを滅ぼす方法程度は幾らでも思いつきます」

「だろうな。私もこの矢に使われている技術から思いつく方法がある」

 そう、大量殺戮は私を殺すついで。

 ただクレセートの住民を殺すだけならば、一人目が爆発に乗せて周囲に居た人間に断末魔の思念波を浴びせ、思念波を受けた人間も同様に爆発する、などと言う装置を時限式で生み出して使えばいい。

 思念波の前ではただの石の壁は意味が無いし、開始地点が私のように対処できる存在が近くに居ない場所であれば、絶対に間に合わない。

 この矢一本を生み出すのにどの程度のコストや材料がかかっているのかは分からないが、少なくとも今言った装置よりもこっちの矢の方が高コストなのは確かだろうし……相手は何時でもクレセートを滅ぼせると宣言しているような物だろう。


「でもー、殺戮も狙ってはいるよねー?」

「確かに住民の犠牲と言うか、流血の類を求めているのは間違いなさそうなのニャ。こういう資料もあるしニャ」

「そうね。マミラセンシシの件から見ても、そっちも狙いの一つなのは否定できないわ」

 だが、ついでであっても、殺戮自体は起こしたいのだろう。

 強化されたマミラセンシシは正にそう言う性能をしていたし、ノワルニャンが全員の前に出した紙にはここ最近のクレセートの治安がほんの僅かに悪化している上に、悪化の方向が暴力沙汰に偏っている事が示されていた。


「流血か……」

 タイホーさんが悩ましそうな表情をする。

 そして、二度三度私の方を見た後に、一度天を仰ぐ。


「エオナ、矢が射られる直前に拙僧が話そうとしていた内容は覚えているか?」

「ええ、覚えているわ。未実装のボスがいると言う話で、スィルローゼ様の封印がどうなっているのか、と言うのを聞くところだったわね」

「そうだ」

 どうやらタイホーさんに何か心当たりがあるらしい。


「実を言えば、ボスが存在していない場合にはスィルローゼ様の封印もないか、あるいは何時出現してもいいように待機状態になっているようだった」

「そう」

 うん、それは別におかしくない。

 スィルローゼ様の力とて無限ではないからだ。

 となれば、ボスが居ない場所にまで封印を張っておく意味はないだろう。


「逆に言えば封印が存在している場所にはボスが存在しているとも言える」

「それはまあ……」

「そうだろうな」

「当たり前の話ね」

 逆説も理解できる。

 と言うより、そう考えるのが当然だ。

 で、この話の流れからして、クレセートの周辺に封印された厄介なボスが存在していて、黒幕はその封印を非正規の方法で破るべく色々と狙ってきていると考えるのが適切だろう。

 それならば、封印を破って復活させるボスの為に、先に私を排除しておくと言うのも納得がいく。

 後はどんなボスが封印されているかだが……


「ラス・イコメク」

 タイホーさんの出した名前に私は眉間にしわを寄せ、ルナ、サロメ、ノワルニャンの三人も顔を強張らせる。


「なんて厄介な……」

「現実でアレが出てくるとか、勘弁してほしいのニャ……」

「だが、奴の封印は存在している。つまり、奴もまた既に『フィーデイ』に生まれているとみるべきだろう」

 だがそれも当然のことだろう。

 ラス・イコメクと言うボスは……本当に厄介なボスなのだから。


「あの、エオナ様。ラス・イコメクと言うのは……」

「正式名称は魔鬼王ラス・イコメク。推奨レベル70台のレギオンボスよ」

 推奨レベル70と言う言葉にマクラやイナバノカグヤさんは少し安心した様子を見せる。

 だが、その安心は甘いという他ない。


「ただし、パッシブ能力として周辺の生命体から生命力を奪い取って、自分の力に変える力を持っている。ゲーム時代は専用のエリアで戦う事になったけど、もしも『フィーデイ』にそのまま現れた場合には……最悪、その時点でクレセートが壊滅するわ」

「「「!?」」」

 何故ならば、ラス・イコメクは周囲一帯にドレインゾーンを形成する能力を持っている。

 『Full Faith ONLine』で戦った時には外部から隔絶された専用のエリアで戦った上に、プレイヤーからしかHPが奪えなかった。

 だが、現実となった今、『フィーデイ』でその能力を行使された場合には、範囲次第ではクレセートの周囲一帯が壊滅し、討伐に成功してもあらゆる生命が根絶やしになっていて、不毛の地と化してしまう可能性が存在するレベルの……場合によっては世界を滅ぼす可能性すらある災厄である。


「タイホーさん。ラス・イコメクの封印は今は何処に?」

「此処にある。拙僧が見に言った時には封印に異常はなかった。だが……」

 そして地図を広げたタイホーさんが指差した場所は……。


「あ……」

「待って!そこは……」

「……」

 イナバノカグヤさんが世話になったらしい村がある場所のすぐ近くだった。

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