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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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198/284

198:報告-1

「来たか。エオナ、メイグイ」

 E12、E13の一件から二週間と少し経った。

 その間、私はウルツァイトさんの工房で私専用の槍、盾、拳甲と脚甲、それに短剣を作ってもらったり、一度ロズヴァレ村まで戻ってジャック・ジャックの修行を見に行ったり、他にも細かく色々とやっていたが、概ね何事もなく過ごしていた。


「ええ、来たわよ。ルナ、それにサロメ」

 だが、何事もない日々は今日で終わりらしい。

 私とメイグイはルナの執務室に連れてこられ、そこで真剣な顔をしたルナとサロメの二人と会う事になった。


「用件は?」

「二つほど話しておくべき事がある」

「話しておくこと?」

 私は椅子に座ると、メイグイに淹れてもらったローズヒップティーで喉を潤しつつ、ルナの話を聞くことにする。


「一つは私たちのクレセート行きの許可がようやく下りた」

「本当にようやくね」

 話の一つ目は、以前から上がっていたフルムス解放に関する褒賞の件か。

 私としてはそんなものを無視してとっととクレセートに向かいたかったのだが、それはルナに止められていた。

 しかし、ようやく向かう事が出来るようになったらしい。


「クレセートに向かうのは、私、エオナ、サロメ、メイグイ、シュピーの五人。それに現地近くでノワルニャンが加わることになる」

「随分と少ないのね。それに戦力的にもだいぶ抑えられているわ」

「フルムスと周辺の治安維持を考えたら、むしろありがたい話だがな」

 ノワルニャン含めてたったの六人とは……どうやら、クレセートの枢機卿たちは私たちの事を相当警戒しているらしい。

 しかもメイグイとシュピーの二人は高レベル帯の戦闘となったら、真っ先に逃がさないといけない二人であるため、実質的な戦力は四人かそれ以下である。


「それと、代行者が一人居る時点で戦力不足とは口が裂けても言えないだろう」

「そう言うものかしら?」

「そう言うものだ」

 で、ルナは私一人でも戦力は大丈夫と言っているが……流石にそれは買い被りだと思う。

 誰も、賛同してくれなさそうだし、話の主題でもないので流してしまうが。


「それで、クレセートには明日の朝から向かう事になり、予定では明後日にはクレセートに到着。その翌日には褒賞を受け取るなどの祭儀や祭典が行われることになる」

「ふむ」

 フルムスからクレセートまでは馬を歩かせれば丸一日ほど。

 駆ければ半日ほど。

 無理のある日程ではない。

 祭儀や祭典については……最低限の礼節を弁えていれば、問題にはならないだろう。


「で、問題はその後の会食でな。予定ではお前以外の代行者が複数人参加することになっているそうだ」

「私以外の代行者?」

 まあ、私以外の代行者がフルムスに居てもおかしくはないだろう。

 スィルローゼ様の代行者は私であり、ルナリド様含め七大神の代行者は存在させない事になっているが、それ以外の代行者は神様たちがそれぞれの判断基準で生み出しているはずだからだ。

 だからおかしくは無いのだが……どうしてかルナは深刻そうな表情を浮かべている。


「何が問題なのかが分からないわね。何かあるの?」

「『満月の巡礼者』と敵対関係にある枢機卿がバックに付いている代行者が居る」

「ああなるほど……要は権力争いに巻き込まれるかもしれないって事ね。でも……」

「ついでに、その枢機卿がヤルダバオト信仰に目覚めている疑惑もあるし、与える情報を制限することで代行者の力を恣意的に利用している疑惑もある」

「……」

 代行者の利用とは……また随分と罰当たりな行いをする枢機卿もいるものである。

 そして、ルナの警戒も分かった。

 代行者の利用のされ方次第では、貴重な戦力である代行者同士で潰し合うなどと言う、ヤルダバオトしか喜ばない展開も起き得るわけか。


「ま、最悪力業ね」

「本当に最悪のパターンではそうなるな」

 尤も、そう言う流れになりそうだったら、私がぶち壊すだけだが。

 今の私が全力を出して、ルナやサロメたちと協力すれば、クレセート脱出くらいはどうにかなるだろうし、その後に色々と方策を打ち出せばいいだけだ。


「それでも基本的には何事もなく終わらせられるように私たちは動くから、エオナも可能な限り自重してくれ」

「スィルローゼ様をけなされたり、明らかにおかしい話の流れだったり、後は……そうね、ファシナティオのような危険なヤルダバオト神官を見つけたりしない限りは自重するわ」

「ああ、その場合は私は止めない。止まらないだろうしな」

「止めても突っ込むわ。見逃せないもの」

 とは言え、真っ当なルナリド神官ばかりであれば、私が今上げたような条件が満たされる可能性は低いし、ファシナティオ級の危険人物が早々他にも居るとは思えないが。

 だから、これは念のためと言うところだろう。


「クレセートの件についてはこんなところだな」

「分かったわ。それでもう一つの話は?」

 さて、クレセート周りの話はこれで終わりであるらしい。


「もう一つの話は『ジェノレッジ』についてだ。つい昨日の事だが、ポエナ山地に派遣した『満月の巡礼者』のメンバーが無事に帰ってきた。で、結果だが……」

 二つ目の話は『ジェノレッジ』について。


「『ジェノレッジ』のメンバーの一人、鍛冶部門のトップだったG35が複数のメンバーを殺害した上でギルドから逃走したことが判明した」

「……」

 その内容は、厄介と危険と言う言葉を煮詰めたような代物になりそうだった。

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